記帳方法:間接法 vs 直接法
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毎年費用にする金額はわかりました。
ここからは、その金額を決算でどう記帳するのか、つまりどんな仕訳を切るのかを見ていきます。
記帳方法は「直接法」と「間接法」の2通りあります。
3級の主役は間接法ですが、直接法とあわせて比較することで、間接法で登場する「減価償却累計額」という勘定科目の正体がとてもつかみやすくなります。
あなたは、お店のために 100,000円 のレジ(備品)を買いました。
1年間がんばって使い込んだ結果、レジの価値が 20,000円 減ったとします。
さあ、この「20,000円価値が減った」という事実を、お店の財産ノートにどうやって書き込みましょうか?
ここで、2人の店長が別々の書き方を提案しました。
🧑🍳 A店長の書き方(直接法アプローチ)
「価値が減ったんだから、ノートに書いてある『レジ 100,000円』を消しゴムで消して、直接『レジ 80,000円』に書き直しちゃえば早いよ!」
👨🍳 B店長の書き方(間接法アプローチ)
「いやいや、それだと後から見たときに『元々はいくらのレジだったか』が分からなくなるよ。ノートの『レジ 100,000円』はそのまま残しておいて、その横に『※ただし、20,000円分古くなりました』というマイナスのメモを貼り付けておこうよ!」
どちらの店長の書き方でも、いま現在の本当の価値が「80,000円」であることは同じですよね。
これが直接法と間接法の違いです。「いまの価値」というゴールは全く同じで、そこへ向かうための「記録の残し方」だけが違うのです。
1直接法
A店長のように、固定資産の金額そのものを直接引き算してしまう直感的な考え方です。
借方(左):減価償却費(費用)
今年1年間レジを使ったことによる「価値の減少分(使用料)」を、今年の費用として計上します。
貸方(右):備品(資産)
価値が減ったのだから、素直に「備品」の勘定科目を右側に書いて、残高を直接減らします。
備品勘定が直接削られるため、残高が毎年少しずつ減っていきます。
(いまの価値)
直接法で決算書を作ると、削られたあとの「いまの価値」だけがポンと載ります。
直接法では現在の価値(帳簿価額)80,000円はパッと見てわかりますが、「最初にいくらで買ったか(取得原価)」という過去の情報が帳簿から消えてしまうのが弱点です。
2間接法
B店長のように、備品勘定には一切触れず(買った時の値段のまま維持し)、価値の減少分を独立した別の勘定科目に集計していく、とても丁寧な考え方です。
借方(左):減価償却費(費用)
👉 ここは直接法と全く同じです! 今年の費用(20,000円)をしっかり計上します。
貸方(右):減価償却累計額(資産のマイナス)
備品という文字には触らず、貸方(右側)に「減価償却累計額(げんかしょうきゃくるいけいがく)」というマイナス専用の貯金箱を置いて、価値の減少分をここに記録します。
備品勘定は全く動かず、代わりに減価償却累計額勘定に数字が貯まっていきます。
(買った値段)
(減った合計)
間接法で決算書を作ると、「買った値段」と「減った分」が並んで表示されます。
間接法では、B/Sの中で取得原価100,000円と今まで使った分20,000円の両方が見えます。
また、差し引きで現在の価値(帳簿価額)もしっかり見れるようになっています。
直接法では80,000円だけが見えていました。
どちらも最終的な帳簿価額は同じですが、間接法の方が「元の大きさ」と「減った分」を分けて読めるのです。
もし直接法なら、備品の価値を減らすために右側(貸方)に「備品」と書いて直接マイナスします。 間接法では、備品の金額そのものは減らしたくありません。買ったときの値段(取得原価)をそのまま綺麗に残しておきたいからです。
そこで、備品を直接減らす代わりに、減価償却累計額という勘定科目を別に立てて管理します。 減価償却累計額は、今まで総額でいくら価値をマイナスしてきたかを表す記録です。
左側にいる「固定資産」の金額をマイナスする役割を持たせたいので、資産とは真逆の右側(貸方)がホームポジション(増える定位置)になります。
このように、特定の資産勘定から金額を控除(マイナス)して、実質的な価値を正しく評価するための勘定科目を、簿記では評価勘定と呼びます。減価償却累計額の本当の正体はこれです。
「左側にいる資産(備品)の価値を、間接的に引き算する(控除する)ための評価勘定だから、資産とは真逆の右側(貸方)が定位置になる」のだと体系的に理解してください。この理屈が分かれば、もう仕訳の向きで迷うことはなくなります!
