簿記3級 5要素(資産・負債・純資産・費用・収益)

【5要素】費用収益対応の原則とは?売れた分だけを費用にする理由を解説|簿記3級

「商品を仕入れたら、その時点で全部費用になる」と思っていませんか?実はそれ、簿記では大きな間違いです!売上と費用を同じ期間にそろえる「費用収益対応の原則」を知ることで、簿記最大の難関である決算整理(売上原価の計算)の理由がスッキリと腑に落ちます。

先に結論

簿記を勉強していると、「商品を仕入れたら、払ったお金はすべて今年の費用になる」と思っていませんか?実はこれ、簿記の世界では大きな間違いです。

結論から言うと、商品は買った分」を全部費用にするのではなく、「売れた分」だけをその期間の費用にします。そして、売れ残った分はまだ費用にせず、来月・来年のための「商品(資産)」として残しておきます。

このように、「売上(収益)と、その売上を得るためにかかった犠牲(費用)を、同じ期間でそろえて計算する」という簿記の超重要ルールを、費用収益対応の原則と呼びます。

この記事では、なぜわざわざ「売れた分だけ」を計算し直す必要があるのか、その理由をスッキリ解説します。この原則を知れば、簿記3級の最大の山場である「決算」がグッと楽になりますよ!

なぜ「買った時=費用」だと間違えてしまうのか?

初学者が「費用」の考え方でつまずき、決算整理でパニックになってしまう原因は主に以下の3つです。

1. 「お金を払った=費用」だと直感的に思い込んでいる

日常生活では「お金を払ったら、その月の生活費(費用)になる」と考えますよね。しかし、簿記では「1,000円払って商品を仕入れた時点」では、まだ費用になっていません。商品は売れるまでは「これからお金を生み出してくれる価値ある財産(資産)」として倉庫に眠っている状態だからです。

2. 売上と費用を対応させないと「成績がゆがむ」ことに気づいていない

もし、仕入れた月に全額を費用にしてしまったらどうなるでしょう?仕入れた月は「売上は少ないのに費用ばかり大きくて大赤字」、翌月は「費用はゼロなのに売上だけ上がって大黒字」に見えてしまいます。これでは、月ごとの本当の儲け(会社の成績)がぐちゃぐちゃになり、経営者が正しい判断を行えません。

3. 「月末に直す(決算整理)」の本当のゴールが見えていない

実務や簿記3級の試験では、「毎日の記録が面倒だから、とりあえず買った時に全額『仕入(費用)』に入れておいて、月末に売れ残りだけを数えて『商品(資産)』に戻す」という少しややこしいルート(三分法)を通ります。途中のやり方がどうであれ、最終的なゴールは「売れた分だけを今年の費用にする」ことだと意識できていないと、仕訳の丸暗記になってしまいます。

ここからは、Tシャツ屋さんの例を使って、成績がゆがむ理由と、実務での処理方法をわかりやすく確認していきましょう。

費用収益対応の原則を図解で順番に解説

ここからは、売れた分だけ費用にする実務上の考え方を確認します。

1 費用収益対応の原則
👕 ストーリーで理解:Tシャツ屋さんの例

あなたはTシャツ屋さんです。

  • 4月:Tシャツを 10枚(1枚100円) 仕入れました(合計 1,000円)。
  • 4月:そのうち 4枚 売れました。
  • 5月:残りの 6枚 が売れました。
🤔 ここで問題

4月に、Tシャツ10枚分(1,000円)を全額「費用」にしてしまって大丈夫でしょうか?
Tシャツの仕入代は、どのタイミングで費用にするのが正しいのでしょうか?

