1
導入
📖 最小結論(結論ファースト1行)

この単元は、「お金の置き場所(現金・預金・小口現金)を正しく選び、“資産は増えたら借方/減ったら貸方”の型で仕訳できるようになる」ための単元です。

ストーリー導入(イメージ)

あなたの財布の中身=現金。
銀行口座=普通預金・定期預金。
会社だと、さらに「会社用の決済口座(当座預金)」や、「細かい支払い専用の財布(小口現金)」が登場します。

簿記3級の最初の山は、ここです。
「お金は全部同じじゃないの?」と思うところを、“置き場所(どこにあるお金か)”で分けるのがコツ。
ここが分かると、後の単元(商品売買、債権債務、決算整理)まで一気に楽になります。

会社のお金 金庫 現金 小口財布 小口現金 銀行 預金

イメージ:置き場所による区別

2
全体像(俯瞰図・構造マップ)

【構造マップ:お金のグループ分け】

  • 現金:手元にあるお金(財布・金庫)+「現金として扱ってよいもの(通貨代用証券など)」
  • 小口現金:細かい支払い専用の手元資金(現場用の“小さな財布”)
  • 預金(銀行に置いてあるお金)
    • 普通預金:振込・引落など一般的な口座
    • 定期預金:原則すぐ引き出せない(預け替えが頻出)
    • 当座預金:小切手・手形の決済用(会社の“決済専用”)
  • 当座借越:当座預金がマイナスになった部分(銀行の立替=借金)

t字勘定を最初に見てみよう

現金(資産)
受取額
支払額
現金残高
小口現金(資産)
設定額/補給額
報告を受けた額(小口現金で支払った額)
小口現金残高
普通預金(資産)
預け入れ額/振り込み額
引出し額/引き落とし額
預金残高
定期預金(資産)
預け入れ額/振り込み額
引出し額/引き落とし額
預金残高
当座預金(資産)
預け入れ額/振り込み額
引出し額/引き落とし額
預金残高
当座借越(負債)
返済額
借越額
借越金残高
ヘッダー(画面上部の濃い灰色の「t字勘定を最初に見てみよう」の部分)をタップすると、 各グループの勘定、BS,PLが書いてあるので、参考にしてください。

【頻出パターン早見表(これだけで試験の型が見える)】

区分 パターン名 よく出る場面(条件の言語化) 最小仕訳の型(覚える骨格)
現金 現金を受け取った時 売上を現金で受取/貸付金回収を現金で受取 など
×× / ××
現金を支払った時 現金で購入/現金で費用支払 など
×× / ××
他人振出し小切手を受け取った時 売掛金回収などで、取引先振出し小切手を受け取った
×× / ××

※直ちに当座預金に預けた時は「現金」ではなく「当座預金」で処理

小切手の受け取りと当座預金の預け入れが同時の時 小切手を受け取って、ただちに当座預金とした。
×× / ××
×× / ××

現金 ×× / 相手科目 ×× ではなく、当座預金で処理する。

※現金で補充したなら「現金」、当座預金で補充したなら「当座預金」。

考え方
現金 ×× / 相手科目 ××:報告
当座預金 ×× / 現金 ××:補給

同時に処理すると、現金が相殺されるため、最終形は「費用 ×× / 現金等 ××」になります。

小口現金 小口現金を前渡ししたとき(設定時) 経理が小口係に一定額を渡して、小口現金を持たせる
×× / ××
小口現金で支払った時 小口係が交通費・消耗品などを現金で支払った(領収書を保管)
仕訳なし

