簿記3級 貸倒引当金

【貸倒引当金】とは?なぜ必要なのか、決算で設定する2つの理由を解説|簿記3級

貸倒引当金の仕訳をただ丸暗記していませんか?簿記には「今年の売上に関する損は、今年のうちに負担させる(費用収益対応の原則)」という美しいルールがあります。このルールのために存在する「貸倒引当金」というクッションの役割と、決算書がどう生まれ変わるのかをスッキリ解説します!

先に結論

貸倒引当金とは、売掛金や受取手形などの債権「将来回収できなくなるかもしれないリスク」に備えて、決算のタイミングであらかじめ設定しておくクッションのような勘定科目です。

なぜこのような設定が必要なのでしょうか?理由は大きく2つあります。

資産をリアルな金額にするため(B/Sの問題): 返ってこないかもしれない売掛金をそのまま満額で帳簿に載せておくと、会社の財産を実際よりも大きく見せすぎてしまうためです。

今年の損を今年のうちに計上するため(P/Lの問題): 今年の売上が原因で生まれたリスクなのに、来年になってから損失として処理すると、利益の計算がズレてしまう(費用収益対応の原則に反する)ためです。

貸倒引当金は、ただの暗記項目ではなく、決算書を「正しい姿」に生まれ変わらせるための非常に重要な役割を持っています。

なぜ間違えるのか

初学者が貸倒引当金の単元でつまずき、仕訳が丸暗記になってしまう原因は主に以下の2つです。

1. 「まだ起きていないこと」を費用にする違和感

日常生活では、実際にお金が減ったり損が確定したりしてから費用と考えます。しかし、簿記の決算では「今年の売上に関する損は、まだ確定していなくても見込みで今年の費用にする」というルールがあります。この感覚の切り替えができないと、なぜ引当金を設定するのか理解できません。

2. B/SとP/Lの両方を直している視点がない

貸倒引当金の仕訳を切るとき、「これで貸借対照表(B/S)の資産の過大評価を直し、同時に損益計算書(P/L)の利益のズレも直している」という2つの視点を持てていないと、後々学ぶ「差額補充法」などの計算で意味がわからなくなってしまいます。

貸倒引当金が必要な理由を教科書の流れで解説

ここからは、effbokiの実際の教科書を使って、貸倒引当金を設定しないとどのような問題が起きるのか、服屋さんのストーリーで順番に解説していきます。

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導入:なぜ貸倒引当金が必要なのか
ストーリー導入:あなたが「ツケ払いOK」の服屋さんだったら?

想像してみてください。あなたは服屋さんを経営しています。
今年、常連のAさんに10万円のコートを「代金は来月でいいよ」と掛け(ツケ)で販売しました。現金はまだ受け取っていませんが、 帳簿には「売上 10万円」「売掛金 10万円」が立っています。

ところが年末の決算直前、こんな情報が入ります。
「Aさん、かなり資金繰りが悪くて、このままだと代金を払えないかもしれない……」

得意先の倒産などで、売掛金などの債権を回収できなくなることを貸倒れ(かしだおれ)といいます。
さて、Aさんが危ないという情報が入ったとき、帳簿や決算書をそのままにしておくと何が問題なのでしょうか。大きな問題が2つあります。

1. 売掛金は残す まだ請求権はあるので、売掛金そのものは消しません。
2. 見込みを費用にする 回収できないかもしれない分を、当期の費用として見積もります。
3. 資産を実質額で見せる 貸倒引当金を売掛金のマイナスとして置き、B/Sを現実に近づけます。

① B/S(貸借対照表)の問題:資産を大きく見せすぎている

帳簿上は「10万円もらえる権利(売掛金)」があります。しかし、現実には返ってこないかもしれません。
それなのに決算書に「売掛金 100,000円」と満額で載せると、会社の財産を実際より大きく見せることになってしまいます。

② P/L(損益計算書)のズレ:今年の失敗を、来年に押し付けている

当期の売上によって生まれた売掛金が回収できなくなるリスク(損失)は、本来「当期の売上」に原因(起因)があるものです。
それなのに、翌期以降になってから「やっぱり回収できませんでした」と翌期の損失として処理してしまうと、今年は損失が反映されないので 「利益が出た!」と見えてしまい、来年は今年の損失が急に表れて「急に大損した!」となってしまいます。
売上(収益)を立てた年と、その売上が原因で発生した損失(費用)を負担する年がズレてしまうのです。これは、簿記の重要ルールである 費用収益対応の原則に反してしまいます。

この2つの問題を、決算のタイミングで一気に直すクッション。
それが貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)です。

貸倒引当金を設定することで、2つの決算書は次のように「正しい姿」へと生まれ変わります。

P/L(損益計算書)では:
「将来回収できなくなる見込みの金額」を、あらかじめ当期の費用として計上します。これにより、今年の売上が原因となる損を、ちゃんと今年のうちに負担させることができます。

B/S(貸借対照表)では:
売掛金を満額のまま載せるのではなく、「回収できなさそうな分」を差し引いて、実際に回収できそうなリアルな金額(実質的な価値)に近づけて見せることができます。

決算書を「正しい姿」にするための魔法のクッション!

貸倒引当金を設定する目的と、その全体像はイメージできましたか?

「回収できないかもしれない」という見込みの段階であえて費用を計上するのは、会社の成績(利益)と財産(資産)をウソ偽りなく、より現実に近い形で見せるためです。 この「なぜやるのか」という根本の理由さえ押さえておけば、この後に学ぶ複雑な仕訳や計算も、迷わず理解できるようになりますよ!

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著者
effboki編集部
監修
effboki簿記学習設計チーム
公開日
更新日

この記事は、簿記3級・2級の学習者がつまずきやすいポイントを、教材設計と質問対応の観点から整理しています。