簿記3級 商品売買・三分法

引取運賃の勘定科目・仕訳|発送費との違いと仕入に含める理由

この記事の目次

まず、ここだけ押さえよう

引取運賃は、商品代金に足して「仕入」に記録します。保管費・発送費は、原則として仕入に含めず、別の費用として記録します。

引取運賃(引取り費用)仕入れた商品を、自社のお店や倉庫へ運ぶための送料。「ひきとりうんちん」と読みます。
保管費仕入れた商品を、売れるまで倉庫などで保管するための費用。
発送費販売した商品を、お客さんへ届けるための送料。

ここからは、これらの費用を自社が負担する場合を考えます。簿記3級で学ぶ三分法では、買った商品の代金を「仕入」という勘定科目に記録します。

  • 引取運賃はその商品代金に足して、同じ「仕入」勘定に記録します。
  • 一方、保管料は「保管費」勘定、販売時の送料は「発送費」勘定などに記録します。

どれも商品にかかる支出なのに、なぜ引取運賃は商品代金とまとめ、保管費・発送費は分けるのでしょうか。商品を手に入れてから販売するまでの流れに沿って、その理由を見ていきましょう。

なぜ、引取運賃を仕入に含めるの?

商品を販売するには、まず自社の手元に用意する必要があります。そのために直接かかる送料も、商品を手に入れるための支出です。そこで、商品代金と引取運賃を合わせて、その商品の原価と考えます。

簿記3級で学ぶ三分法では、この金額を「仕入」に記録します。つまり、「引取運賃」は送料の呼び名で、仕訳に使う勘定科目は「仕入」です。商品代金と一緒に払っても、送料だけを別に払っても、この考え方は同じです。

なぜ、保管費を仕入に含めないの?

通常の保管は、すでに手に入れた商品を維持するためのものです。倉庫に置いておくことで、商品を取得するための原価が増えるわけではありません。そのため、商品代金に足さず、原則として「保管費」などの費用に分けて記録します。

なぜ、発送費を仕入に含めないの?

販売した商品をお客さんへ届ける発送費は、仕入に含めません。商品を手に入れるための支出はすでに済んでいて、ここで払うのは販売して届けるための費用だからです。

同じ送料でも、仕入れるために運ぶなら「仕入」、販売して届けるために運ぶなら「発送費」。送料という名前だけでなく、何のために運ぶのかを見ると、使い分ける理由がわかります。

引取運賃は「手に入れるため」、保管費は「手元で保管するため」、発送費は「販売して届けるため」。この目的の違いを、次の表で勘定科目・仕訳と結びつけて確認しましょう。

場面・勘定科目・仕訳を見比べる仕訳は、それぞれの送料・保管料1,000円だけを現金で支払った場合(単位:円)です。商品本体の売買仕訳は省略しています。
場面・かかった費用使う勘定科目仕訳なぜ、この科目?
仕入れた商品を自社へ運ぶ
自社負担の引取運賃
仕入
1,000
1,000
商品を手元に用意し、販売できる状態にするために直接必要な支出です。商品を取得するための原価の一部として、仕入に含めます。
仕入れた後、売れるまで保管する
自社負担の保管料
保管費など
1,000
1,000
すでに取得した商品を維持するための支出です。通常の保管では商品の取得原価を増やさず、保管のための費用として分けます。
売れた商品をお客さんへ送る
自社負担の送料
発送費など
1,000
1,000
商品の取得はすでに済んでいます。お客さんへ届ける配送サービスの代金なので、商品の原価ではなく、販売のための費用にします。
相手負担の送料を、いったん自社が払う
送料の立替払い
立替金など
1,000
1,000
最終的に負担するのは相手です。自社の費用ではなく、あとで返してもらう権利(資産)として記録します。

「仕入」は三分法の場合の科目です。商品代金と引取運賃をまとめて支払った場合は、合計額を「仕入」に記録します。立替分を売掛金に含める指示があれば、最後の仕訳の借方は「売掛金」です。保管費・発送費も、問題文で指定された科目を使います。

「何のための支出か」で科目を考え、「誰の負担か」で確かめる。この2つがわかれば、送料を一つずつ丸暗記せず、理由から仕訳を選べます。

詳しい解説

仕入に含めるもの・含めないもの

4
Step 4:諸掛かり・保管費(送料や運賃の整理)
▼

商品を運ぶための送料や、倉庫に置いておくための保管料。こうした商品売買にともなって発生する追加コストのことを、簿記では「諸掛かり(しょがかり)」と呼びます。

この諸掛かりの仕訳ルールは、ある「1つのストーリー」をイメージするだけで驚くほど簡単に理解できます。それは、「その商品は今、どの段階にいるのか?」という商品の旅のストーリーです。

商品の旅(3つのフェーズ)と仕訳のルール

商品は、「①お店にやってくる」→「②お店で待機する」→「③お客さんの元へ旅立つ」という3つのフェーズを通ります。コストが発生したのがどのフェーズかによって、簿記での扱い方がガラッと変わります。

