B/S・P/L、勘定、仕訳 (Financial Statements, Accounts, and Journal Entries)
重要度:★★★★★▼
B/S・P/L、勘定、仕訳 (Financial Statements, Accounts, and Journal Entries)
簿記のゴールは「B/SとP/Lの定位置」を覚えること。
日々の記録(仕訳)は「増えたら定位置、減ったら逆」という単純なルールで書けるようになる。
導入(フック & Why)
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簿記のゴールは「B/SとP/Lの定位置(ホームポジション)」を覚えることであり、日々の記録(仕訳)は「増えたら定位置、減ったら逆」という単純なルールで書けるようになること。
あなたはレストランのシェフ(経理担当)です。
簿記の一連の流れは、料理に例えるとよく分かります。
「野菜を買ってきた」「肉を焼いた」。これが毎日の出来事です。
食材をどう扱うか、指示書(レシピ)に書きます。「野菜を鍋に入れる」「肉を皿に乗せる」。
最終的に、お客様に出す「完成した料理」です。
多くの初心者は、「調理(仕訳)」の方法を丸暗記しようとして挫折します。
しかし、プロは違います。「完成写真(B/S・P/L)」が頭にあるから、「あ、この野菜は左側に盛り付けるんだな」と調理法(仕訳)が自然とわかるのです。
この単元では、まず「完成写真(ホームポジション)」を頭に焼き付け、そこから逆算して「調理法(仕訳)」をマスターします。
全体像(俯瞰図・構造マップ)
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これから学ぶ3つの用語は、バラバラのものではなく、密接にリンクしています。
下から上へ積み上げる「3段階の構造」をイメージしてください。
最終的な「報告書」。簿記のゴールであり、全ての数字の終着点。
勘定科目ごとの「集計ボックス」。現金ボックス、売上ボックスなど。
ここで集計した最終的な数字を、上の財務諸表へ持っていく。
日々の取引を「左」と「右」に振り分ける変換作業。
勘定に数字を記入するための指示書(メモ)。
つまり、「B/SとP/Lを作るために、勘定という箱に集計したくて、そのために仕訳を切る」のです。
Step 1:完成図を知る(ホームポジションの理屈)
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すべての基準はここにあります。
5つの要素が、B/SとP/Lの「左右どちら」にいるのか。これを「ホームポジション(定位置)」と呼びます。
なぜ資産は左で、負債は右なのか。そしてなぜ費用は左なのか。
暗記ではなく、たった一つの「絶対ルール(等式)」から紐解きましょう。
1 B/Sの左右が決まる理由(絶対ルール)
簿記の世界には、絶対に崩してはいけない方程式があります。
この天秤を釣り合わせるために、場所が決まっています。
2 P/Lの左右が決まる理由(純資産との関係)
では、「費用」と「収益」はどっちでしょうか?
これは「最終的に純資産(会社の持ち分)をどう動かすか」で決まります。
収益が増える ➡ 利益が増える ➡ 最終的に「純資産」を増やす。
純資産のホームは「右」でしたね?
だから、純資産を増やす要因である「収益」も「右(貸方)」がホームです。
費用が増える ➡ 利益が減る ➡ 最終的に「純資産」を減らす。
純資産(右)を減らすには、逆側の「左」に書くのがルールでしたね?