※定額資金前渡制度では、支払都度ではなく報告・補給時にまとめて記帳する。

支払いの報告を受けた時 領収書がまとめて提出され、経理が費用内容を確定させた
×× / ××

※小口現金という財布から費用を支払ったと考える。費用ではないケースもたまにある。

小口現金を補給した時 使った分を補給した(補給だけ行う)
×× / ××

※現金で補充したなら「現金」、当座預金で補充したなら「当座預金」。

報告と補給が同時の時 領収書提出(報告)と同時に、小口現金に補給した。
×× / ××

※現金で補充したなら「現金」、当座預金で補充したなら「当座預金」。

考え方
費用 ×× / 小口現金 ××:報告
小口現金 ×× / 現金 ××:補給

同時に処理すると、小口現金が相殺されるため、最終形は「費用 ×× / 現金等 ××」になります。

普通預金 預け入れた時 現金を銀行に預けた/売掛金が振り込まれた
×× / ××
引き出した時 普通預金から引出/引落(家賃・水道光熱費など)
×× / ××
定期預金 預け入れた時 現金で定期預金に預け入れた
×× / ××
引き出した時 定期預金から現金で引き出した
×× / ××
当座預金 預け入れた時 当座預金に預け入れた
×× / ××
引き出した時 小切手を振り出して支払った(当座預金から支払った)
×× / ××
自己振出しの小切手を受け取った時 自社が以前振り出した小切手が未決済で戻ってきた(支払取消)
×× / ××

※例:買掛金など。

【つまずきやすいポイント:他人振出し小切手と自己振出し小切手】

他人振出し小切手(受取側の目線)
「相手の銀行口座(相手の当座預金)から支払われる約束の紙」
→ 自社の当座預金は動いていないので 当座預金は使わない
→ すぐ換金できるので 現金として受け取る(原則)

自己振出し小切手(自社の目線)
「自社の当座預金から支払うために発行した“支払命令書”」
→ 振り出した瞬間に 当座預金が減る(支払ったのと同じ扱い)
→ 返ってきたら 当座預金の減少を取り消す(当座預金が戻る)

※ちなみに、この自社振出し小切手/他社振出し小切手の話は当座預金のところでも出てきます。
違う面から自社振出し小切手、他社振出し小切手について話していますが、同じことを話しているので復習感覚で読んでください。

3
各論:1) 現金 (Cash)
現金(資産)
受取額
支払額
現金残高

【現金とは何を指す?】

簿記3級でいう「現金」は、ただの“お札と小銭”だけではありません。
大きく分けると次の2つです。

① 通貨(ふつうにイメージする現金)

手元にあるお金(紙幣・硬貨)。財布・金庫の中身。

② 通貨代用証券(ほぼ現金と同じ働きをするもの)

“受け取ったら、すぐ現金化できる(すぐ使える)”ため、試験上は現金と同じグループに入れて扱うもの。

【通貨代用証券】

  • 他人振り出し小切手(=他人(取引先)が振り出した小切手)
    → 小切手は「銀行に行けば支払ってもらえる(換金できる)」という性質を持ちます。
    取引先が振り出した小切手を受け取った側(=当社)から見ると、すぐ現金化できる紙なので、原則は現金として扱います。
    (※ただし「ただちに当座預金とした」と問題文にあれば当座預金で処理します。ここは当座預金の章の判定ルールどおり。)

  • 郵便為替証書
    → これは「郵便局(ゆうちょ)を通じて、現金を送ったり受け取ったりするための証書」です。
    受け取った側は、その証書を郵便局等で手続きすれば現金として受け取れる(換金できる)ので、簿記では現金(通貨代用証券)として扱います。
    イメージとしては「現金を直接渡す代わりに、現金と引き換えできる証書を渡す」という感じです。

  • 送金小切手
    → これは、銀行が発行する「支払いを確実にするための小切手」です。
    (個人の小切手より“銀行が関与している分、より確実な支払手段”というイメージ。)
    受け取った側は銀行に持っていけば現金化(または預金へ入金)できるため、簿記では現金(通貨代用証券)として扱います。
    イメージは「銀行が保証に近い形で用意した“現金引換券”」です。