フェーズ①:仕入れる時(お店にやってくる時)
ルール 商品の価値そのものと考えて、「仕入」に含める!
××
××

青森の農家から100円のりんごを買いました。でも、お店に運ぶためのトラック代(送料)が50円かかりました。お店に届いたとき、このりんごはお店にとっていくらの価値(原価)でしょうか?「100円のりんご+50円の送料」で、150円の価値があると考えますよね。

商品を自分のお店に並べて「売れる状態」にするために絶対に必要なコストは、すべて「商品の価値の一部」と考えて「仕入(費用)」に含めてしまいます。「引取運賃」といった別の勘定科目は使いません。

フェーズ②:保管する時(お店で待機する時)
ルール 商品の価値は上がらないので、別の費用(「保管費」など)にする!
××
××

仕入れたりんごを、売れるまでお店の冷蔵庫(倉庫)で保管します。このときにかかる倉庫代や電気代はどうでしょうか?倉庫に1ヶ月置いたからといって、150円のりんごが200円の価値にパワーアップするわけではありませんよね。

これは「すでに手元にある商品を、ただ維持するためだけのコスト」です。だから仕入には含めず、「保管費」という別の費用として記録します。

フェーズ③:売る時(お客さんの元へ旅立つ時)
ルール 商品を売るためのサービス代なので、別の費用(「発送費」など)にする!
××
××

お店にあるりんごを、遠くのお客さんの家まで発送しました。このときにかかった送料はどうでしょう?このりんごはすでに自分のお店のものであり(仕入は完了済み)、お客さんに届けるための送料は、お店側の「サービスや販売努力」としてかかったコストです。

そのため、商品の原価(仕入)とは切り離して、「発送費」という別の費用として記録します。

ここまでのストーリー(理由)が分かれば、あとは型に当てはめるだけです。基本の型と、実際の例題を見てみましょう。

基本の仕訳の型
仕入の送料を払った時
××
××
商品の保管料を払った時
××
××
販売の送料を払った時
××
××
仕入(費用)
発生額
仕入残高
保管費(費用)
発生額
保管費残高
発送費(費用)
発生額
発送費残高
【例題7】仕入時の送料を払った場合
例題

仕入時の引取運賃1,200円を現金で支払った。

解答
1,200
1,200
解説

商品を仕入れるために直接かかった運賃は、商品の原価(価値の一部)になったと考えて、そのまま借方(左)の「仕入」を増やします。

仕入(費用)
1,200
【例題8】保管料を払った場合
例題

商品の倉庫代5,000円を現金で支払った。

解答
5,000
5,000
解説

商品の価値を高めるものではなく、維持するためのコストなので「仕入」には含めません。「保管費(費用)」として別に借方(左)に記録します。

保管費(費用)
5,000
【例題9】販売時の送料を払った場合
例題

販売時の送料500円を現金で支払った。

解答
500
500
解説

すでに仕入が終わっている商品を売るためにかかったコストです。売上のマイナスにはせず、「発送費(費用)」という専用の勘定科目を使って借方(左)に記録します。

発送費(費用)
500

引取運賃のよくある質問

引取運賃とは何ですか?

引取運賃とは、仕入れた商品を自社の店舗や倉庫まで運ぶために支払う送料・運賃です。商品の取得に直接必要な付随費用なので、商品代金とともに取得原価を構成します。

引取運賃の勘定科目は何ですか?

簿記3級では、引取運賃を独立した勘定科目にせず、商品代金と合算して「仕入」で処理します。たとえば商品100,000円と引取運賃2,000円を現金で支払った仕訳は、(借)仕入 102,000/(貸)現金 102,000です。

引取運賃と発送費の違いは何ですか?

引取運賃は商品を仕入れるときの送料で「仕入」に含めます。一方、発送費は商品を販売したあとに得意先へ送るための送料です。当社負担なら「発送費」として、仕入とは分けて処理します。

仕入時の送料はすべて仕入に含めますか?

商品を自社へ引き取るために直接かかった送料であれば、原則として仕入に含めます。ただし、当社と先方のどちらが負担する契約なのか、問題文で処理方法が指定されていないかを必ず確認してください。

よくある質問

引取運賃を、なぜ商品代金と一緒に仕入へ含めますか?

商品を自社の手元に用意するために直接かかる支出だからです。自社が負担する引取運賃は、商品を手に入れるための原価として商品代金に加えます。

保管費や発送費も、仕入に含めますか?

原則として仕入には含めず、別の費用にします。商品を手に入れるための引取運賃と、その後の保管や販売に伴う支出を分けて考えます。

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著者
effboki編集部
監修
effboki代表清水 和
更新日

この記事は、簿記3級・2級の学習者がつまずきやすいポイントを、教材設計と質問対応の観点から整理しています。