3直接法と間接法の比較
| 比較項目 | 直接法 | 間接法 |
|---|---|---|
| 仕訳 |
減価償却費
××
備品
××
借方は減価償却費(費用)です。
固定資産を今年使った分を、当期の費用として計上するために借方へ書きます。 貸方は備品などの固定資産そのものです。 今年使って価値が減った分を、固定資産の金額から直接マイナスするために貸方へ書きます。 |
減価償却費
××
減価償却累計額
××
借方は減価償却費(費用)です。
固定資産を今年使った分を、当期の費用として計上するために借方へ書きます。 貸方は減価償却累計額(資産のマイナス勘定)です。 固定資産そのものは減らさずに、今年使って価値が減った分を専用の勘定科目に貯めていくために貸方へ書きます。 |
| 理屈 |
固定資産の価値が減ったなら、その減った分を固定資産そのものから直接引くという考え方です。 だから貸方は備品になります。 |
固定資産の元の金額は残し、使った分だけを別の勘定にためるという考え方です。 だから貸方は減価償却累計額になります。 |
| 固定資産勘定の動き | 直接固定資産勘定を減額するため、毎年少しずつ減っていきます。 | 直接固定資産勘定を減額せずに、代わりに減価償却累計額勘定(資産のマイナス勘定)にためていくため、固定資産勘定そのものは増減せず、取得原価のまま残ります。 |
| B/Sでの見え方 | 固定資産(備品など)の残高そのものが、いま残っている価値(帳簿価額)になります。 | 固定資産(備品など)は取得原価のまま残るので、取得原価から減価償却累計額を差し引くことで、いま残っている価値(帳簿価額)を見ます。 |
| 帳簿価額(=現在の価値) | 固定資産勘定の残高がそのまま帳簿価額 | 取得原価 − 減価償却累計額で求める |
初学者がいちばん混乱しやすいのが、この減価償却累計額です。
これは、固定資産そのものではなく、固定資産から差し引くためのマイナスの記録です。
間接法では、備品そのものは買ったときの金額のまま残し、使った分だけをこの勘定にためていきます。
まず、備品は資産です。資産は、増えると借方、減ると貸方に書くのが基本ルールでした。
もし直接法なら、「備品が24,000円減った」と考えて、備品を貸方(右側)に24,000円書きます。
でも間接法では、備品そのものは減らしたくありません。取得原価120,000円をそのまま残しておきたいからです。
そこで、備品を直接減らす代わりに、減価償却累計額という勘定を別に立てて管理します。
だから、「備品が減った分」を表す役目の減価償却累計額は、増えると貸方(右側)になります。
見た目は負債のように右で増えますが、意味は負債ではなく、資産をマイナスして見せるための控除勘定です。
4使用する勘定科目まとめ
5例題(直接法と間接法の比較)
期首に備品120,000円を取得し、毎期の減価償却費は24,000円とする。
直接法と間接法の両方で、仕訳と帳簿価額の見え方を確認する。
11期目の問題
1期目の決算で、1年分の減価償却を直接法と間接法でそれぞれ仕訳しなさい。
1. 借方・貸方の意味
借方は「今年の費用」として減価償却費を計上します。貸方は、価値が減った分だけ備品(資産)の金額を直接マイナスするため、「備品」になります。
(決算後、備品勘定が96,000)
120,000円だった備品勘定から24,000円が直接削られ、残高は「96,000円」に減ります。直接法では、この削られた備品勘定の残高(96,000円)がそのまま、いまの価値である帳簿価額になります。
1. 借方・貸方の意味
借方は「今年の費用」として減価償却費を計上します(直接法と同じです)。貸方は、備品の元の金額を残しておくために、マイナス専用の勘定科目である「減価償却累計額」を使って間接的にマイナスします。
備品勘定は「120,000円」のまま全く動きません。代わりに、減価償却累計額勘定に24,000円が記録されます。間接法では、「取得原価 120,000円 − 累計額 24,000円」という引き算をすることで、帳簿価額が96,000円だと求められます。
22期目の問題
2期目の決算でも同じ備品を使っている。2期目の減価償却を直接法と間接法でそれぞれ仕訳しなさい。
1. 借方・貸方の意味
定額法なので、2期目も費用の金額は同じ24,000円です。したがって、仕訳の形も、借方・貸方の意味も1期目と全く変わりません。
(決算後、備品勘定が72,000)
備品勘定は、1期目末の96,000円からさらに24,000円削られ、残高は「72,000円」に減りました。直接法では、このように毎年削られ続けた備品勘定の残高が、そのまま2期目末の帳簿価額になります。
