前期以前の売掛金が貸倒れた時の処理を教科書で確認
ここからは、effbokiの実際の教科書を使って、前期以前の売掛金が貸倒れた時の3つのケースの具体的な仕訳と、「なぜ今年の費用にしていいのか」という理屈を図解で順番に解説していきます。
A パターンA:【前期以前】の売掛金が貸倒れた場合
去年から持っていた売掛金なので、去年の決算で貸倒引当金(専用のクッション)を準備してあります。まずはそれを使ってダメージを吸収しましょう。
全額クッションで受け止めるため、今年の新しい損(費用)は出ません。
あるだけのクッションを全額使い切り、防ぎきれずに貫通した分だけを「当期の追加ダメージ」として今年の費用にします。
守ってくれるものが何もないので、諦めて全額を今年の費用にします。
1 例題:前期以前の売掛金が貸倒れた時
前期以前の売掛金が貸倒れたら、まず前期に積んだ貸倒引当金で受け止める。
足りない分だけ当期の貸倒損失にします。
① 引当金が十分にある時
前期末の貸倒引当金残高 20,000円。
当期に、前期以前の売掛金 8,000円 が貸倒れ確定した。
必要な仕訳を示しなさい。
前期に積んでおいた貸倒引当金が 20,000円 あり、今回の貸倒れは 8,000円 です。
つまり、前期に用意していたクッションの範囲内で、今回のダメージを完全に吸収できます。したがって、当期のP/Lに新しい損(貸倒損失)は一切出ません。
「前期に積んでおいたクッションをここで使って、ダメージを吸収した」という意味です。
「もう回収できなくなった権利(売掛金)を帳簿から消して減らした」という意味です。
② 引当金が一部しかない時
前期末の貸倒引当金残高 12,000円。
当期に、前期以前の売掛金 20,000円 が貸倒れた。
必要な仕訳を示しなさい。
貸倒れは 20,000円 ですが、前期に用意していたクッション(貸倒引当金)は 12,000円 しかありません。
そこで、まずは前期の準備分 12,000円 を全額使い切り、それでも防ぎきれなかった「足りない分の 8,000円」だけを、当期の費用(貸倒損失)として認識します。
貸倒引当金 12,000 は「前期に積んでおいた準備分で受け止めた部分」です。
貸倒損失 8,000 は「それでも足りずに貫通してしまった分を、当期の損失として出した部分」です。
「回収できなくなった売掛金全体を帳簿から消した」という意味です。
③ 引当金が全くない時
当期に、前期以前の売掛金 15,000円 が貸倒れ確定した。
貸倒引当金残高は 0円。
必要な仕訳を示しなさい。
売掛金 15,000 は、もう回収できない売掛金を帳簿から消した、という意味です。
前期に使える貸倒引当金が残っていないので、今回は準備(ガード)なしで貸倒れが確定した状態です。
クッションでダメージを吸収できないため、確定した損失 15,000円 を当期のP/Lにそのまま費用として出すしかありません。
「使えるクッションが1円もないので、確定した損失をそのまま全額、当期の費用にした」という意味です。
「もう回収できない売掛金を帳簿から消した」という意味です。
補 【コラム】なぜ不足分を当期の貸倒損失にしてよいのか
「去年の売上から出た売掛金なのに、なんで今年の貸倒損失(費用)にしちゃっていいの? 費用収益対応の原則に反しない?」と疑問に思うかもしれません。これはとても鋭い視点です!
実はこれ、去年の失敗の尻拭いをさせられているわけではありません。「当期に入ってから状況が急変した分のダメージ」として処理しているのです。
前期の決算のとき、「この売掛金は、12,000円くらい貸倒れそうだ」という見積もりは、その時点では妥当で正しいものでした。
しかし当期に入ってから、相手先の業績悪化や倒産などで状況が急変し、結果的に20,000円の貸倒れになってしまった。
つまり、見積もりを超えてしまった「8,000円」は、当期に入ってから起きた追加ダメージ(当期の原因による悪化)だとみなせるのです。だから、当期の費用(貸倒損失)にして問題ありません。
もし前期末の時点で引当金が0円だったなら、それは「前期末の時点では、全額回収できる見込みだった(優良な取引先だった)」ということです。
それが当期になって急変し、貸倒れが確定してしまった。これは完全に「当期に起きた予期せぬ出来事」です。だから、前期の成績表に無理やり押し込むのではなく、当期の出来事として当期の費用にするのが自然です。
このように、ここでの貸倒損失は「前期の売掛金が原因」というよりも、「当期に入ってから発生した追加の悪化分」として処理されているため、簿記のルールにしっかり沿った正しい処理なのです。