→ 買った商品の金額は、いったん全部 仕入勘定 に入れます。
商品を仕入れたら、その金額を 仕入勘定 で記録します。ここではまず、いくら仕入れたか を帳簿に書きます。
三分法の決算で行う「在庫調整」のこと。「しーくり・くりしー」の正体。
「全部売れた」と仮定して書いた期中の記録を、「売れ残った分は戻す」ことで事実に合わせる。
細かい計算や仕訳の話に入る前に、まずは私たちが日々どんなルールで帳簿をつけているのか、その大前提から復習しましょう。
お店で商品を買ったり売ったりしたときの記録のつけ方には、世の中にいくつか種類があります。
たとえば、100円のりんごが1個売れるたびに「りんごという資産が100円減って、50円の利益が出た!」といちいち完璧に記録をつける方法もあります。しかし、毎日何千個という商品が売れるお店でこんなことをしていたら、現場の人は倒れてしまいますよね。
そこで、簿記3級では現場にやさしい(少しズボラな)「三分法(さんぶんぽう)」というルールを使います。
三分法とは、商品売買を次の3つの勘定科目だけでシンプルに記録する方法です。
そして、この三分法には強烈なクセがあります。
それは、「商品を仕入れたら、まだ売れるかどうかわからなくても、買った瞬間にいったん全部『仕入(費用)』の箱に放り込んでしまう!」というルールです。
「買ったら費用! 売ったら収益!」とするこのルールは、毎日忙しいお店にとっては非常にラクチンです。
しかし、1年の最後である「決算の日」に、このズボラなルールが絶対に許されない大問題を引き起こします。次のストーリーで、その大問題の正体を見てみましょう。
細かい仕訳の話に入る前に、「なぜ決算で面倒な帳尻合わせをするのか?」という全体像を、りんご屋さんのストーリーでイメージしてみましょう。
あなたは「りんご屋さん」の店長です。今年はじめてお店をオープンし、農家から1個100円のりんごを100個仕入れてきました(仕入にかかった金額を10,000円とします)。
三分法のルールに従い、買った瞬間にすべて費用にしたので、あなたの帳簿には「仕入(費用)10,000円」と記録されています。
この1年間、あなたは一生懸命りんごを売りました。今日はいよいよ1年の総決算である「決算日」です。
お店の利益は、「利益 = 今年の売上 - 今年の費用」で計算しますよね。
さて、お店の奥にあるダンボールを数えてみると、今年仕入れた100個のりんごのうち、20個が売れ残っていました(つまり、売れたのは80個です)。
本当は80個しか売れていないのに、「今年の売上(80個分)」に対して、「今年の費用(100個分)」をぶつけることになってしまいます。
まだ売れていない20個分の金額まで今年の費用に入ってしまうため、費用が多すぎて、今年の利益が不当に少なくなってしまいます。
ズレてしまったのなら、決算の日に帳簿を直す「帳尻合わせ」をすればいいだけです!
