簿記3級 貸倒引当金

差額補充法とは?貸倒引当金の残高があるときの計算と仕訳

この記事の目次

まず、ここだけ押さえよう

差額補充法は、貸倒引当金の必要額と決算整理前残高を比較し、差額だけを追加または取り崩す方法です。

前期に設定した引当金が残っていれば、必要額の全額をもう一度加える必要はありません。「決算後にいくら残したいか」と「いまいくらあるか」を分けて計算します。

  1. 必要額を求める

    問題で指定された期末債権の残高に、貸倒実績率を掛けます。

  2. 整理前残高を確認する

    帳簿に残っている貸倒引当金の金額を確認します。未処理の貸倒れがある場合は、その処理も先に反映します。

  3. 差額の向きに合わせて仕訳する

    不足なら繰入で増やし、超過なら戻入で減らします。

残高に応じた調整額
整理前残高今回の処理動かす金額
ゼロ必要額の全額を繰入必要額
必要額より少ない不足分を繰入必要額 − 整理前残高
必要額より多い超過分を戻入整理前残高 − 必要額
必要額と同じ仕訳なし差額なし

最後に、整理前残高に繰入額を加える、または戻入額を引くと必要額になるかを確認します。これが差額補充法でそろえたい結果です。

詳しい解説

差額補充法の3パターン

3 差額補充法
差額補充法の考え方

クッション(貸倒引当金)の金額(例:10,000円)が決まりました。では、仕訳の金額には「10,000」と書けばいいのでしょうか。
実は、すでに手元にクッション(貸倒引当金)の使い残しがあるかを確認しなければなりません。

前期に作った引当金が使われずに残っている場合、目標額との差額だけを補充(または減らす)します。 これを差額補充法といい、3つのパターンがあります。

パターン 手元の残高 回収不能見込み額(設定したい引当金の額) どうする? 決算整理仕訳
① ゼロ 0円 10,000円 10,000円を全額積む
10,000
10,000
② 足りない 7,000円 10,000円 不足分の3,000円だけ追加
3,000
3,000
③ 多すぎる 12,000円 10,000円 多すぎる2,000円を戻す
2,000
2,000

※多すぎた場合は、貸方に貸倒引当金戻入(収益)という科目を使って利益として取り戻します。

1 例題1:決算整理前の残高がない時
問題

決算日。期末売掛金 300,000円、貸倒実績率 2%、決算整理前の貸倒引当金残高 0円 とする。
差額補充法による決算整理仕訳を示しなさい。

解答
6,000
6,000
解説 ▼ 解説:3ステップで考えよう

差額補充法の問題は、いつも同じ「3つのステップ」で考えます。

Step1:貸倒引当金(クッション額)を計算する
期末売掛金 300,000円 × 貸倒実績率2% = 6,000円
(決算のあとに、6,000円の貸倒引当金(クッション額)が残っている状態にしたい!)

Step2:いま手元にある残高を確認する
決算整理前の残高は 0円 です。

Step3:差額を調整する(どう考えるか?)
欲しいのは 6,000円。今あるのは 0円。
つまり、不足分どころか「全部」が足りません。したがって、目標額である 6,000円をそのまま全額積み上げます。

T字勘定で見ると
貸倒引当金繰入(費用)
決算整理 6,000
貸倒引当金
決算整理 6,000

仕訳によって、左側(借方)に「貸倒引当金繰入(費用) 6,000円」が発生し、今年のP/Lに費用として載ります。

そして右側(貸方)に「貸倒引当金 6,000円」が新しく積み上がり、無事に目標額(0 + 6,000 = 6,000円)のクッションが完成しました。

2 例題2:決算整理前の残高がある時(足りないときは追加で積む)
問題

決算日。期末売掛金 500,000円、貸倒実績率 2%、決算整理前の貸倒引当金残高 7,000円 とする。
差額補充法による決算整理仕訳を示しなさい。

解答
3,000
3,000
解説

実際の商売では、この「使い残しがあるパターン」が一番よく出題されます。

Step1:貸倒引当金(クッション額)を計算する
期末売掛金 500,000円 × 貸倒実績率2% = 10,000円
(決算のあとに、10,000円の貸倒引当金(クッション額)が残っている状態にしたい!)

