Step 3:修繕と改良 ― 「元に戻す」のか、「前より良くする」のか
▼
冒頭の物語で、長く使うオーブンのお手入れには「直す」と「パワーアップさせる」の2つの道があることをお話ししましたね。まずは、具体的な金額を当てはめてあのストーリーを振り返ってみましょう。
扉の修理に30,000円支払った
壊れて熱が逃げる扉を、元通りに直してもらいました。これはマイナスをゼロに戻しただけです。そのため、かかった30,000円は今年の費用として処理して終わらせます。
高性能センサーを120,000円で追加した
たくさんのパンが綺麗に焼けるように、新しい機能を追加しました。これはゼロからプラスへ進化させた状態です。そのため、かかった120,000円は費用にせず、オーブンという「資産」の価値に直接上乗せします。
このように、同じ「固定資産にお金をかけた」という状況でも、目的によって処理が全く異なります。
1 修繕と改良
物語のイメージをつかんだところで、これを簿記の正式なルールとして整理しましょう。固定資産に対する支出は、以下の2つに分類して記帳します。
意味:壊れた箇所の「原状回復(元に戻すこと)」や、通常の「維持管理」のための支出です。
処理:新たな価値を付け加えたわけではないため、全額をその年の費用として「修繕費(費用)」で処理します。
意味:固定資産の「価値を高める」ための支出や、「寿命(耐用年数)を延ばす」ための支出です。
処理:パワーアップした効果が将来にわたって会社の売上に貢献するため、費用にはせず、「固定資産(建物や備品など)」の金額に加算(資産の増加)します。
直しただけか? → 元に戻しただけなら「修繕費(費用)」
前より良くなったか? → 価値や寿命がアップしたなら「固定資産(資産)に加算」
2 修繕 仕訳紹介
修繕は、壊れた固定資産を元の状態に戻しただけの支出です。新しい価値は増えていないので、費用で処理します。
借方(左側):費用の発生
「直したけれど、前より良くなったわけではない」と読めるときは、費用のホームポジションである借方(左側)に「修繕費」と記入します。資産には足しません。
貸方(右側):資産の減少など
代金を支払った手段(現金、当座預金、未払金など)を記入します。
3 改良 仕訳紹介
改良は、固定資産を前より良い状態にする支出です。価値や性能が上がり、その効果がこの先も続くので、固定資産に加算します。
借方(左側):資産の増加
「前より良くなり、その効果が将来も続く」と読めるときは、資産のホームポジションである借方(左側)に、パワーアップさせた固定資産の勘定科目(建物を良くしたなら建物、備品を良くしたなら備品)を記入し、資産の価値に加算します。
貸方(右側):資産の減少など
代金を支払った手段を記入します。