💡 答え(結論)

仕入代は、「買った月」ではなく、売れた月(売上が立った月)に対応させて費用にします。

  • 4月:4月に売れた 4枚分 を費用にする
    → 4枚 × 100円 = 400円 が費用となります。
    ※4月には10枚分(1,000円)を支払っていますが、費用にできるのは4月に売れた4枚分だけです。「支払った額=費用」ではありません。
  • 5月:5月に売れた 6枚分 を費用にする
    → 6枚 × 100円 = 600円 が費用となります。
⚠️ 「対応しない」と何がまずいか

もし 4月に仕入代1,000円を全部費用にしてしまうと、月ごとの儲けが壊れます。

  • 4月:4枚しか売っていないのに、10枚分の費用が出る
    大赤字に見える(4枚分の売上に対して、10枚分の費用)
  • 5月:6枚売れているのに、費用が出ないように見える
    利益が出すぎて見える(6枚分の売上に対して、費用がゼロに見える)
図解:売上と費用が同じ月に並ばないと、成績がゆがむ
4月
売上
4枚分
費用
10枚分
売上より費用が重すぎる
→ 赤字に見えすぎる
5月
売上
6枚分
費用
0枚分
売上だけが出て費用がない
→ 利益が出すぎて見える

結果として、月ごとの儲けがぐちゃぐちゃになり、正しい成績がわからなくなります。

✨ これが「費用収益対応の原則」

このように、売上(収益)と費用は対応させなければならないという簿記の考え方があります。
これを 「費用収益対応の原則」 といいます。

「この売上(収益)を得るために、どれだけの犠牲(費用)がかかったか」を
同じ月(同じ期間)でそろえて計算するのが、会計の基本です。

Adv 実務での処理方法(今は「ふーん」くらいで完全に理解できなくてOK)

先ほど「売上(収益)と費用は同じ月にセットにする」という費用収益対応の原則を学びました。
ここからは、それを踏まえて 「実際の会社の帳簿では、それをどうやって記録しているの?」 という実務のお話です。

絶対のゴール

記録の方法は二つあります。
が、どちらの方法によっても結果的に以下のようになります。
売れた分だけ「今年(今月)の費用」にする。売れ残りは、まだ費用にせず来年(来月)のための「商品(資産)」として残す。

これから、下の例題を使って、二つのやり方を紹介していきます。

例題 4月にTシャツを10枚、合計1,000円で仕入れました。4月に4枚売れて、5月に残り6枚が売れたとします。 会計が一番やりたいことは、1,000円で買ったTシャツを「2つの箱」に正しく仕分けすることです。
先に全体地図:前提条件をもとに、4月と5月のゆくえを見る

どちらのやり方でやっても、ゴールは以下のようになります。

4月:10枚を「売れた分(費用)」と「売れ残り(資産)」に分ける
箱①:お客さんに売れた分 4枚 × 100円 = 400円
4月の売上に貢献したので、4月の費用にする
箱②:お店に売れ残っている分 6枚 × 100円 = 600円
来月売るための商品(資産)として残す
4月は「費用400円、来月に持ち越す資産600円」になります。
5月:4月から残った6枚を「売れた分」と「売れ残り」に分ける
箱①:お客さんに売れた分 6枚 × 100円 = 600円
残っていた6枚がすべて売上に貢献したので、5月の費用にする
箱②:お店に売れ残っている分 0枚 × 100円 = 0円
すべて売り切ったので、来月に残す商品(資産)はゼロ
5月は「費用600円、来月に持ち越す商品(資産)0円」になります。

この4月・5月のゴールになるように、実務では以下のいずれかの方法で記帳(記録)していきます。 どちらのやり方でやっても結果的に同じ結論になるので、そこを意識して二つの方法を比べてみてください。

1 ルート①:最初から「商品(資産)」に入れ、売れた分だけ「費用」にする

いちばん素直で、感覚的に分かりやすい方法です。買った時点ではまだ売れていないので、まずは「商品」という財産として倉庫に置いておき、売れるたびに倉庫から出して費用へ移します。