だから、純資産を減らす要因である「費用」は「左(借方)」がホームなのです。
3 結論:5要素の地図
4 BSとPLについて細かく
簿記のゴールである2つの財務諸表について、仕組みを詳しく見てみましょう。
どちらも「左(借方)の合計と、右(貸方)の合計は必ず一致する」というルールがあります。
1. 貸借対照表 (B/S)
ある時点の「財産の状態」を表します。
「左側(集めたお金を何に変えたか)」=「右側(お金をどこから集めたか)」なので、必ず一致します。
(変形すると:資産 - 負債 = 純資産)
2. 損益計算書 (P/L)
ある期間の「成績」を表します。
収益と費用の差額が「利益」です。表にする時は、足りない側に利益を書き足すことで左右を一致させます。
ケースA:利益が出たとき(黒字)
ケースB:損失が出たとき(赤字)
費用の方が多かった場合、右側(貸方)に足りない分を書き足します。これが「当期純損失」です。
3. B/SとP/Lの関係(利益のゆくえ)
P/Lで計算された「当期純利益」は、最終的にB/Sの「純資産」に合流します。
純資産は、「元手(資本金)」と「過去の利益の蓄積(利益剰余金)」の2階建て構造になっています。
「純資産(右側)だけ増えて、左側と合わなくなるのでは?」と心配になるかもしれません。
大丈夫です。利益が出ているということは、その分だけ「資産(現金など)」も増えているからです。
当期純利益30を純資産に入れると、期末B/Sの貸借がピタッとそろいます。
Step 2:集計箱を知る(勘定・Tフォーム)
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T字勘定の中身について考えていきましょう。
1. まずはゴール(B/SとP/L)を見る
簿記の最終ゴールは、B/S(貸借対照表)とP/L(損益計算書)を作ることでしたね。
この表の中には、「勘定科目」と「その金額」が並んでいます。
- 現金100
- 建物120
- 土地80
- 商品40
- …
- 借入金70
- 未払金20
- …
- 資本金120
- 利益剰余金80
- …
- 売上原価120
- 水道光熱費40
- …
- 売上220
- 受取利息40
- …
「現金が100円ある」「建物が120円ある」「借入金が70円ある」
「売上が220円」「水道光熱費が40円」...
この「最終的な数字(100円とか50円)」を求めるのがゴールですが、
一体どのように計算するのでしょうか??
2. 計算のための道具(勘定)
実は、こんな感じで計算します!
勘定科目ごとに、一つ一つ以下のような「勘定(かんじょう)」という部屋を用意します。
形が「T」に似ているので「Tフォーム」「T字勘定」とも呼ばれます。
このT字勘定という部屋を使って、「最終的に現金がいくらあるのか」「最終的に売上がいくらだったのか」を計算・集計するのです。
※「勘定」という部屋の「科目(名前)」だから、「勘定科目」と呼ぶんですね!
次は、T字勘定の具体的な使い方(記入・計算)を学んでいきます!
1 T字勘定について知ろう!
T字勘定について概要を冒頭に説明しましたが、ここからは一からT字勘定について学んでいきましょう。
- 真ん中で左右に分かれています。
- 上に「科目名」を書きます。
- 左側を「借方(かりかた)」、右側を「貸方(かしかた)」と呼びます(単なる左右の名前です)。
- 勘定科目には、必ずこの部屋(T字勘定)が与えられます。
※勘定科目:勘定(T字勘定)に付ける名称のこと。たとえば「現金」という勘定科目を勘定(T字勘定)に付けることで、現金に関する取引を記録する場所である「現金勘定」が完成します。
また、他にも銀行からお金を借りた時などには、「借入金勘定」を作成して、記録します。
2 簿記の5要素とT字勘定
5つの要素(資産・負債・純資産・費用・収益)によって、「プラス(増加)」を書く場所が決まっています。
これはStep 1で学んだ「ホームポジション」と同じです。
- 現金100
- ……
- 借入金120
- ……
- 資本金115
- ……
- 水道光熱費42
- ……
- 売上185
- ……
資産ならB/Sの左側(借方)を「増加の場所」と決めることで、勘定の借方に残高が残ります。
だから、B/Sの借方に「現金」が来るようになります。
B/S・P/Lは「勘定の集合体」です。
勘定の借方に残っていればB/S・P/Lの借方へ、貸方に残っていればB/S・P/Lの貸方へ載せます。
だから、資産・負債など要素ごとに「増える場所」「減る場所」を正しく決める必要があるのです。
だから、B/S・P/Lにおける5つのグループのホームポジションを覚えることが大事なんです。
もし逆にしてしまったら、B/Sの右側に資産である現金が来てしまいます。
これは「現金という資産がマイナス100円」のような意味になってしまい、現金という硬貨がマイナス100円持っていることはまずありえません。
3 記入と計算の仕方を学ぼう!