ここで重要なのは、簿記の「現金」は “見た目が現金っぽいか”ではなく、現金としての性質(すぐ使える/すぐ換金できる)で決まるという点です。

【現金と間違えやすいもの(「現金」勘定では処理しない)】

初心者が一番混乱するのがここです。“現金っぽいのに現金じゃない”代表を押さえましょう。

  • 収入印紙
    見た目は金券ですが、会社にとっては「支払いに使うためのストック(物品)」の性質が強い。
    → 通常は 貯蔵品勘定(または租税公課など)として扱い、現金では処理しないのが基本です。
  • 郵便切手
    これもお金ではなく「切手というモノ」を買って保管している状態。
    → 一般に 貯蔵品勘定として扱い、現金では処理しない(使ったときに通信費等に振り替えるイメージ)。
  • 自己振出し小切手(自社が振り出した小切手)
    これは“受け取る側”にとっては価値がある紙でも、自社にとっては支払の道具です。
    → 自社が振り出した時点で、簿記では 当座預金が減った(支払った)と考えるので、現金にはしません。
    さらに、その自己振出し小切手が未決済で戻ってきたら、現金が増えたのではなく、当座預金の減少が取り消される(=当座預金が戻る)処理になります。
✅ ここでのコツ(超短い判定)

• 他人の小切手を受け取った → 原則 現金
• 自分の小切手は支払の道具 → 当座預金(現金ではない)

【つまずきやすいポイント:他人振出し小切手と自己振出し小切手】

他人振出し小切手(受取側の目線)
「相手の銀行口座(相手の当座預金)から支払われる約束の紙」
→ 自社の当座預金は動いていないので 当座預金は使わない
→ すぐ換金できるので 現金として受け取る(原則)

自己振出し小切手(自社の目線)
「自社の当座預金から支払うために発行した“支払命令書”」
→ 振り出した瞬間に 当座預金が減る(支払ったのと同じ扱い)
→ 返ってきたら 当座預金の減少を取り消す(当座預金が戻る)

※ちなみに、この自社振出し小切手/他社振出し小切手の話は当座預金のところでも出てきます。
違う面から自社振出し小切手、他社振出し小切手について話していますが、同じことを話しているので復習感覚で読んでください。

【まとめ:現金の定義(試験用に一言)】

現金=通貨(紙幣・硬貨)+通貨代用証券(すぐ換金できるもの)

4
各論:2) 小口現金
  • 細かい支払い専用の現金
  • 実務では「定額資金前渡制度(インプレスト・システム)」がよく使われる
小口現金(資産)
設定額/補給額
報告を受けた額(小口現金で支払った額)
小口現金残高

【小口現金とは?】

  • 細かい支払い(少額の経費)専用の現金です。

    例:切手、コピー用紙、電車代、宅配の着払い、急ぎの消耗品、来客用のお茶…など。

  • 会社のお金(現金)は本来、金庫で厳重に管理されます。

    でも少額の支払いのたびに「経理に申請→承認→出金→記帳」を繰り返すと、現場の動きが止まります。

    そこで “現場のスピード”と“お金の管理”を両立するために、会社は「小さな財布」を別に用意します。これが小口現金です。

【増減の考え方】

  • 小口現金は、会社の「現金の一部」を 小口係が預かっている状態です。

    つまり 会社のお金の置き場所が「会社の金庫(現金)」から「小口係の財布(小口現金)」に移っただけです。

  • したがって、会社が現金を小口現金という財布に移したときは、

    小口現金が増えて、現金が減ると考えます。

  • また、小口係が小口現金から交通費や消耗品費などの経費を支払ったときは、

    小口現金がその分だけ減ると考えます。

【定額資金前渡制度(インプレスト・システム)】

定義

  • 最初に一定額を渡しておく
  • 使ったら領収書がたまる
  • 一定期間ごとに使った分だけ補給して、残高を元の一定額に戻す

流れ(登場人物)

登場人物を置くとイメージしやすくなります。

  • 経理(本体の財布=会社の金庫・預金を管理)
  • 小口係(総務など/小口現金の財布を預かる担当)
  • 社員(買いに行く人/立替する人)

ver 1:上から下へ流れる図解

  1. ① スタート:最初に一定額を渡す(例:10,000円)

