簿記3級 貸倒引当金

【貸倒引当金】前期以前の売掛金が貸倒れた時の仕訳!引当金不足分を損にする理由|簿記3級

貸倒れが確定した時、すぐに「(借方)貸倒損失」と書いていませんか?もしそれが【前期以前】からある売掛金なら、その仕訳は間違いになる可能性が高いです!まずは去年の決算で準備しておいた「貸倒引当金(クッション)」を使うのが絶対のルール。引当金が足りない時の仕訳手順をスッキリ解説します。

先に結論

年が明けて、取引先が倒産し、売掛金が回収できなくなった(貸倒れが確定した)とします。

結論から言うと、「前期以前(去年)」から持ち越していた売掛金が貸倒れた場合は、いきなり全額を今年の費用(貸倒損失)にしてはいけません

去年の決算で、この売掛金を守るためのクッションである「貸倒引当金」をすでに準備しているはずです。したがって、まずはそのクッションでダメージを受け止めます。 クッションの残り具合によって、以下の3つのケースに分かれます。

①引当金が十分にある: 全額を引当金で吸収する(今年の費用は出ない)。

②引当金が足りない: クッションを全額使い切り、防ぎきれなかった分だけを今年の費用(貸倒損失)にする。

③引当金が全くない: クッションがないので、諦めて全額を今年の費用(貸倒損失)にする。

なぜ間違えるのか

初学者が貸倒れ確定の仕訳でつまずき、テストで失点してしまう原因は主に以下の3つです。

1. 「貸倒損失」と「貸倒引当金」の使い分けができていない

「貸倒れが起きたら、とりあえず貸倒損失(費用)!」と反射的に仕訳を切ってしまうケースです。前期の売掛金なら、まずは準備しておいた「貸倒引当金(資産のマイナス)」を取り崩して使うのが先決です。

2. 引当金が足りない時、パニックになって全額を損失にしてしまう

「クッションが12,000円しかないのに、20,000円も貸倒れた!どうしよう!」と焦り、引当金を無視して「(借)貸倒損失 20,000」と書いてしまうミスです。足りなくても、ある分は使い切らなければなりません。

3. なぜ「今年の費用」にしていいのか、理屈がわかっていない

「去年の売上の失敗なのに、どうして今年の費用(貸倒損失)にしていいの?」という疑問を持ったまま暗記していると、後々学ぶ「当期発生の売掛金の貸倒れ」とルールがごっちゃになってしまいます。

前期以前の売掛金が貸倒れた時の処理を教科書で確認

ここからは、effbokiの実際の教科書を使って、前期以前の売掛金が貸倒れた時の3つのケースの具体的な仕訳と、「なぜ今年の費用にしていいのか」という理屈を図解で順番に解説していきます。

A パターンA:【前期以前】の売掛金が貸倒れた場合

去年から持っていた売掛金なので、去年の決算で貸倒引当金(専用のクッション)を準備してあります。まずはそれを使ってダメージを吸収しましょう。

1. クッションが十分にある時

全額クッションで受け止めるため、今年の新しい損(費用)は出ません。

×××貸倒れ額
×××貸倒れ額
2. クッションが一部しかなくて足りない時

あるだけのクッションを全額使い切り、防ぎきれずに貫通した分だけを「当期の追加ダメージ」として今年の費用にします。

×××引当金残高
×××不足分
×××貸倒れ額
3. クッションが全く(0円)ない時

守ってくれるものが何もないので、諦めて全額を今年の費用にします。

×××貸倒れ額
×××貸倒れ額
1 例題:前期以前の売掛金が貸倒れた時
先に結論

前期以前の売掛金が貸倒れたら、まず前期に積んだ貸倒引当金で受け止める
足りない分だけ当期の貸倒損失にします。

引当金が十分にある時
問題

前期末の貸倒引当金残高 20,000円。
当期に、前期以前の売掛金 8,000円 が貸倒れ確定した。
必要な仕訳を示しなさい。

解答
8,000
8,000
解説

前期に積んでおいた貸倒引当金が 20,000円 あり、今回の貸倒れは 8,000円 です。
つまり、前期に用意していたクッションの範囲内で、今回のダメージを完全に吸収できます。したがって、当期のP/Lに新しい損(貸倒損失)は一切出ません。

借方の意味(左側):

「前期に積んでおいたクッションをここで使って、ダメージを吸収した」という意味です。

貸方の意味(右側):

