簿記の考え方②(記録から報告へ)
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簿記の考え方②(記録から報告へ)
簿記には、自分たちが管理するための「内向きの顔」と、株主や銀行に見せるための「外向きの顔」の2つの顔があることを理解する。
導入
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簿記には、自分たちが管理するための「内向きの顔」と、株主や銀行に見せるための「外向きの顔」の2つの顔があることを理解する。
あなたはレストランの店長です。
厨房(経理部)の中では、「玉ねぎ」「人参」「じゃがいも」と細かく在庫管理していますよね。これが「勘定科目」です。
でも、お客様(株主・銀行)に出すメニュー表(決算書)に、「玉ねぎ・人参・じゃがいも煮込み」とは書きませんよね? もっと分かりやすく「特製カレー」と書くはずです。これが「表示科目」です。
この単元では、自分たちが使う細かい「帳簿(主要簿・補助簿)」の話と、それをまとめて外に見せる「決算書(B/S・P/Lの表示)」の話をつなげていきます。
全体像
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今回は「内部」と「外部」の視点で全体を整理します。
- 道具: 主要簿(必須)と補助簿(サブ)
- 言葉: 勘定科目(細かい:現金・当座預金・仕入・売上原価 など)
- 道具: B/SとP/L
- 言葉: 表示科目(まとめるor名称を変更する:現金及び預金・売上原価 など)
step1.勘定科目と表示科目
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「勘定科目」は日々の記録用の名前ですが、B/SやP/Lを作る時(表示する時)には、投資家が見やすい名前に「集計・変身」します。
パターンA:単純な変身(資産負債の例)
パターンB:複雑な変身(商品売買の例)
ここからが本番です。現金と預金の額は合算して「現金預金」にまとめられますが、「商品売買(仕入や売上)」は単純な足し算では表示科目の金額を作れません。
まず、「スタート(日々の記録)」と「ゴール(決算書の表示)」の関係を見てみましょう。
三分法(最も一般的な方法)の場合、名前がガラッと変わります。
なぜ、商品売買だけそんなに特別なのでしょうか?
それには、どうしても知っておかなければならない「2つの理由」があります。
実は、商品の記録方法には「三分法」「分記法」「売上原価対立法」など、色々な流派があります。(※今は名前だけでOKです。「いろんなやり方があるんだな」と思ってください)
厨房での「調理法」が店によって違うように、会社によって記録の仕方がバラバラなのです。
ここが最も重要です。
多くの会社(三分法)では、期中に「仕入(費用)」という科目を使っていますが、決算書(P/L)には「売上原価」として載せたいのです。 しかし、この2つは似ているようで全く別物です。
1 「仕入」と「売上原価」の違い(超重要)
ここで言葉の定義をはっきりさせておきましょう。ここを曖昧にすると、決算で迷子になります。
- 意味: 「今年、商品を買ってくるために使った金額」。
- イメージ: コンビニのオーナーが、トラックからおにぎりを100個受け取って、代金を払った。
- 性格: 「買う」というアクション(行動)の記録です。
- 意味: 「今年、売れていった商品にかかっていたコスト」。
- イメージ: お客さんがレジに持ってきて、売れていったおにぎり80個分だけのコスト。
- 性格: 売上(収益)に対応する成果(結果)の記録です。
もし、仕入れたおにぎり(100個)が、その日のうちに全部売り切れたら、「仕入」と「売上原価」は同じ金額になります。
しかし、商売では必ず「売れ残り(在庫)」が出ますよね?
売上原価: 80個しか売れなかった。(8,000円)
ズレ: 20個売れ残った。(在庫=2,000円)
もし、P/Lに「仕入 10,000円」をそのまま費用として載せてしまったら、どうなるでしょうか?