    • 経理が小口係に 10,000円 渡す
    • 小口係はその現金を管理して、細かい支払いに使う
    仕訳
    (借)小口現金 10,000 / (貸)現金 10,000
  2. ② 支払う:小口係(または社員)がその場で支払う

    • 例:切手購入、電車代、文房具購入など
    • 支払ったら 領収書(レシート)を受け取って保管する
    仕訳
    仕訳なし
  3. ③ 期間が来たら:領収書をまとめて経理に報告(提出)←ここで記帳

    • 例:領収書合計 3,500円(交通費2,000、消耗品費1,500)
    • 週末・月末などのタイミングで、領収書を経理へ提出する
    仕訳
    (借)旅費交通費 2,000
    (借)消耗品費 1,500 / (貸)小口現金 3,500
  4. ④ 経理が精算:内容をチェックして、使った分だけ補給する

    • 経理が領収書の内容を確認し、費用の種類を整理する
    • 使った分だけ小口係に現金を補給し、残高を元の一定額に戻す
    仕訳
    (借)小口現金 3,500 / (貸)現金 3,500

ver 2:表で4ステップ整理(タイトル・やること・仕訳)

Step タイトル やること 仕訳
1 ① スタート:最初に一定額を渡す(例:10,000円)
  • 経理が小口係に 10,000円 渡す
  • 小口係はその現金を管理して、細かい支払いに使う
(借)小口現金 10,000 / (貸)現金 10,000
2 ② 支払う:小口係(または社員)がその場で支払う
  • 例:切手購入、電車代、文房具購入など
  • 支払ったら 領収書(レシート)を受け取って保管する
仕訳なし
3 ③ 期間が来たら:領収書をまとめて経理に報告(提出)←ここで記帳
  • 例:領収書合計 3,500円(交通費2,000、消耗品費1,500)
  • 週末・月末などのタイミングで、領収書を経理へ提出する
(借)旅費交通費 2,000
(借)消耗品費 1,500 / (貸)小口現金 3,500
4 ④ 経理が精算:内容をチェックして、使った分だけ補給する
  • 経理が領収書の内容を確認し、費用の種類を整理する
  • 使った分だけ小口係に現金を補給し、残高を元の一定額に戻す
(借)小口現金 3,500 / (貸)現金 3,500
(経理に報告したタイミングで経理が仕訳を切る理由)

ここでこう思いましたよね?
「支払った瞬間に帳簿に書くのが普通じゃないの?」
• 小口現金は支払い回数が多く少額なので、1回ごとに経理が仕訳すると手間が大きすぎる
• だから 領収書をまとめて受け取ったタイミングで、経理がまとめて仕訳する運用がよく使われます
• 経理が領収書をチェックしてから記帳するのは、
「何に使ったか(費用科目)が正しいか」、「証拠がそろっているか」を確認するためです

5
各論:3) 普通預金
  • いわゆる一般的な銀行口座
  • 出し入れ自由、振込・引落に使う
普通預金(資産)
預け入れ額/振り込み額
引出し額/引き落とし額
預金残高

【普通預金の基本】

普通預金は、日常の資金決済に使う「銀行に置いてある資産」です。
したがって、普通預金が増えたら借方、減ったら貸方で処理します。

代表パターン:
• 預け入れ:(借)普通預金 / (貸)現金
• 引き出し・引落:(借)相手科目 / (貸)普通預金

6
各論:4) 定期預金
  • 原則、すぐ引き出せない預金(長期の置き場所)
  • 3級では「普通↔定期」の預け替え(振替)が頻出
定期預金(資産)
預け入れ額/振り込み額
引出し額/引き落とし額
預金残高