イメージ:売れるまで倉庫(商品・資産)に置き、売れた分だけ費用へ移す。

4月
① 購入時

10枚とも、まだ売れていません。いったん 商品(資産) として倉庫に入れます。

商品(資産):1,000円
② 売れた時

4枚売れました。売れた4枚分だけを倉庫から出して、4月の費用 に移します。

4月の費用:400円 来月に持ち越す資産(=4月末の資産):600円
③ 4月末

売れた分だけがキッチリ費用になっているので、月末に直すことはありません。

5月
① 月初

倉庫には、4月から引き継いだ6枚が 商品(資産) として置かれています。

来月に持ち越す資産(=4月末の資産):600円
② 売れた時

残りの6枚が売れました。売れたので、倉庫から出して 5月の費用 に移します。

5月の費用:600円 来月に持ち越す資産(=5月末の資産):0円
③ 5月末

全部費用に移ったので、倉庫は空っぽです。月末に直すことはありません。

2 ルート②:先にぜんぶ「仕入(費用)」に入れ、月末に売れ残りを戻す
実は①の方法はあまり使わない。 ①の方法はとても正確ですが、実務ではあまり使われません。スーパーやコンビニのように毎日何百個もモノが売れるお店だと、ガムが1個売れるたびに「倉庫から出して費用に移す」と帳簿をつけるのが大変すぎるからです。

そこで考え出されたのが、簿記3級の試験でもメインとなるこの方法です。買ったときに「今年(今月)全部売れるだろう」と全部「仕入(費用)」にして、売れた時は忙しいからいちいち記録しない。月末に倉庫の売れ残りだけを数えて直す、という方法です。

月末に正しい形へ直すこの作業を、簿記では 決算整理(けっさんせいり) といいます。

4月
① 購入時

10枚分を、いったん全部 仕入(費用) の箱にドサッと入れます。

このままだと、4月に1,000円分の費用がかかったことになってしまいます。
② 売れた時

4枚売れました。しかし「購入時にまとめて費用に入れているからOK」と考え、この時点では費用の記録は無視します。レジでお金をもらう記録だけします。

③ 4月末(決算)

さあ、ここからが調整です。倉庫を数えたら6枚(600円分)売れ残っていました。これはまだ4月の費用にしてはいけません。
そこで、6枚分を費用の箱から取り出して、来月のための 商品(資産) の箱に戻します。

4月の費用:1,000円 − 戻した600円 = 400円 来月に持ち越す資産(=4月末の資産):600円
5月
① 月初

5月がスタートしました。4月末に資産へ戻した6枚(600円分)を、「さあ、今月売るぞ!」ということで、再びぜんぶ5月の 仕入(費用) の箱に入れ直します。

5月の費用:600円
② 売れた時

5月中にその6枚がすべて売れました。4月と同じく、売れたときの費用の記録は無視します。

③ 5月末(決算)

月末の調整です。倉庫を数えると、全部売れたので売れ残りは0枚でした。つまり、資産の箱に戻すお金は0円です。

5月の費用:600円 − 戻した0円 = 600円 来月に持ち越す資産(=5月末の資産):0円
初学者向けの結論:どっちの道を通っても、山頂の景色は同じ

ルート①(コツコツ正確にやる)と、ルート②(あとでまとめて直す)は、途中の道順が違うだけで、行き着くゴールはまったく同じです。
最終的に 「売れた分だけ今年(今月)の費用」「売れ残りは来年(来月)のための商品(資産)」 にそろえばOKです。

今は細かい書き方がわからなくても問題ありません。「なぜ月末にわざわざ直すの?」と迷ったら、毎日記録するのは大変だから、とりあえず全部費用の箱に入れておいて、月末に売れ残りだけを数えて資産の箱に戻しているんだな、と思い出してください。

「売れた分だけ費用にする」が、決算整理のすべての基本!

費用収益対応の原則のイメージは掴めましたか?

「買った分を全部費用にしてしまうと、正しい利益が計算できなくなるから、売れた分だけを費用にする」。この理屈さえわかっていれば十分です。

実務(試験)のルートでは、「とりあえず全部費用に入れて、後から売れ残りを資産に戻す(=決算整理)」という少し回り道をしますが、行き着く山頂の景色(ゴール)はまったく同じです。

今後「なぜ月末にこんな面倒な仕訳をするの?」と迷ったときは、必ずこの「売上と費用を同じ期間で対応させるためだ!」という原則を思い出してくださいね。

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この記事では、「費用収益対応の原則」と実務での処理方法を分かりやすく整理しました。関連する学習記事では、この原則が、実際の「費用・収益・商品(資産)」の勘定科目の中でどう繋がっていくのか、より体系的に確認できます!

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著者
effboki編集部
監修
effboki簿記学習設計チーム
公開日
更新日

この記事は、簿記3級・2級の学習者がつまずきやすいポイントを、教材設計と質問対応の観点から整理しています。