100個仕入れたうち、20個が売れ残っているなら、「今年本当に売れたりんご(今年の正しい費用)」は何個でしょうか? 計算は簡単です。
本当の費用は「80個分」なのに、三分法では期中に仕入れた商品を「いったん全部売れるもの」と考え、仕入れた額をすべて費用として記録します。そのため、帳簿上は「仕入100個分」のままになっています。ズレていますよね。
だから決算の日に、費用の中から「今年の売れ残り(20個)」を引くことで、「今年本当に売れた分(80個)」だけを費用として残すという調整を行うのです。
ここまでは「今年オープンしたばかりのお店」を例にしましたが、実際の商売では、これに加えて「去年から売れ残っていたりんご(期首商品)」があることも多いですよね。
たとえば、去年からの残りが30個あったとしましょう。
すると、今年お店にあったりんごは、全部で130個(去年の残り30個 + 今年の仕入100個)になります。
決算日にダンボールを数えて、最終的に20個売れ残っていたら、「今年本当に売れたりんご」は何個でしょうか? 計算は簡単です。
これが、決算で行う「売上原価(今年売れた商品の原価)の算定」の完全な姿です。
本当の費用は「110個分」なのに、三分法では期中に仕入れた商品だけをいったん「仕入」として費用にしているため、帳簿上は「仕入100個分」のままです。去年から残っていた30個分も、今年売れたなら今年の費用に含める必要があります。やはりここでもズレていますよね。
だから決算の日には、「去年の残り」を足して、「今年の売れ残り」を引くことで、「今年本当に売れた分」だけを費用として残すという大掛かりな帳尻合わせを行うのです。
つまり、簿記の式で表すと、(期首商品 + 当期仕入額)- 期末商品 = 売上原価 となります。
ここからは、今のりんご屋さんのストーリーを、簿記の勘定科目や仕訳に落とし込んで、もう少し細かく見ていきましょう。
この先では、例題・判断手順・演習を使って理解を完成させます。
売上原価は、去年からの売れ残り(期首商品)と、今年新しく買った分(当期仕入)を合計し、そこから今年の売れ残り(期末商品)を引き算して求めます。
仕訳をする前に、今の帳簿がどうなっているか(ビフォー)を確認します。
バラバラに散らばっている数字を「仕入勘定」の中に集めて、計算式(期首+当期-期末)をそのまま実行します。
【ステップ①】足す:期首商品を仕入へ移す
去年の残りを仕入勘定に合流させます。
繰越商品が「0円」にリセットされ、仕入勘定が「期首+当期」の合計額になります。
【ステップ②】抜く:期末商品を繰越商品へ戻す
今年の売れ残りを仕入勘定から引き算して、空っぽになった繰越商品勘定へ救出します。
繰越商品勘定の中身は「期末商品」、仕入勘定の中身は「売上原価(=期首商品+当期仕入高-期末商品)」に変身します。
2つの仕訳(しーくり・くりしー)を終えると、帳簿の数字は外部に報告できる「今年の正しい姿(アフター)」へと生まれ変わります。
このビフォーアフターを綺麗に作り出すことこそが、決算整理仕訳(しーくり・くりしー)の本当の目的です。
決算整理(帳尻合わせ)の処理に入る前に、まずは私たちが日々どんなルールで帳簿をつけているのか、その大前提を復習しましょう。
簿記3級では、商品売買の記録に「三分法(さんぶんぽう)」というルールを使います。
三分法とは、商品売買を次の「3つの勘定科目」だけでシンプルに記録する方法です。
現場での記録をラクにするため、三分法には強烈なクセがあります。それは「商品を仕入れたら、まだ売れるかどうかわからなくても、いったん全部『仕入(費用)』に入れてしまう」というルールです。
商品を仕入れたら、その金額を 仕入勘定 で記録します。ここではまず、いくら仕入れたか を帳簿に書きます。
商品を売ったら、その金額を 売上勘定 で記録します。ここではまず、いくら売れたか を帳簿に書きます。
期中は「買ったら仕入!売ったら売上!」とするだけで済むので非常にラクです。
しかし、決算日を迎えたとき、このズボラなルールのままでは絶対に許されない大問題が発生します。
その理由を理解するために、簿記の世界の「絶対に守らなければならない大原則」を一つ紹介します。
それが「費用収益対応の原則」です。
では、なぜ三分法のままではこのルールを破ってしまうのか?