これでは、「本当は儲かっているのに、仕入れすぎたせいで赤字に見える」なんてことが起きてしまいます。
正しい成績(利益)を計算するためには、
「売上(80個)」には「売れた分のコスト(80個分)」を対応させなければならない(費用収益対応の原則)。
だから、売れ残った2,000円を除外して、売上原価(8,000円)を表示することが絶対に必要なのです。
2 「決算整理仕訳」という名の帳尻合わせ
💡 そこで登場!「決算整理仕訳」
決算整理とは帳尻合わせのことです。表示科目の金額になるように、決算時(期末)に調整するのが決算整理です。
「仕入(10,000円)」の科目名を、ただ張り替えて「売上原価(10,000円)」にするだけでは、金額が間違ったままになってしまいます。
だから、「数字の改造手術」が必要になります。
私たちの悩み vs 解決策
手元の帳簿(勘定科目)には、「仕入(買った総額)」しかない。
でも、報告書(表示科目)には、「売上原価(売れた総額)」を載せなきゃいけない。
「仕入」勘定の数字をこねくり回して、「売上原価」の数字に改造してしまおう!
この作業こそが、「決算整理仕訳」の目的の一つです。
決算整理仕訳とは、難しい数学ではありません。
「B/S・P/Lという『ゴール(表示科目)』が決まっているから、手元の『材料(勘定科目)』を計算して、ゴールの数字に直すための帳尻合わせ」なのです。
このように、「なぜ表示科目(ゴール)が決まっているのか?」を理解すれば、「なぜ決算整理(プロセス)が必要なのか?」が自然と分かってきます。
3 最強の思考ツール「商品BOX」
ここからは、「勘定科目と表示科目はなぜ変わるのか」、「決算整理(数字の調整)はどんな考え方で行うのか」などの疑問を、 ① 商品BOXの面 と ②「三分法」「売上原価対立法」の対比の2つの視点で見ていきます。
- ストーリー性は持たせますが、内容が行ったり来たりしながら同じ本質を「別の角度」から確認します。
- 売上原価対立法は2級範囲、商品BOXは1級でも使われるメモ的ツールです。
初学者には重い内容になります。理解できなくても大丈夫。
まずは「勘定科目と表示科目は変わることがある」と分かればOKです。
簿記は最初は“なんとなく”で解いて、問題演習の中で自然に身についていくものです。
一周後に読み直すと、用語と全体像に慣れて、自然と読みやすくなります。
そして、「今どこのステップをやっているか」を常に意識しましょう。開閉カードは、読むたびに一度閉じて位置確認するのがコツです。
「商品BOX」で謎を解く
「勘定科目」は日々の記録用の名前ですが、B/SやP/Lを作る時(表示する時)には、投資家が見やすい名前に「集計・変身」します。
会社によって日々の記録方法(三分法や売上原価対立法)は違いますが、「現実に起きているモノの動き」は同じです。
例:「トラックからおにぎりが届いて、お客さんがそれを買って、いくつかが棚に残る」というおにぎり(モノ)の物理的な動きは、どの記録方法を取っていても変わりません。
この「共通のモノの動き」を図にしたのが、「商品BOX」です。
これを使って考えると、なぜ決算整理仕訳で「売上原価」と「商品」の数字になるのか。その仕組みが完全に分かります。
これは正式な帳簿(勘定科目)ではありません。計算用紙に書く「メモ(図解ツール)」です。 しかし、プロも必ず頭の中にこの箱を持っています。 イメージとしては、「もしも『商品』という資産の勘定科目があったら?」と仮定したTフォームです。
資産が増えるホームポジションは左ですよね。だから「①去年の残り」と「②今年買った分」は左に書きます。
入ってきたモノの運命は2つしかありません。
- 売れていった(③) ➡ 商品という資産が減った。売るために犠牲になったコストなので、これが「売上原価」になります。
- 残っている(④) ➡ 商品という資産として来年に繰り越す(=在庫)。これがB/Sの「商品」になります。
資産(商品)と費用(売上原価)はつながっています。
「お店から出て行って、売上に貢献した分(右上)」が費用になり、「まだ残っている分(右下)」が資産として残る。
これは商品に限らず、切手(通信費/貯蔵品)など、すべての「費用性資産」に共通する黄金ルールです。
4 記録方法は自由、でも「表示」はひとつ!
