簿記3級 貸倒引当金

貸倒引当金はなぜ貸方?負債ではない理由をB/Sで解説

この記事の目次

まず、ここだけ押さえよう

貸倒引当金が貸方に増えるのは、借方にある売掛金などの資産を、間接的に差し引くためです。支払義務を表す負債ではありません。

将来回収できないかもしれなくても、まだ売掛金の請求権は残っています。見込みだけで売掛金そのものを消すと、元の請求額がわからなくなります。そこで、回収できない見込みを別のマイナス項目として持ちます。

貸倒引当金を売掛金とセットで見る
勘定残高が増える側表すもの
売掛金借方(左)代金を受け取る権利の金額。
貸倒引当金貸方(右)売掛金などから差し引く、回収不能の見込み額。

資産を直接減らすなら貸方に書くのと同じ方向で、貸倒引当金を増やします。このように、資産から控除するための勘定を評価勘定と呼びます。

売掛金 − 貸倒引当金 = 回収できる見込みの額

B/Sでも、貸倒引当金は資産から差し引いて表示します。帳簿で増える側が貸方だからといって、B/Sの負債になるわけではありません。誰かに支払う義務ではなく、資産の金額を調整する役割だからです。

詳しい解説

貸倒引当金が貸方になる理由

補 【コラム】なぜ貸倒引当金は「貸方(右側)」なの?負債なの?

仕訳を見るとき、「なぜ貸倒引当金は右側(貸方)に増えるのか?」と疑問に思うかもしれません。

売掛金(資産)の価値を減らしたいなら、資産のマイナスとして右側に書くのが簿記のルールですよね。
「だったら、直接『(貸)売掛金 10,000』として、売掛金そのものを減らせばよいのでは?」と思うかもしれません。

しかし、それをやってはいけません。なぜなら、法律上はまだ「満額の500,000円を請求する権利」がしっかり残っているからです。勝手に帳簿上の売掛金そのものを削ってしまうと、「本当は相手にいくら請求できるのか」が分からなくなってしまいます。

そこで、「売掛金本体はそのまま残しつつ、実質的な価値を下げるための専用のマイナス箱」を作ります。これが貸倒引当金です。
資産(左側)を打ち消す役割なので、反対の右側(貸方)をホームポジションとします。

では、貸倒引当金は負債なの?

負債ではありません。あとでお金を払う義務があるわけではないですよね。

この勘定だけは少し特殊で、資産(売掛金)のマイナス勘定です。こうした勘定を、会計では「資産の評価勘定」と呼びます。
「売掛金の実質的な額が分かるように、売掛金の横に置くマイナス項目」だとイメージしてください。

続 貸倒引当金を、売掛金とセットで見る(t字勘定で見る)

帳簿の中では、この2つがどのように綱引きをしているのかを見てみましょう。

売掛金(資産)
期末残高 500,000

左側に 500,000円。「あとで受け取れる権利」が堂々と存在しています。

貸倒引当金(資産のマイナス)
決算整理 10,000

右側に 10,000円。売掛金の価値を調整する「マイナス項目」として存在しています。

T字勘定をまとめて読むと

この2つをセットで見ると、「売掛金は500,000円あるけれど、10,000円は回収できない見込みなので、実質的な価値は490,000円だな」と分かります。

続 貸倒引当金を、売掛金とセットで見る(B/Sで見る)

では、この「帳簿の中での綱引き」の状態を、最終的な決算書(B/S)で外部の人にどう報告するのでしょうか?

ここでも、いきなり「売掛金 490,000円」と差し引き後のウソの金額を書いてはいけません。
B/Sでは、次のように「もとの売掛金」とそのすぐ下に「回収できなさそうな額」を並べて、正直にすべてを見せます。

貸借対照表(抜粋)
資産の部
売掛金 500,000
貸倒引当金 △10,000
売掛金の実質額 490,000

※「△」は、簿記の世界で「マイナス」を表す記号です。

▼ この B/S で見てほしいこと

資産の部では、売掛金 500,000 をいきなり 490,000 に書き換えているのではありません。
まず売掛金を 500,000 と示し、そのすぐ下に 貸倒引当金 △10,000 を置いて、差し引いた結果として「売掛金の実質額 490,000」と読ませています。

売掛金 500,000 - 貸倒引当金 10,000 = 実質 490,000
もとの金額(500,000円)と、回収できなさそうな金額(10,000円)を分けて見せます。

こうすることで、B/Sを見た人は「この会社は50万円の請求権を持っているが、そのうち1万円は回収できないと見込んでいる。だから実質は49万円だな」と、会社の資産の実態を読み取れます。

よくある質問

貸倒引当金は貸方にあるのに、なぜ負債ではないのですか?

誰かに支払う義務ではなく、売掛金などの資産から回収できない見込み額を差し引くための勘定だからです。このような勘定を評価勘定といいます。

回収できない見込み額を、売掛金から直接引いてはいけないのですか?

見込みの段階では、売掛金の請求権がまだ残っています。元の請求額を残しながら回収見込み額を示すため、貸倒引当金を別に記録します。

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著者
effboki編集部
監修
effboki代表清水 和
更新日

この記事は、簿記3級・2級の学習者がつまずきやすいポイントを、教材設計と質問対応の観点から整理しています。