Step2:いま手元にある残高を確認する
決算整理前の時点で、すでに 7,000円 の使い残しがあります。

Step3:差額を調整する(どう考えるか?)
欲しいのは 10,000円。今あるのは 7,000円。
すでに7,000円分は準備できているので、足りない分の「3,000円」だけを追加で積み上げます。
(計算式:目標 10,000 - 残高 7,000 = 差額 3,000)

T字勘定で見ると
貸倒引当金繰入(費用)
決算整理 3,000
貸倒引当金
決算整理前 7,000
決算整理 3,000
貸倒引当金 10,000円

仕訳によって、追加した「3,000円」だけが今年の費用(貸倒引当金繰入)になります。

右側(貸方)の貸倒引当金は、「もともとあった 7,000円」に「今回追加した 3,000円」が合体して、無事に目標額の 10,000円(7,000 + 3,000 = 10,000円)が完成しました。

3 例題3:決算整理前の残高がある時(多すぎるときは戻す)
問題

決算日。期末売掛金 400,000円、貸倒実績率 2%、決算整理前の貸倒引当金残高 10,000円 とする。
差額補充法による決算整理仕訳を示しなさい。

解答
2,000
2,000
解説

解説:3ステップで考えよう

最後は少し特殊なパターンです。引当金が「余りすぎてしまった」らどうするのでしょうか?

Step1:貸倒引当金(クッション額)を計算する
期末売掛金 400,000円 × 貸倒実績率2% = 8,000円
(決算のあとに、8,000円の貸倒引当金(クッション額)が残っている状態にしたい!)

Step2:いま手元にある残高を確認する
決算整理前の時点で、10,000円 もの使い残しがあります。

Step3:差額を調整する(どう考えるか?)
欲しいのは 8,000円。今あるのは 10,000円。
目標よりも 2,000円「多すぎる」状態です。多すぎるクッションはそのまま放置せず、余った「2,000円」を減らして(取り崩して)調整します。
(計算式:目標 8,000 - 残高 10,000 = 差額 △2,000)

新しい勘定科目「貸倒引当金戻入」

クッションを減らすため、仕訳の左側(借方)に「貸倒引当金 2,000」を書いてマイナスします。

そして右側(貸方)には、「貸倒引当金戻入(かしだおれひきあてきんもどしいれ)」という収益の勘定科目を使います。

「去年の決算で費用(損)として見積もっていたけれど、実際にはそこまで損しなかった」ということで、余った分を今年の「利益(収益)」として取り戻すのです。

T字勘定で見ると
貸倒引当金
決算整理 2,000
決算整理前 10,000
貸倒引当金 8,000円
貸倒引当金戻入(収益)
決算整理 2,000

今年のP/Lには、費用ではなく「収益(戻入) 2,000円」が出ます。

右側(貸方)の貸倒引当金は、もともとあった 10,000円から、左側(借方)で 2,000円削られたため、無事に目標額の 8,000円(10,000 - 2,000 = 8,000円)に着地しました。

最後に、ここを確認

  • 「目標の残高」と「今回の仕訳額」を分けます。

    必要額10,000円は、決算後に残しておきたい金額です。すでに3,000円あるなら、今回の仕訳は不足分の7,000円だけになります。

  • 仕訳のあと、残高が必要額になれば完成です。

    不足なら繰入で増やし、超過なら戻入で減らします。必要額と残高が同じなら、調整は不要です。「整理前の残高+追加分−取崩分」で確かめると、足しすぎを防げます。

よくある質問

差額補充法で、必要額をそのまま繰り入れないのはなぜですか?

前期からの引当金が残っている場合、その分はすでに用意されているからです。決算後に必要な額と現在の残高を比較して、不足分だけ追加します。

未処理の貸倒れがある場合、どの残高で計算しますか?

先に未処理の貸倒れを記録し、その処理を反映した債権と引当金の残高で判断します。修正前の残高を使うと、補充する額が変わってしまいます。

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著者
effboki編集部
監修
effboki代表清水 和
更新日

この記事は、簿記3級・2級の学習者がつまずきやすいポイントを、教材設計と質問対応の観点から整理しています。