ここが会計の面白いルールです。
会社の中での「処理方法(料理法)」は自由ですが、外に見せる「表示方法(メニュー)」は統一されています。
商品売買取引一つ取っても、色んな記帳方法があります。「三分法」「売上原価対立法」「分記法」「総記法」、、。どの記帳方法を選ぶかは、会社の自由です。
毎日計算するのが大変なら「三分法」、POSレジがあって管理できるなら「売上原価対立法」、好きに選べます。
どんな方法を選んでも、決算書(B/S・P/L)に載せる数字は、必ず「商品BOX」の右側(③と④)でなければなりません。
「左側(仕入れた金額)」をそのまま報告してはいけないのでしょうか?
その答えは、簿記の「最終ゴール」に立ち返れば自ずと見えてきます。
簿記のゴールは何だったでしょうか?
それは、「正しい財政状態(B/S)と経営成績(P/L)を報告すること」ですよね。
利害関係者(投資家や銀行)が知りたい「商品売買の真実」は、以下の2つだけだからです。
投資家は「商品をいくら仕入れたか(左側)」には興味がありません。
知りたいのは、「売上(成果)を上げるために、いくらのコスト(努力)を使ったか」です。
だから、売れて出ていった分の「③売上原価(商品BOXの右上)」を報告しなければなりません。
投資家は「過去にいくらあったか(左側)」には興味がありません。
知りたいのは、「決算日現在、倉庫にいくらの価値が残っているか」です。
だから、売れ残っている分の「④期末在庫(商品BOXの右下)」を報告しなければなりません。
簿記が報告すべきなのは、準備したことではなく、「その結果どうなったか(それくらい売れたのか?どれくらい残ったのか?)」という「右側(③と④)」の事実なのです。
だからこそ、どんな記録方法(三分法でも売上原価対立法でも)を選んだとしても、最終的な決算書には必ずこの「2つの真実(右側)」を表示するルールになっているのです。
5 三分法と売上原価対立法
では、それぞれの処理方法で、どうやってこの「ゴール(③と④)」にたどり着くのか見てみましょう。
- 三分法: 商品売買の取引について、「繰越商品」「仕入」「売上」の三つの勘定を使用して記帳する記録方法。
- 売上原価対立法: 商品売買の取引について、「商品」「売上原価」「売上高」の三つの勘定を使用して記帳する記録方法。
| 項目 | 三分法 | 売上原価対立法 |
|---|---|---|
| 仕入時 | (仕入)×× (現金)×× | (商品)×× (現金)×× |
| 売上時 | (現金)×× (売上)×× |
(現金)×× (売上)×× (売上原価)×× (商品)×× |
| 決算整理直前の各勘定が 表している数字の意味 =決算整理前試算表(前T/B)の各勘定の数字の意味 |
仕入:当期仕入額
(売れた商品に対応する原価ではなく、あくまでも当期に仕入れた額)
繰越商品:期首商品棚卸高
(期首商品時点であった商品の在庫の金額=前期末の売れ残り)
売上:当期売上額
|
売上原価:当期売上原価
(売上に対応する原価=売れた商品の原価)
商品:期末商品棚卸高
(当期末の在庫額)
売上:当期売上額
|
| 決算整理仕訳 |
(仕入)×× (繰越商品)×× (繰越商品)×× (仕入)×× |
なし |
| 決算整理後の各勘定が 表している各勘定の数字の意味 =決算整理後試算表(後T/B)の各勘定の数字の意味 |
仕入:当期売上原価
繰越商品:期末商品棚卸高
売上:当期売上高
売上原価:当期売上原価
(売上に対応する原価=売れた商品の原価)
商品:期末商品棚卸高
(当期末の在庫額)
売上:当期売上高
決算後は、勘定名が違っても数字の意味はそろいます。つまり「期末商品」「売上原価」は、使う勘定科目名が違っても同じ内容を表すということです。
(見て!揃ってるでしょ?)