「もう回収できなくなった権利(売掛金)を帳簿から消して減らした」という意味です。

引当金が一部しかない時
問題

前期末の貸倒引当金残高 12,000円。
当期に、前期以前の売掛金 20,000円 が貸倒れた。
必要な仕訳を示しなさい。

解答
12,000
8,000
20,000
解説

貸倒れは 20,000円 ですが、前期に用意していたクッション(貸倒引当金)は 12,000円 しかありません。
そこで、まずは前期の準備分 12,000円 を全額使い切り、それでも防ぎきれなかった「足りない分の 8,000円」だけを、当期の費用(貸倒損失)として認識します。

借方の意味(左側):

貸倒引当金 12,000 は「前期に積んでおいた準備分で受け止めた部分」です。
貸倒損失 8,000 は「それでも足りずに貫通してしまった分を、当期の損失として出した部分」です。

貸方の意味(右側):

「回収できなくなった売掛金全体を帳簿から消した」という意味です。

引当金が全くない時
問題

当期に、前期以前の売掛金 15,000円 が貸倒れ確定した。
貸倒引当金残高は 0円。
必要な仕訳を示しなさい。

解答
15,000
15,000
貸方の意味(右側):

売掛金 15,000 は、もう回収できない売掛金を帳簿から消した、という意味です。

解説

前期に使える貸倒引当金が残っていないので、今回は準備(ガード)なしで貸倒れが確定した状態です。
クッションでダメージを吸収できないため、確定した損失 15,000円 を当期のP/Lにそのまま費用として出すしかありません。

借方の意味(左側):

「使えるクッションが1円もないので、確定した損失をそのまま全額、当期の費用にした」という意味です。

貸方の意味(右側):

「もう回収できない売掛金を帳簿から消した」という意味です。

【コラム】なぜ不足分を当期の貸倒損失にしてよいのか

「去年の売上から出た売掛金なのに、なんで今年の貸倒損失(費用)にしちゃっていいの? 費用収益対応の原則に反しない?」と疑問に思うかもしれません。これはとても鋭い視点です!

実はこれ、去年の失敗の尻拭いをさせられているわけではありません。「当期に入ってから状況が急変した分のダメージ」として処理しているのです。

引当金が足りなかった場合

前期の決算のとき、「この売掛金は、12,000円くらい貸倒れそうだ」という見積もりは、その時点では妥当で正しいものでした。

しかし当期に入ってから、相手先の業績悪化や倒産などで状況が急変し、結果的に20,000円の貸倒れになってしまった。

つまり、見積もりを超えてしまった「8,000円」は、当期に入ってから起きた追加ダメージ(当期の原因による悪化)だとみなせるのです。だから、当期の費用(貸倒損失)にして問題ありません。

そもそも引当金がなかった場合

もし前期末の時点で引当金が0円だったなら、それは「前期末の時点では、全額回収できる見込みだった(優良な取引先だった)」ということです。

それが当期になって急変し、貸倒れが確定してしまった。これは完全に「当期に起きた予期せぬ出来事」です。だから、前期の成績表に無理やり押し込むのではなく、当期の出来事として当期の費用にするのが自然です。

このように、ここでの貸倒損失は「前期の売掛金が原因」というよりも、「当期に入ってから発生した追加の悪化分」として処理されているため、簿記のルールにしっかり沿った正しい処理なのです。

「クッションを使う」が最優先!

前期以前の売掛金が貸倒れた時の3つのパターンと、その理屈はスッキリ腑に落ちましたか?

貸倒れの問題が出たら、まずは「この売掛金はいつのものか?」を必ず確認してください。「前期以前」のものだとわかったら、次に「手元にクッション(引当金)はいくらあるか?」を確認します。 この順番さえ守っていれば、引当金が足りない少し複雑な仕訳でも、落ち着いてパズルを解くように解答できるようになりますよ!

この続きは無料プレビューで確認できます

この記事では、effbokiの無料プレビューから「前期以前の売掛金が貸倒れた時の処理」を記事向けに整理しました。無料プレビューでは、この処理と対になる超危険なトラップ、「当期に新しく発生した売掛金」が貸倒れた場合のまったく異なるルールを体系的に確認できます!

関連する無料プレビューを見る 貸倒引当金の記事一覧へ戻る
著者
effboki編集部
監修
effboki簿記学習設計チーム
公開日
更新日

この記事は、簿記3級・2級の学習者がつまずきやすいポイントを、教材設計と質問対応の観点から整理しています。