簿記3級 経過勘定

前払費用はなぜ資産?月割り計算と決算整理の仕訳を解説

この記事の目次

まず、ここだけ押さえよう

前払費用は、先に支払った代金のうち、翌期にサービスを受ける分です。当期の費用から外し、「これからサービスを受ける権利」として資産にします。

保険料などをまとめて支払い、全額を費用に記録していても、翌期の分まで当期の費用にはできません。決算日で期間を区切り、翌期に属する月数を数えます。

繰り延べる金額 = 1年分の料金 × 翌期の対象月数 ÷ 12

保険料の翌期分を繰り延べる

××
××

借方の前払保険料は、翌期に保障を受ける権利の増加です。貸方の保険料は、先に記録した費用から翌期分を引く処理です。返金ではないので、この仕訳で現金は動きません。

決算整理後に残るもの
残る金額決算書での扱い
当期にサービスを受けた分保険料などの費用としてP/Lに残る。
翌期にサービスを受ける分前払保険料などの資産としてB/Sに残る。

前払金が商品の受渡し前の手付金などを表すのに対し、前払費用は継続するサービスの期間調整で使います。翌期首に再振替を行う場合は、決算整理と逆の仕訳で翌期の費用へ戻します。

詳しい解説

費用の繰延

4
本編 Step 1:会計処理① 繰延(くりのべ)〜来年へパス〜
▼
そもそも、なぜ「繰延」をするの?

会社の成績表(損益計算書)を作るための絶対ルール、それは「今年の成績には、今年の分しか入れない」ことです。

しかし、保険料や家賃などは「1年分をまとめて払う(もらう)」ことがよくありますよね。もし、そのお金の中に「来年の分」が混ざっていたらどうなるでしょう?今年の費用や収益が大きくなりすぎて、今年の正しい利益がわからなくなってしまいます。

そこで決算の日に、「ごめん、これ来年の分だった!」と来年へパス(繰延)して、今年の費用・収益から追い出す作業が必要になるのです。

Step 2 では、この「来年へ追い出すべき金額」を見つけて、正しく処理する練習をします。

1 2-1. 費用の繰延(前払費用)
状況

1年分の保険料や家賃をまとめて先払いしたが、決算の時点で「まだサービスを受けていない来年の月数分」が含まれている状態。

仕訳
×××
×××

借方: お金を先払いしたことで「来年、追加でお金を払わずにサービスを受ける権利」を手に入れたと考えます。この権利を「前払費用(資産)」という勘定科目で計上します。

貸方: 先払いした金額のうち「来年分の費用」は今年に含めてはいけないため、今年の「費用」からマイナスして来年に持ち越します。(※返金されるわけではありません)

イメージ

初心者向けイメージ:なぜ「資産」なの?
スマホのギガを前借りしたり、電車の定期券を先に買っておくのと同じです。「後で使えるお得なチケット(権利)」を持っているので、会社の「資産」として扱います。

1 例題 1
問題

会計期間は1月1日〜12月31日である。当年9月1日に、向こう1年分の保険料1,200円を現金で支払い、全額を「保険料」として処理していた。決算につき、次期分を繰り延べる。

解答
800
800
解説
step1タイムテーブルを書く
9/1 支払 12/31 決算 8/31 終了 4か月(当期) 8か月(翌期) 400円 800円 当期に残す 4か月分 (1,200×4/12) 翌期へ回す 8か月分 (1,200×8/12)
図の読み方

この保険は 9/1 から翌年 8/31 までの 12か月分です。決算日は 12/31 なので、今年の分は「9月〜12月の 4か月分」だけ。残りの「1月〜8月の 8か月分」が、追い出すべき来年の分です。

金額の計算
1年分

1,200円

当期の分

1,200円 × (4か月 ÷ 12か月) = 400円

翌期の分

1,200円 × (8か月 ÷ 12か月) = 800円

繰延では、この「来年の分(800円)」を今年の費用から外します。したがって、仕訳で動かす金額は 800円 です。

step2仕訳を組み立てる
9/1の仕訳
1,200
1,200

上の「9/1の仕訳」のように、1年分 1,200円 をまとめて支払った時点では、まず全額を費用として処理しているはずです。この時点では、保険料 1,200円 全額がそのまま当期の費用に入っています。

12/31の仕訳
800
800

しかし、そのうち800円分は翌期分です。そこで上の「12/31の仕訳」が必要になります。

借方(左側): 来年タダで保険のサービスを受ける「権利」を手に入れたので、新しく資産として計上します。(資産の増加)

貸方(右側): 今年計上しすぎていた「来年分の費用(800円)」をマイナスして取り消します。(費用の減少=右側に置く)

【結果どうなった?】

1,200円 − 800円 = 400円

保険料(今年の費用)は、1,200円から800円を取り消したので、正しく「400円(今年の4ヶ月分)」だけが残りました。一方、前払保険料800円は、来年使えるチケット(資産)として貸借対照表に載ります。

step3t字勘定で確認する
9/1 時点
保険料
9/1 1,200
残高 1,200
9/1時点では、1,200円 全額が費用です。
前払保険料
残高なし
まだ資産としては計上されていません。
→
12/31 決算整理後
保険料
9/1 1,200
12/31 800
保険料の部屋から「800」が出ていき、残高は「400」に。
前払保険料
12/31 800
出ていった「800」は、新しく作られた「前払保険料」の部屋に引っ越しました。

T字勘定で見ると、保険料は 1,200 から 800 を差し引いて 400 だけ残り、前払保険料 800 が新しく資産として立っていることが確認できます。

最後に、ここを確認

  • 先に「翌期に受けるサービスの月数」を数えます。

    前払いした総額をそのまま仕訳するのではなく、翌期分だけを計算します。支払った保険料に翌期分が含まれていたら、その金額を当期の保険料から取り除きます。

  • 前払費用は、あとでサービスを受ける権利です。

    そのため決算では資産にして持ち越します。翌期首に再振替する場合は、決算整理の借方・貸方を逆にして翌期の費用へ戻します。どの期間の費用にしたいのかを、仕訳と一緒に確認しましょう。

よくある質問

前払費用は、支払済みなのになぜ資産ですか?

翌期にサービスを受ける権利が残っているからです。当期の費用から翌期分を外して、その権利を資産として記録します。

前払費用では、当期分と翌期分のどちらを求めますか?

全額を費用に記録している場合、繰り延べるのは翌期のサービスに対応する分です。決算日で期間を区切り、翌期に属する月数を確認します。

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著者
effboki編集部
監修
effboki代表清水 和
更新日

この記事は、簿記3級・2級の学習者がつまずきやすいポイントを、教材設計と質問対応の観点から整理しています。