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6 【核心】なぜ「三分法」だけ決算整理仕訳をするのか?
仕訳の表を見て、「あれ? 売上原価対立法は、決算で何もしなくていいの?」と驚いたかもしれません。
ここに、簿記の「決算の正体」が隠されています。
先ほども出てきましたが、簿記のゴールは何だったでしょうか?
それは、「正しい財政状態(B/S)と経営成績(P/L)を報告すること」ですよね。
商品売買において、報告しなければならない「真実」は以下の2つです。
売れていった商品のコストはいくらか?(商品BOXの右上③)
売れ残っている在庫の価値はいくらか?(商品BOXの右下④)
この「2つの真実」を、いつ確定させるか?というタイミングの違いだけなのです。
<決算は「帳尻(ちょうじり)合わせ」の儀式>
決算整理とは、「普段のサボりを修正して、正しい数字に直す作業」です。
売上原価対立法(マメな性格)
売るたびに「資産➡費用」の振替を行っています。
つまり、毎日コツコツと「帳尻合わせ」をしているのです。
だから、決算日にはすでに正しい数字(③と④)が出来上がっています。だから、何もしなくていいのです。
三分法(ズボラな性格)
普段は「全部費用(仕入)」としてドンブリ勘定で記録しています。
期中は「売上原価がいくらか?」「在庫がいくらか?」という真実を無視しています。
だから、決算日にまとめて「帳尻合わせ」をしなければなりません。
それが、あの「しーくり・くりしー」という仕訳なのです。
- 売上原価対立法: 毎日一歩ずつ、確実に頂上(正しい数字)に向かって歩いている。
- 三分法: 普段は麓(ふもと)で寝ていて、決算日にヘリコプター(決算整理仕訳)を使って一気に頂上へワープする。
「三分法だから決算整理をする」のではありません。
「普段サボっていた(売上原価の計算を後回しにしていた)から、最後にまとめて計算して、商品BOXの真実に合わせにいく」。
これが決算整理仕訳の本質なのです。
7 商品BOXの取り扱い
「三分法」だろうが「売上原価対立法」だろうが、やっていることは結局これです。
「商品BOXの右側(③売上原価と④期末在庫)を求めて、B/SとP/Lに載せること」。
最初から③を記録しているのが「売上原価対立法」。
左側の合計から④を引いて、③をあぶり出すのが「三分法」。
登り方は違いますが、目指している頂上(表示科目)は全く同じなのです。
迷ったら必ずこの「商品BOX」を書いてほしいのですが、ひとつだけ気をつけてほしいことがあります。
それは、「記録方法」や「タイミング」によって、BOXの場所と勘定科目の名前がズレることがあるということです。
現実の世界では、どの会社でも「①期首 + ②仕入 = ③売れた + ④残った」という箱の形は絶対に変わりません。
2. 「勘定科目」は役割が違う(変わる)しかし、その箱の「どの部分」を「なんという名前(勘定科目)」が担当しているかは、状況によってコロコロ変わります。
ここが簿記の落とし穴です。以下のリストで整理しましょう。
【パターンA:売上原価対立法の場合】(リアルタイム更新なのでシンプル!)
- 「商品」勘定 ➡ BOXの「④(右下)」を表す。(常に今の在庫!)
- 「売上原価」勘定 ➡ BOXの「③(右上)」を表す。(常に今のコスト!)
【パターンB:三分法の場合】(ここが要注意!タイミングで場所がワープします)
- 「仕入」勘定 ➡ BOXの「②(左下)」だけを表す。(当期仕入高)
- 「繰越商品」勘定 ➡ BOXの「①(左上)」を表す。(※去年の残り!)
- ※この時点では、BOX右側の③と④を表す科目は存在しません!
- 「仕入」勘定 ➡ 変身して、BOXの「③(右上)」を表す。(売上原価)
- 「繰越商品」勘定 ➡ 変身して、BOXの「④(右下)」を表す。(※今年の残り!)
