簿記3級 商品売買・三分法

【決算整理】売上原価の算定はなぜ必要?三分法のズレを修正する理由とやり方|簿記3級

「しーくりくりしー」という呪文の丸暗記から卒業しましょう!売上原価の決算整理は、「前期からの繰越分」と「当期に仕入れた分」から「当期の売れ残り」を引いて、今年本当に売れた商品の原価を割り出すだけのシンプルな計算です。三分法でズレが生じる理由と、解決策をわかりやすく解説します。

先に結論

簿記3級の決算整理で多くの人が丸暗記してしまう「売上原価の算定(しーくりくりしー)」。なぜわざわざこんな計算をする必要があるのでしょうか?

結論から言うと、日々の帳簿に書かれている「仕入」の金額は、まだ「今年本当に売れた分の費用(=売上原価)」になっていないからです。

三分法では、期中に商品を仕入れた際、まだ売れるかどうかわからなくても、いったん全額を「仕入(費用)」として記録します。そのため、決算時点の”仕入勘定(費用)”には、「今年売れた分(売上原価)」だけでなく「売れ残った分(期末商品=資産)」まで費用として混ざってしまっている状態なのです。

決算整理でやっているのは、このズレを直し、仕入勘定を「今年の正しい費用(売上原価)」へと計算し直す重要な帳尻合わせの作業です。

なぜ売上原価の決算整理でモヤモヤしてしまうのか?

初学者が「しーくりくりしー」の仕訳でつまずき、丸暗記に走ってしまう原因は主に以下の2つです。

1. 「仕入(当期仕入高)」と「売上原価」を同じものだと思っている

簿記の大原則は「今年の売上に貢献した分だけを、今年の費用にする」ことです。仕入れた金額をそのまま全額費用にしてしまうと、会社の利益が不当に少なく計算されてしまいます。三分法ではこの2つが決算の前後で入れ替わるため、言葉の定義をしっかり分ける必要があります。

2. 三分法の期中ルールの前提を忘れている

三分法は「日々の記録を簡略化するため、仕入れた瞬間にすべて費用として処理する」という実務上のルールです。この「ズボラな記録」をしているという前提を忘れると、なぜ決算で大掛かりな修正が必要なのかが見えなくなります。

売上原価の決算整理はなぜ必要?を図解で順番に解説

ここからは、この記事の図解を使って、三分法で発生するズレと、売上原価を算定する決算整理仕訳の仕組みを図解でスッキリと腑に落としていきましょう。

1
商品売買【三分法】の復習
🧾 現場は忙しい!「とりあえず費用」の割り切り

細かい計算や仕訳の話に入る前に、まずは私たちが日々どんなルールで帳簿をつけているのか、その大前提から復習しましょう。

お店で商品を買ったり売ったりしたときの記録のつけ方には、世の中にいくつか種類があります。
たとえば、100円のりんごが1個売れるたびに「りんごという資産が100円減って、50円の利益が出た!」といちいち完璧に記録をつける方法もあります。しかし、毎日何千個という商品が売れるお店でこんなことをしていたら、現場の人は倒れてしまいますよね。

そこで、簿記3級では現場にやさしい(少しズボラな)「三分法(さんぶんぽう)」というルールを使います。

📘 三分法で使う「3つの勘定科目」

三分法、商品売買を次の3つの勘定科目だけでシンプルに記録する方法です。

仕入(費用)商品を買ってきたときの記録
売上(収益)商品を売ったときの記録
繰越商品(資産)お店の倉庫にある在庫の記録
⚠️ 三分法が持つ「強烈なクセ」

そして、この三分法には強烈なクセがあります。
それは、「商品を仕入れたら、まだ売れるかどうかわからなくても、買った瞬間にいったん全部『仕入(費用)』の箱に放り込んでしまう!」というルールです。

「買ったら費用! 売ったら収益!」とするこのルールは、毎日忙しいお店にとっては非常にラクチンです。
しかし、1年の最後である「決算の日」に、このズボラなルールが絶対に許されない大問題を引き起こします。次のストーリーで、その大問題の正体を見てみましょう。

2
導入(フック & Why)
🏪 1. りんご屋さんの決算日に発覚した「ズレ」

細かい仕訳の話に入る前に、「なぜ決算で面倒な帳尻合わせをするのか?」という全体像を、りんご屋さんのストーリーでイメージしてみましょう。

あなたは「りんご屋さん」の店長です。今年はじめてお店をオープンし、農家から1個100円のりんごを100個仕入れてきました(仕入にかかった金額を10,000円とします)。
三分法のルールに従い、買った瞬間にすべて費用にしたので、あなたの帳簿には「仕入(費用)10,000円」と記録されています。

この1年間、あなたは一生懸命りんごを売りました。今日はいよいよ1年の総決算である「決算日」です。
お店の利益は、「利益 = 今年の売上 - 今年の費用」で計算しますよね。

ここで、簿記の世界には絶対に守らなければならない大原則があります。
それは、売上から引いていい費用は「今年売れた商品の分の費用だけ」ということです。
2. 「仕入」のままでは絶対にダメな理由

さて、お店の奥にあるダンボールを数えてみると、今年仕入れた100個のりんごのうち、20個が売れ残っていました(つまり、売れたのは80個です)。

もし、帳簿に記録されている「仕入 10,000円(100個分)」を、そのまま今年の費用にしてしまうとどうなるでしょうか?