1. 借方・貸方の意味
2期目も仕訳の形は同じですが、間接法の本当の働きがここからハッキリと分かります。貸方の「減価償却累計額」は、今年のマイナス分をさらに追加して貯める役割を果たします。
備品勘定は相変わらず「120,000円」のまま動きません。一方、減価償却累計額勘定には1期目の24,000円に今年の24,000円が追加され、合計「48,000円」に増えました。
この結果、「取得原価 120,000円 − 累計額 48,000円 = 帳簿価額 72,000円」となります。これが間接法の最も重要な理屈です。
C【コラム】B/SとP/Lの決定的な違いと「勘定のリセット」
仕訳を切るとき、同じ「減価償却」という名前がついているのに、「減価償却費」は毎年ゼロにリセットされ、「減価償却累計額」はずっと帳簿に残り続けることに「なんで?」と疑問を持ったかもしれません。
実はこれ、簿記における2つのゴールである「P/L(損益計算書)」と「B/S(貸借対照表)」の「作られる目的(期間か、時点か)」がまったく違うから起こる、極めて論理的な現象です。
この2つの世界のルールが分かると、決算(勘定の締切)の本当の意味がパズルが解けるように理解できます。
P/Lのグループに属する「費用」と「収益」は、ある一定の期間(1月1日〜12月31日)の成績を測るための勘定科目です。
目的:「今年1年間で、いくら稼いで、いくら使ったか(今年の利益)」を正しく計算すること。
もし、今年の費用や収益をリセットせずにそのまま翌年に引き継いでしまったら、2年目の帳簿には「1年目の費用+2年目の費用」が合算されてしまい、「2年目単独でいくら利益が出たのか」が計算できなくなります。
だから、P/Lの住人である費用と収益は、決算で今年の利益を計算し終わったら役割を終えます。来年の成績を正しく測るために、必ずゼロにリセット(損益振替)して、1月1日から新たに数え直します。
B/Sのグループに属する「資産」「負債」「純資産」は、今この瞬間における現実の持ち物を表す勘定科目です。
目的:「12月31日の決算日時点で、会社にどんな財産や借金が残っているか」を正しくリストアップすること。
大晦日にお店にある「現金10,000円」や「銀行からの借金」は、年が明けて1月1日になった瞬間に、ゼロになって消滅したりはしません。現実に存在し続けている財産や借金は、帳簿上でも勝手に消すことはできません。
だから、B/Sの住人である資産・負債・純資産はゼロにはならず、決算の「勘定の締切」では残高をそのまま翌年に持ち越します。これを「次期繰越(じきくりこし)」と呼びます。
役割:「今年1年間」という期間で、レジがどれくらい売上に貢献し、価値を消費したか(今年の使用料)を表します。
結末:P/Lの住人なので、今年の利益を計算し終わったら強制リセット(ゼロ)されます。来年は来年で、また新たな「来年の1年分の使用料」をゼロから計上し直します。
役割:「買った日から今日現在まで」に、レジがどれくらい使い込まれて古くなったかの合計額を表します。
結末:レジという実物(資産)はお店に存在し続けています。年が明けても「新品」に若返るわけではないので、「古くなった」という歴史もB/Sの住人としてリセットされずに次期繰越され、手放す日まで毎年積み上がります。
決算における「勘定の締切」とは、以下のように2つの世界を論理的に整理する作業のことです。
| グループ | 目的(見ている世界) | 理屈 | 決算での結末 |
|---|---|---|---|
| P/L (費用・収益) |
今年の成績を計算する (1月1日〜12月31日の期間) |
来年の成績と混ざらないように、毎年区切って計算し直す必要があるから。 | 今年の利益を計算したら役割終了。 ゼロにリセットする(損益振替) |
| B/S (資産・負債・純資産) |
いまの財産を把握する (12月31日時点での現実) |
年が明けても、現金や借金、備品などの現実の財産は存在し続けるから。 | 現実に存在し続けるから消せない。 そのまま来年に持ち越す(次期繰越) |
名前は似ていますが、「減価償却費」は期間の成績を測るための記録であり、「減価償却累計額」は現実の財産の記録です。だから、リセットされるものと、ずっと残るものにハッキリと分かれるのです。
直接法と間接法で違うのは、固定資産の価値の減少をそのまま固定資産から直接減額するか、減価償却累計額という勘定を使って間接的に減額するかの違いです。
P/Lに出る減価償却費はどちらも同じで、違うのはB/Sでの見せ方です。