「商品BOXの右下(在庫)は、常に『繰越商品』だ!」と丸暗記してはいけません。
三分法の場合、
- 決算整理前の「繰越商品」は、左上の数字(去年の残り) ですが、
- 決算整理後の「繰越商品」は、右下の数字(今年の残り) に変わります。
同じ「繰越商品」という名前でも、タイミングによって指している場所が対角線に移動するのです。
問題では、①期首商品棚卸高と②当期仕入高が資料で与えられ、
まず④期末商品棚卸高を自分で計算させるケースがとても多いです。
そして最後に、③売上原価 = ① + ② − ④ で求めさせます。
- まず、メモ用紙に「商品BOX(Tフォーム)」を書く。
- 問題文を読んで、「期首はいくら? 仕入はいくら?」と数字をBOXの中に書き込む。(これが真実の数字です)
- 最後に、「今、自分はどの記録方法を使っているか?」「今は決算の前か後か?」を確認し、そのBOXの数字を適切な勘定科目に当てはめる。「BOXはあくまで地図」です。
「今、自分が地図上のどこにいて、どの勘定科目を使っているのか」を常に意識しながら、この最強のツールを使いこなしてください!
step0徹底解剖:商品売買の「時系列」と「数字の正体」
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まずは、今回のシミュレーションで使う「事実(数字)」を決めましょう。
どの記録方法を使っても、現実に起きたことはこれです。
- ① 期首在庫(去年からの売れ残り):100円
- ② 当期仕入(今年買ってきた分):1,000円
- ③ 売上原価(売れていった分の原価):800円
- ④ 期末在庫(売れ残った分):300円
この「事実」を、2つの方法でどう記録していくのか、追いかけていきましょう。
パターンA:売上原価対立法(最初から答えを知っている)
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「売った瞬間に、商品BOXの右側(③と④)を常に更新し続ける」スタイルです。
今のPOSレジ(バーコード管理)と同じ動きです。
1. 期首(スタート地点)
「商品」勘定の残高 = 100円
これは去年の売れ残り(BOX左上の①)がそのまま残っています。(BSグループは前期末の額が繰越される為。)
2. 期中(日々の動き)
「この商品は仕入れてきただけでまだ売れていないから、費用ではなく資産だ!」という考え方で記録します。
ここが最大の特徴です。売上と同時に「売上に対応するコストの確定」を行います。
3. 決算整理前(決算日になった瞬間)
この時点での各勘定科目の残高(Tフォーム)はどうなっているでしょうか?
- 「売上原価」勘定の残高 = 800円 ➡ すでにBOX右上の「③売上原価」と一致しています。
- 「商品」勘定の残高 = 300円(計算:期首100 + 仕入1,000 - 売れて減った800 = 300) ➡ すでにBOX右下の「④期末在庫」と一致しています。
4. 決算整理仕訳(修正)
理由: すでに帳簿(勘定科目)の数字が、B/S・P/Lに載せるべき「③」と「④」になっているからです。
5. 決算後(ゴール=B/S,P/Lの作成)
P/Lの「売上原価」には 800円 と表示。
P/Lの「売上高」には 1200円 と表示。
B/Sの「商品」には 300円 と表示。
※BS,PLと同じ表示科目を使用しているので、勘定科目と表示科目は基本的に一致します(売上を売上高に変えるのみ)
売上原価対立法は、「リアルタイムで商品BOXの右側を作っていく方法」です。
だから決算(=帳尻合わせ)では何もしなくていいのです。
パターンB:三分法(決算で魔法の変身をさせる)
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「普段はBOXの左側しか見ない。決算で無理やり右側を作る」スタイルです。
ここからの流れを、絶対に逃さないでください。
1. 期首(スタート地点)
「繰越商品」勘定の残高 = 100円
これは去年の売れ残り(BOX左上の①)がそのまま残っています。
2. 期中(日々の動き)
「面倒だから当期に全て売れると仮定して、仕入れた時に全額費用にしちゃえ!」という考え方です。仕入勘定という費用の勘定科目を使用して記帳します。
3. 決算整理前(ここが問題!)