例:現金(資産)の場合
① 増えたら左、減ったら右にメモしていく。
② 最後に「左の合計(150) - 右の合計(30)」をする。
③ 差額(120)が、今持っている「残高」になる。
Step 3:究極のルール「仕訳(しわけ)」
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さあ、いよいよ簿記のメインイベント、「仕訳」に入ります。
ですが、難しく構える必要はありません。Step 2で学んだ「Tフォーム」の場所さえわかれば、仕訳はただの「メモ書き」に過ぎないからです。
1 なぜ「仕訳」が必要なのか?(仕訳の正体)
今までT字勘定(Tフォーム)のルールを学んできました。
「じゃあ、取引があったら直接Tフォームに書き込めばいいじゃないか?」と思いますよね。
しかし、いきなり勘定に直接記入・記録を行うと、記録漏れや書き間違い(左右反対など)が生じる恐れがあります。
そこで、「仕訳」という準備作業を行ってから、勘定に記録をします。
仕訳とは、取引の記録内容をコンパクトに要約したものであり、いわば「勘定へ記録するときの指示書」です。
「『現金勘定の借方(左)に100円を書け』『借入金勘定の貸方(右)に100円を書け』という命令文」なのです。
以前に「複式簿記(1つの取引を「2つの側面」から記録すること)」という内容を勉強しましたが、一つの取引で動いた二つ以上のグループをどうやって同時に記録するのでしょうか。
そのための記録方法が仕訳ともいえます。
仕訳は取引を二つの側面から見て、借方と貸方の二か所に分けて書き、動いた要素を二つの面から同時に記録する方法です。
「Tフォームの書きたい側に、仕訳も書く」。
これだけです。
-
ゴールをイメージする:
「①現金を増やしたいな。②現金は資産グループだな。③資産はbsの左側(借方)=資産のホームポジションは左だな。ってことは現金勘定では左が増加だな。」 -
指示書(仕訳)を書く:
「じゃあ、仕訳の左側に『現金』と書こう。」
これだけです。常に「T字勘定と仕訳はセット」でイメージしてください。
2 実践!「指示書」を作ってみよう
では、具体的な取引で「T字勘定への書き込みイメージ」から「仕訳」を作ってみましょう。
例題1:借金の記録
「4月21日、銀行から現金100円を借りてきた。」
① 頭の中のイメージ(ゴール)
- 現金(資産)が増えた ➡ 資産のホームは左 ➡ 「現金のT字勘定の『左』に100と書きたい!」
- 借入金(負債)が増えた ➡ 負債のホームは右 ➡ 「借入金のT字勘定の『右』に100と書きたい!」
② 指示書の作成(仕訳を切る)
書きたい場所(左右)に合わせて、指示書を書きます。
「現金勘定の左側(借方)に100円を書け。」
「借入金勘定の右側(貸方)に100円を書け。」(という指示書。)
③ 結果(T字勘定への反映)
この指示書通りに、各部屋(勘定)に数字が飛びます。
※左右が完璧に一致していますね。
例題2:買い物の記録
「500円の商品を仕入れ、代金は現金で支払った。」
① 頭の中のイメージ(ゴール)
- 仕入(費用)が発生した ➡ 費用のホームは左 ➡ 「仕入のTフォームの『左』に500と書きたい!」
- 現金(資産)が減った ➡ 資産のアウェイは右 ➡ 「現金のTフォームの『右』に500と書きたい!」
② 指示書の作成(仕訳を切る)
「仕入勘定の左側(借方)に500円を書け。」
「現金勘定の右側(貸方)に500円を書け。」(という指示書。)
③ 結果(T字勘定への反映)
「仕訳で迷ったら、ホームポジション(Tフォーム)を思い出せ。」
仕訳は暗記ではありません。「どの箱(勘定)の、どっち側(左右)に数字を入れたいか?」という意思表示なのです。
【簿記は習うよりも慣れろ!!!】
3 学習の心得:つまずきの正体
実は、それが普通なんです。
それはなぜか? 「土台(足し算・引き算)」が既に完成していたからです。
簿記を学ぶということは、「小学1年生に戻って、足し算をゼロから習う」のと同じことなのです。
最初は指を使ったり、おはじきを使ったりして、時間をかけて答えを出していたはずです。
「7 + 4 = 11」と反射的に言えるようになったのは、教科書を丸暗記したからではなく、何度も何度も計算して、経験と回数を重ねたからですよね。
「現金100円を借りてきた」と聞いた瞬間に、
「(借)現金 100 / (貸)借入金 100」
とプロが即答できるのは、頭が良いからではありません。
単に、「7 + 4は?」と聞かれて「11!」と答えるのと同じレベルまで、回数をこなして慣れてしまっただけなのです。
「どの勘定科目が動くのかわからない」
「どっち側(借方・貸方)に行くのか迷う」
としても、全く問題ありません。
最初はゆっくりで大丈夫。数をこなせば、必ず「当たり前」になります。