本当は80個しか売れていないのに、「今年の売上(80個分)」に対して、「今年の費用(100個分)」をぶつけることになってしまいます。

まだ売れていない20個分の金額まで今年の費用に入ってしまうため、費用が多すぎて、今年の利益が不当に少なくなってしまいます。

「とりあえず全部費用にする」という三分法のルールのせいで、帳簿の数字と、お店の正しい利益にズレが生じてしまったのです。
3. 解決策:帳尻を合わせて「本当の費用」を計算しよう

ズレてしまったのなら、決算の日に帳簿を直す「帳尻合わせ」をすればいいだけです!

100個仕入れたうち、20個が売れ残っているなら、「今年本当に売れたりんご(今年の正しい費用)」は何個でしょうか? 計算は簡単です。

仕入れた100個 - 売れ残りが20個 = 売れたのは80個!

本当の費用は「80個分」なのに、三分法では期中に仕入れた商品を「いったん全部売れるもの」と考え、仕入れた額をすべて費用として記録します。そのため、帳簿上は「仕入100個分」のままになっています。ズレていますよね。
だから決算の日に、費用の中から「今年の売れ残り(20個)」を引くことで、「今年本当に売れた分(80個)」だけを費用として残すという調整を行うのです。

4. 【さらに】実際の商売では「去年の残り」もある!

ここまでは「今年オープンしたばかりのお店」を例にしましたが、実際の商売では、これに加えて「去年から売れ残っていたりんご(期首商品)」があることも多いですよね。

たとえば、去年からの残りが30個あったとしましょう。
すると、今年お店にあったりんごは、全部で130個(去年の残り30個 + 今年の仕入100個)になります。

決算日にダンボールを数えて、最終的に20個売れ残っていたら、「今年本当に売れたりんご」は何個でしょうか? 計算は簡単です。

全部で130個あった - 売れ残りが20個 = 売れたのは110個! (期首商品30個 + 当期仕入100個)- 期末商品20個 = 売上原価110個

これが、決算で行う「売上原価(今年売れた商品の原価)の算定」の完全な姿です。

本当の費用は「110個分」なのに、三分法では期中に仕入れた商品だけをいったん「仕入」として費用にしているため、帳簿上は「仕入100個分」のままです。去年から残っていた30個分も、今年売れたなら今年の費用に含める必要があります。やはりここでもズレていますよね。
だから決算の日には、「去年の残り」を足して、「今年の売れ残り」を引くことで、「今年本当に売れた分」だけを費用として残すという大掛かりな帳尻合わせを行うのです。
つまり、簿記の式で表すと、(期首商品 + 当期仕入額)- 期末商品 = 売上原価 となります。

ここからは、今のりんご屋さんのストーリーを、簿記の勘定科目や仕訳に落とし込んで、もう少し細かく見ていきましょう。

決算整理で「今年の正しい費用」を確定させる!

売上原価の決算整理を行う理由は整理できましたか?

三分法は期中の処理がシンプルな反面、決算日には必ず「売れ残り分が費用に混ざっている」というズレが発生します。

決算整理では、このズレを修正し、「販売された分だけを費用とする」という簿記の大原則に従って帳簿を正す作業をします。この目的を理解しておけば、後続の計算や仕訳の意味がスムーズに腹に落ちるようになります。

関連論点も確認

関連する論点も続けて学ぶ

このページでは、「売上原価の決算整理が必要な理由」を要点として整理しました。関連する学習記事では、この考え方を実際のT字勘定(仕入・繰越商品)に当てはめ、「しーくりくりしー」の仕訳がどのように完成するのかを体系的に確認できます!

このテーマの記事一覧を見る独学用Web教科書の特徴を見る

次に確認する論点

【決算整理】売上原価の計算式とは?「期首+当期仕入-期末」の意味を解説|簿記3級

売上原価の計算式は丸暗記する必要はありません!「去年からの持ち越し」と「今年買った分」を合わせた全ての商品から、「今年の売れ残り」を引けば、自然と「売れた分の原価」が求まります。用語の意味と、決算整理で仕入勘定を調整する理由をわかりやすく解説します。

【決算整理】三分法とは?仕入・売上・繰越商品と決算整理の仕組みを解説|簿記3級

「まだ売れていない商品なのに、なんで買った瞬間に『仕入(費用)』にしちゃうの?」そんな初学者の最大の疑問をスッキリ解決!三分法は「毎日はズボラに記録して、決算でビシッとリカバリーする」というダイナミックな仕組みです。丸暗記が不要になる、三分法のストーリーを解説します!

商品売買・三分法の論点整理

売掛金・買掛金、三分法、仕入、売上、売上原価を、商品売買の流れと決算整理、商品BOXまでつなげて確認できます。

著者
effboki編集部
監修
effboki簿記学習設計チーム
公開日
更新日

この記事は、簿記3級・2級の学習者がつまずきやすいポイントを、教材設計と質問対応の観点から整理しています。