さあ、決算日です。この時点の帳簿残高を見てみましょう。
- 「仕入」勘定の残高 = 1,000円 ➡ これは「②今年買った分=当期仕入額」の数字です。③売上原価(800円)ではありません!
- 「繰越商品」勘定の残高 = 100円 ➡ これは「①去年の残り」の数字です。今の在庫(300円)ではありません!
このままでは、P/Lに載せたい「③売上原価(800)」も、B/Sに載せたい「④期末在庫(300)」も、どこにもありません。
そこで、「仕入」勘定を改造して「売上原価」に変身させる作業を行います。
4. 決算整理仕訳(魔法の引き算)
ここでいわゆる決算整理仕訳「しーくり・くりしー」の登場です。
仕入勘定を「当期仕入額」から「当期売上原価」に変え、
繰越商品を「当期首棚卸高」から「期末商品棚卸高」に変えます
まず、去年の残り(①)を仕入勘定に合体させます。
何が起きた?:
「繰越商品」勘定はゼロになりました。
「仕入」勘定は、1,000(②)+ 100(①)= 1,100円 になりました。
今の「仕入」勘定の意味: 「今年、お店にあったすべての商品(BOXの左側合計)」になりました。
倉庫で数えたら、在庫(④)が300円あると分かりました。 これを「仕入」勘定から引っこ抜いて、「繰越商品(資産)」に避難させます。
何が起きた?:
「繰越商品」勘定は、300円(④期末在庫) になりました。 ➡ B/S完成!
「仕入」勘定は、1,100(左側合計)- 300(④)= 800円 になりました。
「仕入」勘定に残った 800円。これはいったい何でしょう?
「お店にあった全て(1,100)」から「売れ残り(300)」を引いた残りカス…。
そう、これこそが「売れていった分(③売上原価)」です!
今の「仕入」勘定の意味: もはや「仕入れた額」ではありません。「売上原価(③)」に変身完了です。
5. 決算後(表示の統一)
この変身した数字を使って、報告書を作ります。
- P/Lの表示:「仕入」勘定に残った800円を、名前を変えて 「売上原価」 800円 と表示。
- B/Sの表示:「繰越商品」勘定に入れた300円を、名前を変えて 「商品」 300円 と表示。
- 売上原価対立法:「商品」勘定が、常にBOXの動き(増減)をリアルタイムで追いかけている。
だから、いつでも「③」と「④」が分かっている。=決算整理仕分けは必要ない。 - 三分法:「仕入」勘定は、普段はBOXの左下(②)しか見ていない。
決算整理(しーくり・くりしー)によって、「仕入」勘定の中で「①+②-④=③」という計算式を実行している。
その結果、決算後の「仕入」勘定は、「③売上原価」という意味に書き換わる。
どちらの道を通っても、最終的にB/SとP/Lに載る数字(③と④)は、「商品BOXの右側」と完全に一致します。
これが、「処理方法は自由だが、表示は統一」という言葉の本当の意味なのです。
「三分法」だろうが「売上原価対立法」だろうが、やっていることは結局これです。
「商品BOXの右側(③と④)を求めて、B/SとP/Lに載せること」。
最初から③を記録しているのが「売上原価対立法」。
左側の合計から④を引いて、③をあぶり出すのが「三分法」。
登り方は違いますが、目指している頂上(表示科目)は全く同じなのです。
迷ったら、必ずこの「商品BOX」をメモ用紙に書いてみてください。答えはすべてこの箱の中にあります。
step2.BSとPLの表示方法
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表示方法-報告式と勘定式-
B/SとP/Lの表示方法(形式)は、大きく分けて2つあります。勘定式と報告式です。
Tフォームのように左右に分ける形式。今まではこれで考えてきましたね!