【定期預金の基本】

定期預金も資産勘定です。3級では「普通預金から定期預金へ移す」「定期預金を解約して普通預金へ戻す」の2パターンが中心です。

代表パターン:
• 預け替え:(借)定期預金 / (貸)普通預金
• 解約戻し:(借)普通預金 / (貸)定期預金

7
各論:5) 当座預金
  • 会社が小切手・手形の決済に使う口座(イメージ:決済専用)
  • 「小切手を振り出す=当座預金から支払う」
当座預金(資産)
預け入れ額/振り込み額
引出し額/引き落とし額
預金残高

【そもそも当座預金って何?】

• 会社が「小切手・手形」で支払いや受け取り(決済)をするための銀行口座です。
普通預金が「振込・引落の口座」だとしたら、当座預金は “小切手を使用した決済専用の口座”というイメージです。
• 小切手は、会社の世界において
「現金を持ち歩かずに高額を安全に支払う」「支払いの証拠を残す」ために使われます。

【当座預金の流れ・仕組み】

会社(A) 振出 取引先(B) 提示 銀行 引落し

当座預金は「小切手」という紙を使って支払います。
• 会社が取引先に支払う
1. 小切手を振り出して渡す
2. 取引先が銀行に持っていく
3. 銀行が当座預金から引き落として、取引先に支払う(または取引先口座へ入金)

実際に引き落とされるのは相手が銀行に小切手を持って行った時ですが、実務上「小切手を振り出した時点で、当座預金から支払ったのと同じ」という考えより、

「小切手を支払ったタイミングで仕訳を切ります。」(試験もこの前提で出ます)。細かいことは考えず、小切手を振り出したら当座預金の減少!って覚えてokです。

又、「小切手で支払った」と「当座預金で支払った」は同じ意味の言葉です。試験においてもどちらかの言葉を使われるので、ここで覚えて意おきましょう。

【「現金で払う」と「当座預金で払う」は何が違うの?】

• 現金で払う:その場で手元の現金が出ていく → 仕訳は(借)商品(貸)現金
• 小切手で払う(=当座預金で払う):手元の現金は出ていかない。代わりに当座預金が減る → 仕訳は(借)商品(貸)当座預金

【小切手を使用した取引の注意点】

1. 他人(取引先)が振り出した小切手を受け取った → (借)商品(借)現金

他人振出しの小切手は、当社から見れば すぐ現金化できる「通貨代用証券」です。
したがって、受け取った時点で「現金にほぼ等しいものを手に入れた」と考え、現金勘定で処理します。
ここで大切なのは、動くのは“相手(他社)の当座預金”であって、“当社の当座預金”ではないという点です。
当社の当座預金はまだ増えていません(銀行に預け入れていない)ので、当座預金勘定は使いません。

具体例:商品を500円で売って、相手先が振出した小切手を受け取った。
(借)現金 500 / (貸)売掛金 500

2. ただし「ただちに当座預金とした」→(借)商品(借)当座預金

「ただちに当座預金とした」とは、
小切手を受け取った直後に、すぐ銀行へ持って行って当座預金に預け入れた(=受取と預入が同時)とみなす言葉です。
頭の中では実は2段階が起きています。
1. 受取(現金として受け取った)
2. 預入(その現金を当座預金へ預けた)

これをまとめて書くので、(借)当座預金になります。

具体例:商品を500円で売って、相手先が振出した小切手を受け取って直ちに当座預金とした。
(借)当座預金 500 / (貸)売上 500

3. 自己振出し小切手が相手から戻ってきた →(借)商品(借)当座預金

自社振出しの小切手は、そもそも 「当社の当座預金から支払うための道具」です。
それが相手から未決済(相手が銀行に当小切手を持っていかなかった)のまま戻ってきた場合、外部からお金を受け取ったのではなく、
「以前、支払いとして記録した当座預金の減少が“なかったことになる(取消)”」という性質です。
だから、当座預金を元に戻す(取り消す)
ために (借)当座預金を使います。

当座預金 (戻り処理)
○減少の取消
×以前の支払

具体例:以前、商品300円を小切手で支払って買ってきたが、その小切手が後日戻ってきた。
• 支払時:(借)仕入 300 / (貸)当座預金 300
• 戻り:(借)当座預金 300 / (貸)買掛金 300

