1 費用収益対応の原則
あなたはTシャツ屋さんです。
- 4月:Tシャツを 10枚(1枚100円) 仕入れました(合計 1,000円)。
- 4月:そのうち 4枚 売れました。
- 5月:残りの 6枚 が売れました。
4月に、Tシャツ10枚分(1,000円)を全額「費用」にしてしまって大丈夫でしょうか?
Tシャツの仕入代は、どのタイミングで費用にするのが正しいのでしょうか?
仕入代は、「買った月」ではなく、売れた月(売上が立った月)に対応させて費用にします。
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4月:4月に売れた 4枚分 を費用にする
→ 4枚 × 100円 = 400円 が費用となります。
※4月には10枚分(1,000円)を支払っていますが、費用にできるのは4月に売れた4枚分だけです。「支払った額=費用」ではありません。 -
5月:5月に売れた 6枚分 を費用にする
→ 6枚 × 100円 = 600円 が費用となります。
もし 4月に仕入代1,000円を全部費用にしてしまうと、月ごとの儲けが壊れます。
- 4月:4枚しか売っていないのに、10枚分の費用が出る
→ 大赤字に見える(4枚分の売上に対して、10枚分の費用) - 5月:6枚売れているのに、費用が出ないように見える
→ 利益が出すぎて見える(6枚分の売上に対して、費用がゼロに見える)
4月
→ 赤字に見えすぎる
5月
→ 利益が出すぎて見える
結果として、月ごとの儲けがぐちゃぐちゃになり、正しい成績がわからなくなります。
このように、売上(収益)と費用は対応させなければならないという簿記の考え方があります。
これを 「費用収益対応の原則」 といいます。
「この売上(収益)を得るために、どれだけの犠牲(費用)がかかったか」を
同じ月(同じ期間)でそろえて計算するのが、会計の基本です。
Adv 実務での処理方法(今は「ふーん」くらいで完全に理解できなくてOK)
先ほど「売上(収益)と費用は同じ月にセットにする」という費用収益対応の原則を学びました。
ここからは、それを踏まえて 「実際の会社の帳簿では、それをどうやって記録しているの?」 という実務のお話です。
記録の方法は二つあります。
が、どちらの方法によっても結果的に以下のようになります。
売れた分だけ「今年(今月)の費用」にする。売れ残りは、まだ費用にせず来年(来月)のための「商品(資産)」として残す。
これから、下の例題を使って、二つのやり方を紹介していきます。
図 先に全体地図:前提条件をもとに、4月と5月のゆくえを見る
どちらのやり方でやっても、ゴールは以下のようになります。
4月の売上に貢献したので、4月の費用にする
来月売るための商品(資産)として残す
残っていた6枚がすべて売上に貢献したので、5月の費用にする
すべて売り切ったので、来月に残す商品(資産)はゼロ
この4月・5月のゴールになるように、実務では以下のいずれかの方法で記帳(記録)していきます。 どちらのやり方でやっても結果的に同じ結論になるので、そこを意識して二つの方法を比べてみてください。
1 ルート①:最初から「商品(資産)」に入れ、売れた分だけ「費用」にする
いちばん素直で、感覚的に分かりやすい方法です。買った時点ではまだ売れていないので、まずは「商品」という財産として倉庫に置いておき、売れるたびに倉庫から出して費用へ移します。
イメージ:売れるまで倉庫(商品・資産)に置き、売れた分だけ費用へ移す。
10枚とも、まだ売れていません。いったん 商品(資産) として倉庫に入れます。
4枚売れました。売れた4枚分だけを倉庫から出して、4月の費用 に移します。
売れた分だけがキッチリ費用になっているので、月末に直すことはありません。
倉庫には、4月から引き継いだ6枚が 商品(資産) として置かれています。
残りの6枚が売れました。売れたので、倉庫から出して 5月の費用 に移します。
全部費用に移ったので、倉庫は空っぽです。月末に直すことはありません。
2 ルート②:先にぜんぶ「仕入(費用)」に入れ、月末に売れ残りを戻す
そこで考え出されたのが、簿記3級の試験でもメインとなるこの方法です。買ったときに「今年(今月)全部売れるだろう」と全部「仕入(費用)」にして、売れた時は忙しいからいちいち記録しない。月末に倉庫の売れ残りだけを数えて直す、という方法です。
月末に正しい形へ直すこの作業を、簿記では 決算整理(けっさんせいり) といいます。
10枚分を、いったん全部 仕入(費用) の箱にドサッと入れます。
4枚売れました。しかし「購入時にまとめて費用に入れているからOK」と考え、この時点では費用の記録は無視します。レジでお金をもらう記録だけします。
さあ、ここからが調整です。倉庫を数えたら6枚(600円分)売れ残っていました。これはまだ4月の費用にしてはいけません。
そこで、6枚分を費用の箱から取り出して、来月のための 商品(資産) の箱に戻します。
5月がスタートしました。4月末に資産へ戻した6枚(600円分)を、「さあ、今月売るぞ!」ということで、再びぜんぶ5月の 仕入(費用) の箱に入れ直します。
5月中にその6枚がすべて売れました。4月と同じく、売れたときの費用の記録は無視します。
月末の調整です。倉庫を数えると、全部売れたので売れ残りは0枚でした。つまり、資産の箱に戻すお金は0円です。
ルート①(コツコツ正確にやる)と、ルート②(あとでまとめて直す)は、途中の道順が違うだけで、行き着くゴールはまったく同じです。
最終的に 「売れた分だけ今年(今月)の費用」「売れ残りは来年(来月)のための商品(資産)」 にそろえばOKです。
今は細かい書き方がわからなくても問題ありません。「なぜ月末にわざわざ直すの?」と迷ったら、毎日記録するのは大変だから、とりあえず全部費用の箱に入れておいて、月末に売れ残りだけを数えて資産の箱に戻しているんだな、と思い出してください。