B/Sでよく使われます。「左に資産、右に負債・純資産」が見やすい。
上から下にズラズラと並べる形式。
P/Lでよく使われます。「売上から順番に引いていって、最終的な利益を出す」計算過程が見やすい。
文だけだとイメージしづらいと思うので、ここからは一緒に図解で確認していきましょう。
勘定式
B/S
P/L
報告式
B/S
P/L
BSの区分
2. B/Sの区分(資産・負債・純資産の種類)
B/Sはただ資産を並べるのではなく、「現金化しやすい順」に並べます(流動性配列法)。
- 流動資産: 現金のほか、預金・売掛金などのように短期間(一年以内)で現金に換えることのできるもの
- 固定資産: 土地や建物のように長期間(一年を超えて)使用する目的で持っている資産
- 繰延資産: 効果が長続きするから特別に資産扱いするもの(創立費など)
- 流動負債: 1年以内に返さないといけない借金(買掛金、短期借入金など)。
- 固定負債: 1年後以降に返せばいい借金(長期借入金など)。
- 株主資本: 資本金、利益剰余金など(メイン)。
「流動」か「固定」かの区切りは、決算日の翌日から「1年以内」**かどうかで決めます。
PLの区分
3. P/Lの区分(利益の5段階)
報告式のP/Lでは、収益と費用を対応させて、5種類の利益を計算します。
これが「会社の成績表」の真骨頂です。
商品やサービスの「素材の力」で稼いだ利益です。
計算式: 売上高 - 売上原価 意味: 商品そのものにどれだけの付加価値があるかを示します。ここがマイナスだと、売れば売るほど赤字という非常にマズイ状態です。
本業の「ビジネスモデル」で稼いだ利益です。主たる営業目的から発生した利益。
計算式: 売上総利益 - 販売費および一般管理費(=販管費) 意味: 広告宣伝費や社員の給料、オフィスの家賃などを支払った後に残る、本業の実力値です。投資家が最も注目する項目のひとつですね。
本業に加えて、財務活動など「会社全体の経常的な活動」で稼いだ利益です。(主たる営業目的+財務活動)によって発生した利益。
計算式: 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 意味: 利息の受け取りや支払、株の配当金など、本業以外で毎月・毎年発生する収支を含めます。「会社としてのトータルの実力」を表します。
その期間に発生した「すべての事象」をひっくるめた利益です。(主たる営業目的+財務活動+経常的に発生しない特別な事象から生まれた収益費用を足し引きする。)
計算式: 経常利益 + 特別利益 - 特別損失 意味: 火災による損失や、古い工場の売却益など、「今回だけ特別に発生したこと」をすべて加味した数字です。
最終的に会社の手元に残る「本当の取り分」です。
計算式: 税引前当期純利益 - 法人税等 意味: 税金をすべて払い終えた後の最終的な成果です。このお金が配当金になったり、次の投資への内部留保になったりします。
勘定科目を話分ける理由-営業目的とそれ以外-
4. 営業目的とそれ以外で勘定科目を変更しなくてはいけないこと
このステップで学んできたことと交えて、重要なルールをお伝えします。 それは、「何のために持っているか(目的)」によって、名前(勘定科目)が変わるということです。
これをごちゃ混ぜにすると、銀行や投資家が困ってしまいます。
具体的には、簿記には「営業活動(本業=メインの商売)」と「それ以外(サブの活動)」を明確に区別して表示しなければならないという鉄則がある。ということ。
① 不動産会社とパン屋さんの例(本業 vs それ以外)
同じ「不動産(マンション)」を売ったとしても、その会社のビジネスによって科目が変わります。
- 目的: 営業目的(本業の商品として売るため)
- P/Lの場所: 売上高(費用は「売上原価」)
- B/Sの表示: 商品(流動資産)
- 目的: 事業目的(本業以外。パンを焼く場所として使うため)
- P/Lの場所: 固定資産売却益(特別利益)
- B/Sの表示: 建物(固定資産)