8
各論:7) 当座借越(当座預金がマイナスになったら“負債”に見せる)
  • 当座預金が不足しているのに支払った結果、口座残高がマイナスになる状態
  • 簿記上は「銀行が立て替えてくれている」=借金(負債)
当座借越 (負債)
借:減る(返済)
貸:増える(借越発生)

【当座借越とは】

当座預金はその残高を超えて小切手を振り出すことはできないが,あらかじめ取引先の金融機関と当座借越契約を結んでおけば,当座預金残高を超えても借越限度額までの小切手を振り出すことができる。
この場合に当座預金残高を超えて引き出した額を当座借越といい,実質的には銀行からの借入金を意味する。

(初学者向けに噛み砕いて説明)
当座預金は資産ですが、当座預金が不足したまま小切手を振り出すと、口座残高がマイナスになります。
この マイナス部分は、銀行が一時的に立て替えた=借金(負債) なので、当座借越(負債)として扱います。

【なぜ当座借越勘定を使うの?】

当座預金は 資産の勘定科目なので、B/Sでは 資産の位置(借方側)に載るべきものです。
ところが当座預金がマイナス(貸方残高)になると、資産が負債のような形になってしまい、B/Sの見せ方として不自然です。
資産の勘定科目は、必ずB/Sの借方に載せなければいけないのです。

そこで、マイナス分は実質的に借金なので、
決算でB/Sを作るときは 当座預金のマイナス部分を「当座借越(負債)」に振り替えて表示します。

【処理方法は2つ】

方法1:期中でマイナスになった時点で振替(=二勘定制)
  • 当座預金がマイナスになった瞬間に、マイナス部分を 当座借越として処理する方法
  • 期中の帳簿上でも、当座預金は基本的にマイナスにならない(不足分は当座借越へ)
方法2:期中は当座預金で記帳し続け、期末にマイナスなら振替(=一勘定制)※実務で多い
  • 期中はいったん当座預金でそのまま記帳(当座預金が貸方残高になることがある)
  • 期末にB/Sを作るとき、マイナスなら 当座借越へ振替

(実務で2が多い理由)
:期中にプラス・マイナスが何度も入れ替わるたびに振替すると手間だから。決算で表示さえ正しければよい、という考え方です。試験でもこちらが多いです。

(例題で確認しよう)

ここでは、話がブレないように 代表例を固定します。

  • 支払い:買掛金の小切手支払
  • 入金:売掛金の振込入金(=当座に入金される)
  • 前提:当座借越契約あり

さらに、分かりやすいように数値も固定します。

現在 20,000 ①支払20,000 (不足発生) ②入金32,000 (回復) ③支払25,000 ④決算
A 方法1:期中で振替(=二勘定制)

① 期中で当座預金がマイナスになった時(不足が出た瞬間)

当座預金20,000しかないのに買掛金38,000を小切手で支払う。不足分18,000は銀行から借金したと考える。
「当座預金勘定(資産)」がマイナスになった分は、「当座借越勘定(負債)」を使用する。

(借)買掛金 38,000 / (貸)当座預金 20,000
          / (貸)当座借越 18,000
38,000
20,000
18,000

② 期中で当座に入金され、プラスに戻った時

売掛金32,000が当座に入金
※当座借越(負債)18,000を先に返済し、残り14,000が当座預金(資産)になる

(借)当座借越 18,000
(借)当座預金 14,000 / (貸)売掛金 32,000
18,000
14,000
32,000

③ 期中で当座預金がまたマイナスになった時(再び不足が出た瞬間)

いま当座預金が14,000ある状態で、買掛金25,000を小切手で支払う。不足分11,000は銀行から借金したと考える。(=不足 11,000 が当座借越)

(借)買掛金 25,000 / (貸)当座預金 14,000
          / (貸)当座借越 11,000
25,000
14,000
11,000

④ 決算時(表示のための振替は基本不要)

