簿記3級 現金・預金・小切手

【現金・預金】小口現金・定額資金前渡制度とは?仕訳の流れがわかる4ステップ|簿記3級

「インプレスト・システム(定額資金前渡制度)」という難しい名前に身構える必要はありません!「最初に一定額を渡し、使った分だけを補充して元の金額に戻す」という、現場と経理の業務をスムーズにするための非常に賢い仕組みです。丸暗記を防ぐための、小口現金の全体像を解説します。

先に結論

小口現金とは、現場のスピードと会社のお金の厳重管理を両立させるために、現場の担当者に預けておく細かい支払い専用の「小さな財布」のことです。

簿記3級の試験では、必ず「定額資金前渡制度(インプレスト・システム)」というルールを前提に出題されます。この制度は以下のサイクルで回ります。

  1. 最初に一定額(例:1万円)を渡しておく。
  2. 週末などに使った分の領収書を集め、使った金額だけを補充する。
  3. また最初の一定額(1万円)に戻す。

最大のポイントは、現場で実際に小口係が支払いをしたタイミングでは、経理側では「仕訳なし」となる点です。

なぜ間違えるのか

初学者が小口現金の仕訳で混乱してしまう原因は、主に以下の3つです。

1. 誰の目線で仕訳をしているのか忘れている

簿記は「経理」の目線で行う記録です。現場の担当者(小口係)が支払いをした瞬間、経理担当者はその事実をまだ知りません。そのため、支払時は「仕訳なし」になります。これを理解せず「お金を払ったから仕訳しなきゃ!」と飛びつくと間違えてしまいます。

2. 「報告時」と「補給時」の処理を混同している

使った内訳を報告する時と、減ったお金を補給する時は、それぞれ別の出来事です。報告時には費用を計上して小口現金を減らし、補給時には小口現金を元の金額に戻します。問題文がどちらの場面を指しているのかを読み取る必要があります。

3. 定額資金前渡制度のサイクルが見えていない

「まず一定額を渡す → 現場が使う → あとで使った分を報告する → 使った分だけ補充する」という一連の流れをイメージできていないと、仕訳がバラバラの暗記になってしまいます。

小口現金・定額資金前渡制度を教科書の流れで解説

ここからは、effbokiの実際の教科書を使って、小口現金の仕組みと4つの仕訳パターンを解説していきます。

4
各論:2) 小口現金
小口現金(資産)
設定額/補給額
報告を受けた額
(小口現金で支払った額)
小口現金残高

💡 定額資金前渡制度の仕訳パターン

タイミング 経理と現場で起きていること 経理が切る仕訳
① 設定時 経理が小口係へ現金を渡した
××
××
② 支払時 現場で小口係が支払いをした
③ 報告時 領収書をまとめて経理へ提出した
××
××
④ 補給時 使った分のお金を小口係へ補充した
××
××
【小口現金とは?】

会社のお金(現金)は本来、巨大な金庫で厳重に管理されています。

しかし、ボールペン1本や切手1枚を買うたびに、「経理に申請 ➔ 承認 ➔ 金庫から出金 ➔ 記帳」を繰り返していたら、現場の仕事がストップしてしまいますよね。

そこで、“現場のスピード”“お金の厳重管理”を両立するために、現場の担当者に預けておく細かい支払い専用の「小さな財布」を別に用意します。これが小口現金(こぐちげんきん)です。

つまり、会社のお金の置き場所が「経理の金庫(現金)」から「現場の財布(小口現金)」に移っただけ、と考えます。

【定額資金前渡制度(インプレスト・システム)とは?】

小口現金を管理するために、実務や試験で最もよく使われるルールの名前です。漢字が難しそうですが、仕組みは名前の通りとてもシンプルです!

どんな仕組み?

最初に一定額(例:1万円)を渡しておき、週末などに使った分の領収書を集め、使った金額だけを補充して、また最初の1万円に戻す」という賢い仕組みです。常に手元の残高が一定額になるようにあらかじめ「前渡し」しておくので、定額資金前渡制度と呼びます。

簿記3級での絶対ルール

簿記3級の小口現金のテスト問題は、必ずこの制度を前提に出題されます。だからこそ、「まず一定額を渡す ➔ 現場が使う ➔ あとで使った分を報告する ➔ 使った分だけ補充する」という一連のサイクル(流れ)を、経理の目線でしっかり押さえておくことが最大のポイントになります!

