簿記3級 5要素(資産・負債・純資産・費用・収益)

費用収益対応の原則とは?決算整理が必要な理由を具体例で解説

この記事の目次

まず、ここだけ押さえよう

「この期間に、どれだけもうかったか」を正しく知るために、収益と、それを得るためにかかった費用を同じ期間にそろえます。これが「費用収益対応の原則」です。決算では、日々の記録を見直し、その期間の成績が正しく表れるように整えます。

会社のもうけは、収益から費用を差し引いて求めます。ただ、引き算をすればよいわけではありません。今年の収益から引くのは、今年の収益に対応する費用です。別の期間の費用が混ざったり、必要な費用が抜けたりすると、計算は合っていても、今年の本当の成績にはなりません。

今年の収益を得るための費用を、来年に回してしまったらどうでしょうか。今年は費用が少なく、よくもうかったように見えます。反対に、来年は今年の分まで費用を負担するため、成績が悪く見えてしまいます。

今年の収益に対応する費用を、来年に記録してしまうと
今年:必要な費用が抜ける利益が実際より大きく見える
来年:今年の費用まで混ざる利益が実際より小さく見える

これでは、事業がうまくいったのか、それとも費用を記録する時期がずれただけなのか、わかりません。だからこそ、収益と費用を対応させ、同じ期間の活動同士で比べることが必要なのです。

そのために、決算では「この収益・費用は、本当に今期の分か」を確認します。今期に必要な費用を加え、翌期以降の分は今期から外す。こうした調整を行うのが、決算の中の「決算整理」です。お金を払った時期と、費用にする時期が違うこともあるため、日々の記録をそのまま合計するだけでは足りないのです。

いわば、決算整理とは、記録と、その期間の実際の活動との「帳尻合わせ」です。会計のルールに沿って期間のずれを整えることで、P/Lに「今期の収益 − それに対応する費用 = 今期の利益」が表れます。

これから学ぶ決算整理にも、この考え方が出てきます。まだ名前を知らなくても、「何を今期の分にそろえるのか」に注目すると、つながりが見えてきます。

【減価償却】長く使うモノの代金を、使う期間に分ける
建物や備品は、買った年だけでなく、何年にもわたって事業に役立ちます。そこで、買った代金を一度に費用にせず、使う期間に分けて、今期にあたる分を今期の費用にします。

【売上原価の計算】仕入れた分から、今期に売れた分の費用へ整える
商品売買の記録方法の一つである「三分法」では、購入した商品の代金を、いったん「仕入」に記録します。決算では、前期からの売れ残りも含めて見直し、今期末の売れ残りを除くことで、今期に売れた商品の仕入れ代金だけを費用にします。この費用が「売上原価」です。

【費用・収益の見越と繰延】支払い・受取りの時期と、今期の分とのずれを整える
先に払った費用に来期の分が含まれていれば、その分は今期の費用から外します。逆に、まだ払っていなくても今期の費用であれば、追加で記録します。収益も同じように、お金を受け取ったかどうかだけでなく、今期の分かどうかでそろえます。

名前や手順は違っても、これらの調整で目指すことは同じです。今期の収益と、それに対応する費用をそろえて、今期のもうけを正しく伝える。この目的を押さえておくと、一つひとつの決算整理も、同じ考え方でつながって見えてきます。

詳しい解説

費用収益対応の原則

1 費用収益対応の原則
👕 ストーリーで理解:Tシャツ屋さんの例

あなたはTシャツ屋さんです。

  • 4月:Tシャツを 10枚(1枚100円) 仕入れました(合計 1,000円)。
  • 4月:そのうち 4枚 売れました。
  • 5月:残りの 6枚 が売れました。
🤔 ここで問題

4月に、Tシャツ10枚分(1,000円)を全額「費用」にしてしまって大丈夫でしょうか?
Tシャツの仕入代は、どのタイミングで費用にするのが正しいのでしょうか?

