1
商品売買【三分法】の復習
🧾 現場は忙しい!「とりあえず費用」の割り切り

細かい計算や仕訳の話に入る前に、まずは私たちが日々どんなルールで帳簿をつけているのか、その大前提から復習しましょう。

お店で商品を買ったり売ったりしたときの記録のつけ方には、世の中にいくつか種類があります。
たとえば、100円のりんごが1個売れるたびに「りんごという資産が100円減って、50円の利益が出た!」といちいち完璧に記録をつける方法もあります。しかし、毎日何千個という商品が売れるお店でこんなことをしていたら、現場の人は倒れてしまいますよね。

そこで、簿記3級では現場にやさしい(少しズボラな)「三分法(さんぶんぽう)」というルールを使います。

📘 三分法で使う「3つの勘定科目」

三分法とは、商品売買を次の3つの勘定科目だけでシンプルに記録する方法です。

仕入(費用)商品を買ってきたときの記録
売上(収益)商品を売ったときの記録
繰越商品(資産)お店の倉庫にある在庫の記録
⚠️ 三分法が持つ「強烈なクセ」

そして、この三分法には強烈なクセがあります。
それは、「商品を仕入れたら、まだ売れるかどうかわからなくても、買った瞬間にいったん全部『仕入(費用)』の箱に放り込んでしまう!」というルールです。

「買ったら費用! 売ったら収益!」とするこのルールは、毎日忙しいお店にとっては非常にラクチンです。
しかし、1年の最後である「決算の日」に、このズボラなルールが絶対に許されない大問題を引き起こします。次のストーリーで、その大問題の正体を見てみましょう。

2
導入(フック & Why)
🏪 1. りんご屋さんの決算日に発覚した「ズレ」

細かい仕訳の話に入る前に、「なぜ決算で面倒な帳尻合わせをするのか?」という全体像を、りんご屋さんのストーリーでイメージしてみましょう。

あなたは「りんご屋さん」の店長です。今年はじめてお店をオープンし、農家から1個100円のりんごを100個仕入れてきました(仕入にかかった金額を10,000円とします)。
三分法のルールに従い、買った瞬間にすべて費用にしたので、あなたの帳簿には「仕入(費用)10,000円」と記録されています。

この1年間、あなたは一生懸命りんごを売りました。今日はいよいよ1年の総決算である「決算日」です。
お店の利益は、「利益 = 今年の売上 - 今年の費用」で計算しますよね。

ここで、簿記の世界には絶対に守らなければならない大原則があります。
それは、売上から引いていい費用は「今年売れた商品の分の費用だけ」ということです。
2. 「仕入」のままでは絶対にダメな理由

さて、お店の奥にあるダンボールを数えてみると、今年仕入れた100個のりんごのうち、20個が売れ残っていました(つまり、売れたのは80個です)。

もし、帳簿に記録されている「仕入 10,000円(100個分)」を、そのまま今年の費用にしてしまうとどうなるでしょうか?

本当は80個しか売れていないのに、「今年の売上(80個分)」に対して、「今年の費用(100個分)」をぶつけることになってしまいます。

まだ売れていない20個分の金額まで今年の費用に入ってしまうため、費用が多すぎて、今年の利益が不当に少なくなってしまいます。

「とりあえず全部費用にする」という三分法のルールのせいで、帳簿の数字と、お店の正しい利益にズレが生じてしまったのです。
3. 解決策:帳尻を合わせて「本当の費用」を計算しよう

ズレてしまったのなら、決算の日に帳簿を直す「帳尻合わせ」をすればいいだけです!

100個仕入れたうち、20個が売れ残っているなら、「今年本当に売れたりんご(今年の正しい費用)」は何個でしょうか? 計算は簡単です。

仕入れた100個 - 売れ残りが20個 = 売れたのは80個!

本当の費用は「80個分」なのに、三分法では期中に仕入れた商品を「いったん全部売れるもの」と考え、仕入れた額をすべて費用として記録します。そのため、帳簿上は「仕入100個分」のままになっています。ズレていますよね。
だから決算の日に、費用の中から「今年の売れ残り(20個)」を引くことで、「今年本当に売れた分(80個)」だけを費用として残すという調整を行うのです。

4. 【さらに】実際の商売では「去年の残り」もある!

ここまでは「今年オープンしたばかりのお店」を例にしましたが、実際の商売では、これに加えて「去年から売れ残っていたりんご(期首商品)」があることも多いですよね。

たとえば、去年からの残りが30個あったとしましょう。
すると、今年お店にあったりんごは、全部で130個(去年の残り30個 + 今年の仕入100個)になります。

決算日にダンボールを数えて、最終的に20個売れ残っていたら、「今年本当に売れたりんご」は何個でしょうか? 計算は簡単です。

全部で130個あった - 売れ残りが20個 = 売れたのは110個! (期首商品30個 + 当期仕入100個)- 期末商品20個 = 売上原価110個

これが、決算で行う「売上原価(今年売れた商品の原価)の算定」の完全な姿です。

本当の費用は「110個分」なのに、三分法では期中に仕入れた商品だけをいったん「仕入」として費用にしているため、帳簿上は「仕入100個分」のままです。去年から残っていた30個分も、今年売れたなら今年の費用に含める必要があります。やはりここでもズレていますよね。
だから決算の日には、「去年の残り」を足して、「今年の売れ残り」を引くことで、「今年本当に売れた分」だけを費用として残すという大掛かりな帳尻合わせを行うのです。
つまり、簿記の式で表すと、(期首商品 + 当期仕入額)- 期末商品 = 売上原価 となります。

ここからは、今のりんご屋さんのストーリーを、簿記の勘定科目や仕訳に落とし込んで、もう少し細かく見ていきましょう。

無料プレビューはここまで

決算整理:売上原価 (Cost of Goods Sold)の続きは会員ページで学べます

この先では、例題・判断手順・演習を使って理解を完成させます。

  • 全体像(俯瞰図・構造マップ)
  • まず確認。三分法とは?
  • 次に確認。売上原価とは?
  • まず確認。商品boxとは?
  • 期末の処理(決算整理仕訳)※ここが今回の単元!
  • その他の演習・確認問題