Step 1:完成図を知る(ホームポジションの理屈)
▼
すべての基準はここにあります。
5つの要素が、B/SとP/Lの「左右どちら」にいるのか。
下の図解のように、5つの要素は、それぞれの表の中で、左右どちらに表示されるかが決まっています。
これを「ホームポジション」といいます。
資産のホームポジションは左(借方)、負債のホームポジションは右(貸方)、収益のホームポジションは右(貸方)です。
「ホームポジションはどっちだっけ?」と迷ったら、下の完成図を頭に思い描いてください。
図解:B/SとP/Lのホームポジション(完成図)
なぜ資産は左で、負債は右なのか。そしてなぜ費用は左なのか。
これから、その理由を順番に見ていきます。
1 B/Sの左右が決まる理由(絶対ルール)
まずは、B/Sから考えましょう。
簿記の世界には、絶対に崩してはいけない天秤の方程式があります。
この天秤を釣り合わせるために、それぞれのホームポジション(定位置)が決まっています。
なので、B/Sは、左が資産で、右が負債と純資産になります。
この完成図を頭に置いておくと、借方と貸方の向きがブレにくくなります。
図解:B/Sのホームポジション
2 P/Lの左右が決まる理由(純資産との関係)
では、「費用」と「収益」はどっちがホームでしょうか?
これは「最終的に、純資産(会社の持ち分)をどう動かすか」で決まります。純資産のホームは「右」でしたね。
費用が増えると、利益が減り、最終的に「純資産」を減らします。
純資産(右)を減らすには、逆側に書くのがルールです。だから、純資産を減らす要因である「費用」のホームは「左(借方)」なのです。
収益が増えると、利益が増え、最終的に「純資産」が増えます。
純資産を増やす「味方」なので、「収益」のホームも純資産と同じ「右(貸方)」です。
つまり、P/Lは、左が費用で、右が収益です。
完成したP/Lでは、左右の差額としての利益が左側に入り、全体がそろいます。
図解:P/Lのホームポジション(黒字)
収益が多いときは、差額の利益が左側に入って全体がそろいます。
図解:損失が出たときのP/L
費用が多いときは、足りない分を右側に「損失」として足して左右をそろえます。
3 BSとPLについて細かく
簿記のゴールである2つの財務諸表について、仕組みを詳しく見てみましょう。
どちらも「左(借方)の合計と、右(貸方)の合計は必ず一致する」というルールがあります。
1 貸借対照表 (B/S) = 財産の「出どころ」と「いまの姿」
貸借対照表(B/S)は、決算日など「ある特定の時点での、会社の財産の状態」を表す表です。
Step 1で、「資産 = 負債 + 純資産」という天秤のルールを勉強しましたね。実はこのルール、ビジネスの視点から言い換えると、とても当たり前でシンプルなことを言っているだけなのです。B/Sを「右と左」に分けて見てみましょう。
左側(借方) = 集めたお金が今どんな姿か
ここには、会社が実際に持っているものが並びます。
現金、商品、建物など、「集めたお金が何に変わったか」を見る場所です。
右側で集めたお金が、いま手元でどういう状態で存在しているかを表します。
右側(貸方) = 資金調達の内訳
ここには、お金をどうやって集めたかが並びます。
会社の活動を始めるための「お金の出どころ」です。
借りて集めた分が「負債」、社長や株主が出した元手が「純資産」です。
あなたが会社を作るために、自分の貯金から「現金100万円」を出資したとします。このとき、お金の出どころである右側(純資産)が100万円増えます。そして同時に、会社の手元には現金がやってくるので、いまの姿である左側(資産の現金)も100万円増えますよね。
つまり、B/Sの左と右は、まったく違うものを並べているわけではありません。「集めたお金(右)」と、「それが姿を変えたもの(左)」という、同じお金を2つの視点から見ているだけなのです。
だからこそ、「左側の合計」と「右側の合計」は必ずピッタリ一致(バランス)します。これが、貸借対照表が「バランスシート(B/S)」と呼ばれるゆえんです。
すると、右側には 純資産60・負債40 が並び、その結果として左側には 現金100という資産 が残ります。
2 損益計算書 (P/L) = 1年間の「成果」と「犠牲」の成績表
貸借対照表(B/S)が「ある時点の財産」を表すのに対し、損益計算書(P/L)は、1年間など「ある一定期間の、会社の成績」を表す表です。
P/Lも「右と左」の役割に分けて見てみましょう。
費用<収益だった時
費用より収益の方が多いので、差額は利益(当期純利益)となります。
左側には、右側の成果(売上など)を出すために払ったコスト(費用)が並びます。右側には、会社が期間中に生み出した成果(収益)が並びます。
費用>収益だった時
収益より費用の方が多いので、差額は損失(当期純損失)となります。
左側には、商品仕入代・家賃・給料などの費用が並びます。右側には、売上などの収益が並びます。
あなたが文化祭で「たこ焼き屋」を出したとします。お客さんにたこ焼きを売って受け取ったお金(10万円)が、右側に並ぶ「収益(成果)」です。でも、その10万円を稼ぐために、タコや小麦粉を買ったり、場所代を払ったりして7万円使いました。これが左側に並ぶ「費用(犠牲)」です。
B/Sと違い、P/Lは最初から左右が一致しているわけではありません。この左右のズレ(差額)が、会社の本当の儲けである「利益」、または赤字である「損失」です。
最終的に表の形にする時は、足りない側に利益(または損失)を書き足すことで、箱のサイズ(左右の合計)をピッタリ一致させます。
3 B/SとP/Lの関係(利益のゆくえ)
P/Lで計算された「当期純利益」は、最終的にB/Sの「純資産」に合流します。
純資産は、「元手(資本金)」と「過去の利益の蓄積(利益剰余金)」の2階建て構造になっています。
最終的に純資産の「利益の蓄積(利益剰余金)」の欄に持っていきます。
「純資産(右側)に利益の分だけを足したら、右側が重くなって、左側(資産)と合わなくなるのでは?」と心配になるかもしれません。
大丈夫です。利益が出ているということは、その分だけすでに左側の「資産(現金など)」も増えているからです。
スタート時(期首): 会社の状態は、資産100円 = 負債40円 + 純資産60円(左右とも100円でピッタリ)。
取引(経済活動): 持っていた「100円の商品」を、「130円の現金」で売りました。
この取引のあと、B/Sの左右はどう動くでしょうか?
左側(資産)の動き: 100円の「商品」がお客さんの元へ出ていき、代わりに130円の「現金」が会社に入ってきました。つまり、資産のトータルは差し引きで「+30円」増え、合計130円に膨らみます。
右側(負債・純資産)の動き: 負債40円は変わりません。一方、資産が30円増えた理由は「会社が儲けたから」です。つまり、その30円は、借金ではなく会社自身の持ち分である純資産の増加として説明されます。
利益の合流(パズルの完成): P/Lで計算した「当期純利益30円」は、あとから別のお金を足すものではありません。すでに左側で増えている資産30円に対して、右側に「これは利益で増えた純資産です」と名前をつける処理です。すると純資産が90円(60+30)になり、右側の合計も「130円(負債40+純資産90)」となって、B/Sの貸借は一致します。
130円で売る
純資産へ合流
100
30
130
当期純利益30を純資産に入れると、期末B/Sの貸借がピタッとそろいます。