具体的な数字を使って、りんご屋さんで計算してみましょう。
左の計算では、売れていない20個分まで今年の費用に入ってしまいます。だから費用が多すぎて、利益が小さく見えます。
右の計算のように、売上を生んだ80個分の原価だけを今年の費用にするのが、費用収益対応の原則に合った考え方です。
先ほどのりんご屋さんのストーリーで、決算整理の最大の目的は、帳簿の数字を「今年の正しい費用」に書き換えることだとわかりましたね。
これまでの計算で導き出した、「今年本当に売れた商品の原価(今年の正しい費用)」のことを、簿記の言葉で「売上原価(うりあげげんか)」と呼びます。
決算の最大のミッションは、帳簿の「仕入勘定」の金額を、ただの当期仕入額から、この「売上原価」へと書き換えることです。
では、この「売上原価」とは一体どのように計算して導き出すのでしょうか。計算の仕組みを確実にイメージできるように、りんご屋さんの「1年目」と「2年目」のストーリーに分けて順番に見ていきましょう。
まずはお店をオープンしたばかりの「1年目」を想像してみてください。当然、お店の倉庫は空っぽで「去年の残り」はありません。
このとき、「今年本当に売れたりんご(売上原価)」は何個でしょうか。計算はとても簡単ですね。
これが一番シンプルな売上原価の計算です。「買った分から、売れ残りを引く」だけで求まります。
では、次の年(2年目)はどうなるでしょうか。実際の商売ではこちらのケースがほとんどです。
2年目のスタート時点では、倉庫は空っぽではありません。「1年目に売れ残った20個」がそのまま残っていますよね。
さて、今年の「売上原価(本当に売れた数)」は何個でしょうか。まずは、お店にあったりんごを「すべて」集めるのがポイントです。
今年は「120個(去年の残り20個(期首商品) + 今年買った100個(当期仕入高))」を売るチャンスがありました。しかし、最後に数えたら30個残っていたのですから、手元から無くなっている分(本当に売れた分)はこうなります。
今お話しした「2年目のストーリー」こそが、決算で行う売上原価の計算の完全な姿です。
少し漢字が多くなりますが、お店の状況をそのまま簿記の勘定科目に置き換えると、次の計算式になります。
ここで登場する3つの勘定科目の意味を、しっかり整理しておきましょう。
なぜこの足し引きになるのか、改めてイメージしてみてください。
このように、決算では「期首商品」「当期仕入」「期末商品」の3つの数字を使って、今年の正しい費用(売上原価)を導き出すのです。
では、この計算をパズルのように迷わずに行うための便利ツール「商品BOX」について、次のカードで見ていきましょう。
売上原価の計算式(期首 + 当期 - 期末)を丸暗記しなくても、視覚的にパズル感覚で解けるようになる最強の補助図。それが「商品BOX」です。
三分法では実際には「商品」という勘定科目は出てきませんが、「もし商品勘定(資産)があったら」とメモ書きにしたものが商品BOXです。
ここで使う考え方は 資産勘定 と同じです。商品という資産が 増えると左、商品という資産が 減ると(出ていくと)右 と考えます。
また、次のように考えることもできます。
左側に「今期売るチャンスがあった商品」をすべて集め、右側で「その商品が最終的にどうなったか」を2つに分けます。
今回は、後者の考え方でこの後の説明をしていきたいと思います。
【左側に書くもの:お店に集まった商品】
左側は、「今期、お店に存在した商品のすべて」です。
【右側に書くもの:商品の最終的な行方】
右側は、左側に集めた商品が「決算の日にどうなったか?」という結果です。
この商品BOXの最大のルールは、「左側の合計」と「右側の合計」が絶対に一致するということです。
したがって、この図の4つの枠のうち「3つの数字」さえ分かれば、残りの1つは引き算でカンタンに求めることができます。
試験のときは、問題用紙の余白にこの「商品BOX」をサッと描いて数字を当てはめるだけで、売上原価の計算ミスが劇的に減ります!