二勘定制は期中ですでに不足分を当座借越にしているので、期末に特別な振替は基本的に不要です。
決算は帳尻合わせ。期中からしっかりやってる時は決算整理は必要ないんです。
(期末のB/Sは「当座預金(資産)」と「当座借越(負債)」がそのまま載る)

B 方法2:期中は当座預金で記帳、期末だけ振替(=一勘定制)※実務多い

① 期中で当座預金がマイナスになった時(期中はそのまま当座預金で記帳)

当座預金20,000しかないのに買掛金38,000を小切手で支払う。不足分18,000は銀行から借金したと考える。
が、当座預金勘定が貸方残高(マイナス)になろうが、そのままにしておく。(期中は「当座借越勘定」を使用しない)

(借)買掛金 38,000 / (貸)当座預金 38,000
※この時点で当座預金は 貸方残高18,000(マイナス) になっている状態
38,000
38,000

② 期中で当座に入金され、プラスに戻った時(期中はそのまま当座預金で記帳)

売掛金32,000が当座に入金
(借)当座預金 15,000 / (貸)売掛金 15,000
※マイナス 8,000 を相殺して、借方残高 7,000(プラス)に戻る

15,000
15,000

③ 決算時(期末にマイナスなら振替/プラスなら不要)

この例では期末時点の残高で表示(振替が必要か判断)
この例では期末時点で当座預金が プラス(借方残高7,000)なので、振替は不要。

(参考:もし期末に当座預金がマイナスなら)
(借)当座預金 ××× / (貸)当座借越 ×××

9
例題の前に”まずはt字勘定から確認”

Step 2:まずは原理(“資産”の増減ルールを一本化)

現金・小口現金・預金は基本的に 資産 です。

  • 資産は、増えたら借方
  • 資産は、減ったら貸方

この一本で、現金・預金の仕訳がほぼ切れます。

10
各ステップ:例題で確認
1Step 1:会計処理① 現金の基本パターン
【例題1】現金で消耗品を購入(1,200円)
(借)消耗品費 1,200 / (貸)現金 1,200
1,200
1,200

B/S・P/Lへの影響
• P/L:費用(消耗品費)↑
• B/S:資産(現金)↓

【例題2】売上を現金で受け取った(10,000円)
(借)現金 10,000 / (貸)売上 10,000
10,000
10,000
2Step 2:会計処理② 普通預金(預入・引出・振込)
【例題3】現金50,000円を普通預金に預け入れた
(借)普通預金 50,000 / (貸)現金 50,000
50,000
50,000

「お金の置き場所が、手元→銀行に移動しただけ」。資産内の振替。

【例題4】普通預金から家賃30,000円が引き落とされた
(借)支払家賃 30,000 / (貸)普通預金 30,000
30,000
30,000
3Step 3:会計処理③ 定期預金(預け替えの型)
【例題5】普通預金100,000円を定期預金に預け入れた
(借)定期預金 100,000 / (貸)普通預金 100,000
100,000
100,000
【例題6】定期預金を解約し、普通預金に100,000円入金された
(借)普通預金 100,000 / (貸)定期預金 100,000
100,000
100,000
4Step 4:会計処理④ 当座預金(小切手の基本)
【例題7】買掛金を小切手で支払った(=当座預金から支払った)
買掛金35,000円を支払うため、小切手を振り出して交付した。
(借)買掛金 35,000 / (貸)当座預金 35,000
35,000
35,000

【例題8】小切手を受け取った(※条件で科目が変わる)