- P/L目線(実力の誤解): もしパン屋さんがビルを売った利益を「売上高」に入れてしまったら、「すごい!今年はパンが爆売れしたんだ!」と銀行が勘違いしてしまいますよね? 「本業の実力(営業利益)」と「たまたまの利益(特別利益)」を明確に区別するために、目的によって科目を厳密に使い分けるのです。
- B/S目線(現金化の誤解): もしパン屋さんが工場を「商品(流動資産)」に入れてしまったら、「商品が沢山あるんだな。」と思われます。しかし実際は商品の在庫ではなく、工場の価値です。
「商品」と「それ以外」を混ぜてしまうと、どのくらい商品があって、どのくらい事業用の建物があるのかわからなくなってしまいます。これでは「今在庫がいくらだから、来年はいくら仕入れよう」などの正常な経営判断もできません。
又、不動産会社が商品として建物を所持しているときは、その建物は、「建物(固定資産)」ではなく、「商品(流動資産)」となります。
② 売掛金と未収金 / 買掛金と未払金
「後でお金をもらう権利」「後で払う義務」も、それが本業に関わるかどうかで名前が変わります。
| 取引の内容 | 目的 | 勘定科目(名前) |
|---|---|---|
| 【買う時(支払義務)】 | ||
| 小麦粉(材料)をツケで買った | 営業目的(本業) | ➡ 買掛金 |
| レジスター(備品)をツケで買った | それ以外 | ➡ 未払金 |
| 【売る時(回収権利)】 | ||
| パン(商品)をツケで売った | 営業目的(本業) | ➡ 売掛金 |
| 古い配送車(車両)をツケで売った | それ以外 | ➡ 未収金 |
B/S目線(借金の質の誤解): 例えば、パン屋さんが敷地を広げて事業拡大する目的で土地を購入代金を間違えて「買掛金」として記録したとします。 「買掛金」は本業の借金なので、銀行は「小麦粉をたくさん仕入れたんだな。」と判断します。 実際は土地を購入した借金なのに、「本業から出た借金が多い!経営が危ない!」と誤解されてしまうのです。 「本業から出る借金(主たる営業目的から出る借金)」と「その他の借金(主たる営業目的から出る借金)」を区別しないと、会社が潰れそうかどうかが正しく分かりません。
step3.帳簿の種類
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Step 3:帳簿の種類(主要簿と補助簿)
最後に、これらの数字を作る元となる「帳簿(ノート)」の種類を整理しましょう。
「これがないと簿記じゃない!」という絶対に欠かせない2冊。
- 仕訳帳(しわけちょう): すべての取引を日付順に記録する(時系列データ)。
- 総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう): 勘定科目ごとのTフォームを集めたもの(科目別データ)。
主要簿だけでは分からない「詳細」をメモするサブノート。必要に応じて作ります。
- 補助記入帳(特定の取引を詳しく書く):
- 現金出納帳: 現金の出入りを詳しく。
- 当座預金出納帳: 銀行口座の動きを詳しく。
- 仕入帳・売上帳: 商品の売買の詳細(単価や個数)を記録。
- 補助元帳(特定の相手やモノを詳しく書く):
- 売掛金元帳(得意先元帳): 「A社にいくら、B社にいくら貸しているか」を管理。
- 買掛金元帳(仕入先元帳): 仕入先ごとの借金を管理。
- 商品有高帳(しょうひんありだかちょう): 商品の種類ごとに「入庫・出庫・在庫」を管理。
- 主要簿 = 会社全体の「日記帳」と「お小遣い帳」。
- 補助簿 = 「ダイエット記録」や「読書リスト」のような、特定のテーマ専用のノート。
これで、簿記の「考え方」の後半戦、報告書と帳簿の仕組みもマスターしました。
細かい帳簿の名前は、実務や試験問題を解きながら「あ、これのことか!」と一致させていけば大丈夫です。
まずは「B/Sは流動・固定に分かれる」「P/Lには5つの利益がある」という地図を頭に入れておいてください。