【定額資金前渡制度の仕訳の流れ】

【登場人物のイメージ】

  • 経理担当:本体の財布(会社の金庫・預金)を管理し、帳簿をつける人。
  • 小口係(総務など):経理から小口現金の財布を預かり、現場で支払いをする人。

経理担当の目線になって、小口現金の一連の流れ(10,000円を渡す例)を追いかけてみましょう。

  1. Step ① スタート:最初に一定額を渡す(設定)

    やること:経理が小口係に10,000円を渡して、「これで細かい支払いをしてね」と頼みます。

    仕訳:

    10,000
    10,000

    仕訳の考え方:経理の金庫から「現金」が減り、現場の「小口現金」という資産が増えます。

  2. Step ② 支払う:小口係が現場で支払う(※最大の注意ポイント!)

    やること:小口係が、交通費や切手代などをその場で支払い、領収書を受け取って保管します。

    仕訳:

    💡 なぜ仕訳しないの?:支払った瞬間に帳簿に書くのが普通に思えますよね。しかし、支払ったのは現場の小口係であり、帳簿をつけている経理担当は「今、何にいくら使われたか」をまだ知らないからです。また、少額の支払いのたびに1回ずつ経理が仕訳をしていると手間が大きすぎるため、ここではまだ何もしません。

  3. Step ③ 期間が来たら:領収書をまとめて経理に報告(提出)

    やること:週末などのタイミングで、小口係が「今週は交通費2,000円、消耗品費1,500円、合計3,500円使いました!」と領収書を経理へ提出します。

    仕訳:

    2,000
    1,500
    3,500

    仕訳の考え方:ここで初めて経理は「何にいくら使われたか」を知り、領収書をチェックして帳簿に記録します。使った分だけ小口現金(資産)を減らします。

  4. Step ④ 経理が精算:使った分だけ補給する

    やること:使った分(3,500円)だけ小口係に現金を補給し、小口係の財布の残高を元の10,000円に戻してあげます。

    仕訳:

    3,500
    3,500

    仕訳の考え方:経理の金庫から「現金」が減り、また現場の「小口現金」が増えます。

【まとめ:小口現金の仕訳早見表】
タイトル 経理と現場で起きていること 経理が切る仕訳
① 設定時 経理が小口係へ現金を渡した
××
××
② 支払時 現場で小口係が支払いをした
③ 報告時 領収書をまとめて経理へ提出した
××
××
④ 補給時 使った分のお金を小口係へ補充した
××
××
例題

例題

次の小口現金の取引について、経理が切る仕訳を日付ごとに答えなさい。小口現金は定額資金前渡制度で管理している。

  1. 4月1日、経理は小口係へ現金20,000円を渡し、小口現金を設定した。
  2. 4月10日、小口係は切手代1,200円、電車代2,800円を小口現金から支払い、領収書を保管した。
  3. 4月30日、小口係は領収書をまとめて経理へ提出した。
  4. 4月30日、経理は領収書を確認し、使った分だけ現金で小口係へ補給した。

解答

4月1日(設定時)

仕訳:

20,000
20,000

4月10日(支払時)

仕訳:

4月30日(報告時)

仕訳:

1,200
2,800
4,000

4月30日(補給時)

仕訳:

4,000
4,000

解説

4月1日:会社の金庫にある現金20,000円を小口係の財布へ移します。置き場所が「現金」から「小口現金」に変わるので、借方に小口現金、貸方に現金を記録します。

4月10日:小口係が実際に支払いをしていますが、経理はまだ領収書を受け取っていません。何にいくら使ったかを経理が確認できていないため、この時点では仕訳をしません。

4月30日(報告時):領収書が経理へ提出され、切手代1,200円は通信費、電車代2,800円は旅費交通費として記録できます。合計4,000円分、小口現金という資産が減ったため、貸方は小口現金4,000円です。

4月30日(補給時):使った4,000円だけを補給します。小口係の財布は、残り16,000円に補給4,000円を足して、最初の20,000円に戻ります。これが定額資金前渡制度の「使った分だけ補給して、元の一定額に戻す」という仕組みです。

経理の目線で「4つのサイクル」を意識する!

小口現金・定額資金前渡制度の仕組みはイメージできましたか?

最も引っかかりやすいのが「②支払時」の「仕訳なし」です。「現場でお金が動いた瞬間」と「経理がその報告を受けた瞬間」は違うという、経理担当者ならではの視点を持つことが、この論点をマスターするカギになります。

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著者
effboki編集部
監修
effboki簿記学習設計チーム
公開日
更新日

この記事は、簿記3級・2級の学習者がつまずきやすいポイントを、教材設計と質問対応の観点から整理しています。