「内部は自由、外部は1通り」という対比を明確にすると、決算(帳尻合わせ)を行う本当の理由がよりクッキリと浮かび上がります。
実は簿記には、今回学んでいる「三分法」の他にも、「売上原価対立法」などさまざまな記帳ルールが存在します。ここでぜひ知っておいてほしいのが、「内部(会社の中)」と「外部(外への報告)」のルールの違いです。
なぜなら、「実際にいくら仕入れて、いくら売れて、いくら残っているか」という商売の現実(本質)は一つしかないからです。
その「絶対に変わらない1通りの本質」を1枚の図に表したのが、この商品BOXなのです。会社内部でどんな記帳ルールを使っていようが、決算(帳尻合わせ)の最終目的は、内部の自由な数字を、この商品BOXが示している「外部向けの正しい現実の数字」に着地させることに他なりません。
だからこそ、この箱の構造さえ理解してしまえば、どんな記帳方法が出題されても迷わない「最強の視点」を手に入れたことになります。
では、いよいよ決算整理仕訳をおこないます。
三分法は、繰越商品勘定・仕入勘定・売上勘定の三つの勘定科目を使用して、商品売買の取引を記録する方法でした。
まずは仕訳をする前に、今の帳簿(決算前)で、それぞれの各勘定科目が何を表しているのかを確認していきましょう。
今の意味:「今年の売上高」を表している。
なぜ?:三分法のルールにより、期中に商品が売れるたびに記録してきたからです。これは「今年の正しい収益」なので、決算で直す必要はありません。
今の意味:「当期仕入高」を表している。
なぜ?:期中に商品を仕入れた時点ですべて「仕入」に放り込んできたからです。売れ残りも混ざったままの途中の数字です。
今の意味:「期首商品額(去年の残り)」を表している。
なぜ?:期中に商品が売れてもいちいち減らす記録をしません。そのため、去年の決算から1年間ずっと放置されており、去年の古い数字のまま止まっています。
勘定科目の名前は「仕入」という名前のままですが、中身の数字を、今年の正しい費用である「売上原価(本当に売れた分の原価)」に変えてあげます。
中身が期首商品(去年の残り)のままなので、今現在お店にある正しい在庫である「期末商品」に変えてあげます。
今の「仕入勘定」の中には、もともと「当期仕入」が入っていますよね。
だから、仕入勘定に①「期首商品」を足し込み、そこから今年の売れ残りである②「期末商品」を引く(抜き出す)。
この2つの操作(仕訳)をするだけで、仕入勘定の残高は自動的に計算されて「売上原価」の金額に生まれ変わります。
そして、仕入勘定から抜き出した期末商品を繰越商品勘定に入れてあげれば、在庫の記録も今年の正しい数字に直りますよね。
だからこそ、決算整理では「足す仕訳」と「引く仕訳」の2本の仕訳を行うのです。
では、実際にどのように仕訳をして数字を移動させるのか、2つのステップを見ていきましょう。
前期から残っていた商品も、今期に売れたかもしれません。そこでまず、期首商品 も 仕入勘定 に入れて、今期売る可能性があった商品をひとまとめにします。
ひとまとめにした仕入勘定の中には、今年の売れ残りも混ざっています。売れ残りは今年の費用ではなく、来年も売ることができる「資産」です。そこで、期末商品を仕入勘定から引いて(抜き出して)、空っぽになった繰越商品勘定へ救出してあげます。
問1:
問2:
問3:
商品BOXで見ると、左に ①期首商品 と ②当期仕入 が集まり、右に ③売上原価 と ④期末商品 が出ます。
左側の合計は、①30,000(期首商品) + ②120,000(当期仕入額) = 150,000円 です。
商品BOXは左右が一致するので、③売上原価 = 150,000 - ④18,000(期末商品) = 132,000円 と分かります。したがって、問1の答えは売上原価 132,000円 です。
また、決算後の 仕入勘定 の額は売上原価を表すので 132,000円、決算後の 繰越商品勘定 の額は期末商品を表すので 18,000円 と商品BOXから分かります。
決算整理仕訳① 期首商品の金額を仕入へ移す
前期から残っていた商品も、今期に売れたかもしれません。そこでまず、期首商品 30,000円 も 仕入勘定 に入れて、今期売る可能性があった商品をひとまとめにします。
決算整理仕訳② 期末商品の金額を繰越商品へ戻す
期首商品と当期仕入の全部が売れたわけではありません。売れ残った分は、次の期へ持ち越す商品です。そこで 期末商品 18,000円 を 仕入勘定 から抜いて、繰越商品勘定 へ戻します。