1 会社設立ストーリーで理解する
前回のステップでは、会社のお金やモノの残高(資産)と、将来支払わなければならない義務(負債)について学びました。
ここからは、B/Sの右下の箱、「純資産(じゅんしさん)」について見ていきます。 実は、簿記を勉強する人が一番最初に「?」とつまずくのが、この純資産です。よく「誰にも返さなくていい、本当の自分の財産」と説明されますが、こう思いませんでしたか?
私(あなた)のこと? 社長のこと? それとも会社のこと? この謎を解くためには、「会社ってそもそも何?」という大前提を知る必要があります。 ここがわかると、簿記が一気に面白くなりますよ!
1 大前提:「会社」とは、商売をする「ロボット」である
まず、簿記の世界の絶対ルールを一つ覚えましょう。 それは、「人間(あなた)」と「会社」は、まったくの別人であるということです。
イメージとしては、あなたが商売をするために「○○株式会社」という名前のお手伝いロボットを作ったと考えてください。 この「○○株式会社」は、自分専用の「お財布」を持っています。
簿記の世界では、あなた(人間)の個人的なお財布のことは一切気にしません。 あくまで「ロボットのお財布にいくら入って、いくら出ていったか」だけを記録します。 あなたはそのロボットに指示を出す操縦士(社長)にすぎません。
2 ロボットのお財布にお金を入れる「2つの方法」
さて、このロボット(○○株式会社)にカフェの商売をさせたいのですが、最初はロボットのお財布が空っぽです。 スタート資金として1,000万円が必要です。ロボットのお財布にお金を入れるには、次の2つの方法しかありません。
ロボットが自ら銀行へ行き、1,000万円を借りました。銀行は「ロボットにお金を貸しただけ」です。 ロボットは後で、必ず銀行にこのお金を返さなければなりません。
これが「負債(借金)」です。
もう一つの方法は、「このロボットの『ご主人様』になりませんか?」と人間たちに呼びかける方法です。 あなたや、知り合いのAさん、Bさんが「この○○株式会社は将来稼いでくれそうだから、自分たちのお金をあげよう!」と決めたとします。
あなた達は、自分のポケットマネーをロボットのお財布に入れました。 するとロボットは、お金をくれたお礼として、チャリン!と「ご主人様チケット」を発行して渡してくれます。
実は、この「ご主人様チケット」のことこそが、「株式(かぶしき)」です。 そして、チケットをもらった人(あなた、Aさん、Bさん)のことを「株主(かぶぬし)」と呼びます。
3 だから純資産は「ご主人様(株主)の財産」!
銀行の借金とは違い、ご主人様(株主)がロボットに入れてくれたお金は、ロボットにとって「絶対に返さなくていいお金」になります。 その代わり、ご主人様チケットを持っている人には、最強の権利が与えられます。
ロボットが商売で稼いだ儲けは、すべてご主人様のものです。 「○○株式会社、稼いだお金をお小遣い(配当金)として分けてね!」ともらうことができます。
ロボットが大活躍すれば、「そのロボットのご主人様になりたい!」という人が現れます。 そうしたら、自分のご主人様チケットを別の人に高値で売って、大儲けすることができます。
さあ、これで「純資産」の正体がハッキリしましたね。
今、ロボットのお財布にあるすべてのお金やモノ。
ロボットが、銀行などに「必ず返さなければならない」お金。
資産から負債を引いた残り。= ご主人様チケットを持っている人たち(株主)の本当の取り分!
そう、「誰にも返さなくていい、本当の自分の財産」の「自分」とは、「ご主人様(株主)」のことだったのです! もしあなた1人でお金を出して「○○株式会社」を作ったなら、純資産は「あなた個人の取り分」になります。
4 純資産の「2つの箱」:最初にもらったお金と、自分で稼いだお金
この純資産(ご主人様の取り分)には、大きく分けて「2つの箱(勘定科目)」が用意されています。
ストーリーの方法②で、ご主人様たちがロボットのお財布に最初に入れてくれた1,000万円のことです。 ビジネスを始めるための土台となるお金で、これを「資本金(しほんきん)」と呼びます。
ロボットがカフェの商売を始め、1年間頑張った結果、300万円の黒字(利益)が出たとします。 この「ロボットが自分で稼ぎ出し、ご主人様のために貯め込んだお金」が、この箱にコツコツと積み上がっていきます。 これを「利益剰余金(りえきじょうよきん)」と呼びます。
つまり純資産とは、ご主人様が最初に出してくれた「①元手(資本金)」と、ロボットが後から頑張って稼いだ「②儲けの蓄積(利益剰余金)」の2層構造になっているのです。
「純資産」とはただの小難しい計算結果ではなく、「ご主人様たちがロボットに託した期待(資本金)」と、「ロボットがこれまで稼いできた頑張りの結晶(利益剰余金)」が詰まった、とても大切な場所なのです。