8-1 他人振出し小切手を受け取った(原則:現金)
売掛金20,000円を回収し、取引先振出しの小切手を受け取った。
(借)現金 20,000 / (貸)売掛金 20,000
20,000
20,000
8-2 ただちに当座預金とした(受取後すぐ預入)
売掛金20,000円を回収し、取引先振出し小切手を受け取り、ただちに当座預金とした。
(借)当座預金 20,000 / (貸)売掛金 20,000
20,000
20,000
8-3 自己振出し小切手が戻ってきた(支払取消)
以前、買掛金20,000円の支払いのために当社が振り出した小切手が、未決済のまま取引先から戻ってきた。
(借)当座預金 20,000 / (貸)買掛金 20,000
20,000
20,000
5Step 5:会計処理⑤ 小口現金(定額資金前渡制度)
5-1 最初に小口現金を渡す(小口係に10,000円)

(借)小口現金 10,000 / (貸)現金 10,000

10,000
10,000
5-2 小口現金から次のものを支払った。(交通費2,000円、消耗品費1,500円)

定額資金前渡制度では、この時点では仕訳しない。

5-3 月末になったので、5-2の支払いを会計係に報告した。

(借)旅費交通費 2,000
(借)消耗品費 1,500
            (貸)小口現金 3,500

2,000
1,500
3,500
5-4 会計係は小口現金係に小切手3,500円を振り出して小口現金を補給した。

当座預金から、小口現金というお財布にお金を移した。
(借)小口現金 3,500 (貸)当座預金 3,500

3,500
3,500
6Step 6:会計処理⑥ 当座借越(演習:二勘定制+一勘定制を併記)

(用語解説の「当座借越」で理屈と2方式の全体像は理解済み。
ここでは 試験形式の例題で「手を動かして型にする」ステップです。

【例題(Step6用)】
当社は銀行と当座借越契約を結んでいる。次の取引を行った。
① 当座預金残高は 12,000円。買掛金 20,000円を小切手で支払った。
② その後、売掛金 15,000円が当座預金に振り込まれた。
A. 二勘定制(期中で不足が出た瞬間に当座借越へ)

① 支払(不足が出る)

当座預金 12,000 しかないのに 20,000 支払 → 不足 8,000 が当座借越

(借)買掛金 20,000 / (貸)当座預金 12,000 / (貸)当座借越 8,000

20,000
12,000
8,000

② 入金(借越返済→残りが当座預金)

売掛金 15,000 入金
まず借越 8,000 を返し、残り 7,000 が当座預金へ

(借)当座借越 8,000
(借)当座預金 7,000 / (貸)売掛金 15,000

8,000
7,000
15,000
B. 一勘定制(期中は当座預金で記帳し、期末だけ振替)

一勘定制は「期中は当座預金でそのまま動かす」。
期末にB/Sを作るとき、当座預金がマイナスなら当座借越へ振替します。

① 支払(期中は当座預金でそのまま記帳)

(借)買掛金 20,000 / (貸)当座預金 20,000
※当座預金は貸方残高 8,000(マイナス)になる状態

20,000
20,000

② 入金(期中は当座預金でそのまま記帳)

(借)当座預金 15,000 / (貸)売掛金 15,000
※マイナス 8,000 を相殺して、借方残高 7,000(プラス)に戻る

15,000
15,000

③ 決算時(期末にマイナスなら振替/プラスなら不要)

この例では期末時点の残高で表示(振替が必要か判断)
この例では期末時点で当座預金が プラス(借方残高7,000)なので、振替は不要。

(参考:もし期末に当座預金がマイナスなら)
(借)当座預金 ××× / (貸)当座借越 ×××

F
Final Step:まとめ問題(総合)
【問1】
売掛金10,000円を回収し、取引先振出し小切手を受け取った。
解答:(借)現金 10,000 / (貸)売掛金 10,000
10,000
10,000
【問2】
売掛金10,000円を回収し、取引先振出し小切手を受け取り、ただちに当座預金とした。
解答:(借)当座預金 10,000 / (貸)売掛金 10,000
10,000
10,000
【問3】
当座預金残高8,000円、当座借越契約あり。買掛金20,000円を小切手で支払った(二勘定制)。
解答:(借)買掛金 20,000 / (貸)当座預金 8,000 / (貸)当座借越 12,000
20,000
8,000
12,000