💡 答え(結論)

仕入代は、「買った月」ではなく、売れた月(売上が立った月)に対応させて費用にします。

  • 4月:4月に売れた 4枚分 を費用にする
    → 4枚 × 100円 = 400円 が費用となります。
    ※4月には10枚分(1,000円)を支払っていますが、費用にできるのは4月に売れた4枚分だけです。「支払った額=費用」ではありません。
  • 5月:5月に売れた 6枚分 を費用にする
    → 6枚 × 100円 = 600円 が費用となります。
⚠️ 「対応しない」と何がまずいか

もし 4月に仕入代1,000円を全部費用にしてしまうと、月ごとの儲けが壊れます。

  • 4月:4枚しか売っていないのに、10枚分の費用が出る
    → 大赤字に見える(4枚分の売上に対して、10枚分の費用)
  • 5月:6枚売れているのに、費用が出ないように見える
    → 利益が出すぎて見える(6枚分の売上に対して、費用がゼロに見える)
図解:売上と費用が同じ月に並ばないと、成績がゆがむ
4月
売上
4枚分
費用
10枚分
売上より費用が重すぎる
→ 赤字に見えすぎる
5月
売上
6枚分
費用
0枚分
売上だけが出て費用がない
→ 利益が出すぎて見える

結果として、月ごとの儲けがぐちゃぐちゃになり、正しい成績がわからなくなります。

✨ これが「費用収益対応の原則」

このように、売上(収益)と費用は対応させなければならないという簿記の考え方があります。
これを 「費用収益対応の原則」 といいます。

「この売上(収益)を得るために、どれだけの犠牲(費用)がかかったか」を
同じ月(同じ期間)でそろえて計算するのが、会計の基本です。

Adv 実務での処理方法(今は「ふーん」くらいで完全に理解できなくてOK)

先ほど「売上(収益)と費用は同じ月にセットにする」という費用収益対応の原則を学びました。
ここからは、それを踏まえて 「実際の会社の帳簿では、それをどうやって記録しているの?」 という実務のお話です。

絶対のゴール

記録の方法は二つあります。
が、どちらの方法によっても結果的に以下のようになります。
売れた分だけ「今年(今月)の費用」にする。売れ残りは、まだ費用にせず来年(来月)のための「商品(資産)」として残す。

これから、下の例題を使って、二つのやり方を紹介していきます。

例題 4月にTシャツを10枚、合計1,000円で仕入れました。4月に4枚売れて、5月に残り6枚が売れたとします。 会計が一番やりたいことは、1,000円で買ったTシャツを「2つの箱」に正しく仕分けすることです。
図 先に全体地図:前提条件をもとに、4月と5月のゆくえを見る

どちらのやり方でやっても、ゴールは以下のようになります。

4月:10枚を「売れた分(費用)」と「売れ残り(資産)」に分ける
箱①:お客さんに売れた分 4枚 × 100円 = 400円
4月の売上に貢献したので、4月の費用にする
箱②:お店に売れ残っている分 6枚 × 100円 = 600円
来月売るための商品(資産)として残す
4月は「費用400円、来月に持ち越す資産600円」になります。
5月:4月から残った6枚を「売れた分」と「売れ残り」に分ける
箱①:お客さんに売れた分 6枚 × 100円 = 600円
残っていた6枚がすべて売上に貢献したので、5月の費用にする
箱②:お店に売れ残っている分 0枚 × 100円 = 0円
すべて売り切ったので、来月に残す商品(資産)はゼロ
5月は「費用600円、来月に持ち越す商品(資産)0円」になります。

この4月・5月のゴールになるように、実務では以下のいずれかの方法で記帳(記録)していきます。 どちらのやり方でやっても結果的に同じ結論になるので、そこを意識して二つの方法を比べてみてください。

1 ルート①:最初から「商品(資産)」に入れ、売れた分だけ「費用」にする

いちばん素直で、感覚的に分かりやすい方法です。買った時点ではまだ売れていないので、まずは「商品」という財産として倉庫に置いておき、売れるたびに倉庫から出して費用へ移します。

イメージ:売れるまで倉庫(商品・資産)に置き、売れた分だけ費用へ移す。

4月
① 購入時

10枚とも、まだ売れていません。いったん 商品(資産) として倉庫に入れます。

商品(資産):1,000円
② 売れた時

4枚売れました。売れた4枚分だけを倉庫から出して、4月の費用 に移します。

4月の費用:400円 来月に持ち越す資産(=4月末の資産):600円
③ 4月末

売れた分だけがキッチリ費用になっているので、月末に直すことはありません。

5月
① 月初

倉庫には、4月から引き継いだ6枚が 商品(資産) として置かれています。

来月に持ち越す資産(=4月末の資産):600円
② 売れた時

残りの6枚が売れました。売れたので、倉庫から出して 5月の費用 に移します。

5月の費用:600円 来月に持ち越す資産(=5月末の資産):0円
③ 5月末

全部費用に移ったので、倉庫は空っぽです。月末に直すことはありません。

2 ルート②:先にぜんぶ「仕入(費用)」に入れ、月末に売れ残りを戻す
実は①の方法はあまり使わない。 ①の方法はとても正確ですが、実務ではあまり使われません。スーパーやコンビニのように毎日何百個もモノが売れるお店だと、ガムが1個売れるたびに「倉庫から出して費用に移す」と帳簿をつけるのが大変すぎるからです。

そこで考え出されたのが、簿記3級の試験でもメインとなるこの方法です。買ったときに「今年(今月)全部売れるだろう」と全部「仕入(費用)」にして、売れた時は忙しいからいちいち記録しない。月末に倉庫の売れ残りだけを数えて直す、という方法です。

月末に正しい形へ直すこの作業を、簿記では 決算整理(けっさんせいり) といいます。

4月
① 購入時

10枚分を、いったん全部 仕入(費用) の箱にドサッと入れます。

このままだと、4月に1,000円分の費用がかかったことになってしまいます。
② 売れた時

4枚売れました。しかし「購入時にまとめて費用に入れているからOK」と考え、この時点では費用の記録は無視します。レジでお金をもらう記録だけします。

③ 4月末(決算)

さあ、ここからが調整です。倉庫を数えたら6枚(600円分)売れ残っていました。これはまだ4月の費用にしてはいけません。
そこで、6枚分を費用の箱から取り出して、来月のための 商品(資産) の箱に戻します。

4月の費用:1,000円 − 戻した600円 = 400円 来月に持ち越す資産(=4月末の資産):600円
5月
① 月初

5月がスタートしました。4月末に資産へ戻した6枚(600円分)を、「さあ、今月売るぞ!」ということで、再びぜんぶ5月の 仕入(費用) の箱に入れ直します。

5月の費用:600円
② 売れた時

5月中にその6枚がすべて売れました。4月と同じく、売れたときの費用の記録は無視します。

③ 5月末(決算)

月末の調整です。倉庫を数えると、全部売れたので売れ残りは0枚でした。つまり、資産の箱に戻すお金は0円です。

5月の費用:600円 − 戻した0円 = 600円 来月に持ち越す資産(=5月末の資産):0円
初学者向けの結論:どっちの道を通っても、山頂の景色は同じ

ルート①(コツコツ正確にやる)と、ルート②(あとでまとめて直す)は、途中の道順が違うだけで、行き着くゴールはまったく同じです。
最終的に 「売れた分だけ今年(今月)の費用」「売れ残りは来年(来月)のための商品(資産)」 にそろえばOKです。

今は細かい書き方がわからなくても問題ありません。「なぜ月末にわざわざ直すの?」と迷ったら、毎日記録するのは大変だから、とりあえず全部費用の箱に入れておいて、月末に売れ残りだけを数えて資産の箱に戻しているんだな、と思い出してください。

よくある質問

費用と収益を同じ期間にそろえるのはなぜですか?

その期間にどれだけもうかったかを正しく示すためです。当期の収益から別の期間の費用を引いたり、必要な費用が抜けたりすると、当期の利益を正しく表せません。

支払った金額が、そのまま当期の費用になるのですか?

必ずしもそうではありません。翌期のサービスへの前払いや、長く使う固定資産の購入などは、当期に対応する費用へ分けて考える必要があります。

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著者
effboki編集部
監修
effboki代表清水 和
更新日

この記事は、簿記3級・2級の学習者がつまずきやすいポイントを、教材設計と質問対応の観点から整理しています。