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導入(フック & Why)
🍞 0. パン屋さんのオーブンの物語

簿記の学習へようこそ。この章では「固定資産」について学びます。固定資産のルールや勘定科目をいきなり暗記する前に、まずはあなたが「小さなパン屋さんを開く」ところを想像してみてください。

開店初日。あなたは美味しいパンを焼くために、立派なオーブンを買いました。このオーブンは、今日1日だけ使って捨ててしまうものではありません。明日も、来月も、来年も、あなたの店でパンを焼き続けてくれる大切な「長年の相棒」です。

簿記では、このように会社が営業のために1年以上にわたって長く使う財産のことを「固定資産」と呼びます。
(※販売用に仕入れた小麦粉などは「商品」、長く使うオーブンやレジは「固定資産」です)

固定資産の勘定科目には、主に次のようなものがあります。

  • 建物(店舗や倉庫)
  • 土地(お店の敷地や駐車場)
  • 車両運搬具(配達用の車)
  • 備品(オーブン、レジ、パソコン、机など)

固定資産の「4つのライフステージ」
固定資産の学習は、このオーブンの「一生」を帳簿に記録していく作業です。流れはたったの4つしかありません。この順番通りに学べば、絶対に迷子になりません。

  1. 買う(取得):お店にオーブンがやってきた!
  2. 使う(減価償却):使えば使うほど、オーブンの価値は減っていく。
  3. 修繕・改良:壊れたから直す? それともパワーアップさせる?
  4. 手放す(売却・除却):お別れのとき。売るか、捨てるか。

それでは、この4つの場面を一つの物語として一気に追いかけてみましょう。

1. 買う(お店にオーブンがやってきた!)

長く使う財産を会社に迎え入れます。このとき、オーブン本体の値段だけでなく、お店に運んでもらうための費用などもすべて含めて計算します。

ここで「なんで運送費もオーブンの値段に含めるの? その日の費用にして消しちゃダメなの?」と思うかもしれません。

想像してみてください。お店の外の道路にポンと置かれたままのオーブンでは、パンは焼けませんよね。お店の中に運び込むための「運送費(引取運賃)」や、厨房で安全に使えるように業者さんに設置・固定してもらう「据付費(すえつけひ)」、あるいは買うときにかかった「購入手数料」などを払って、「よし、これでパンが焼けるぞ!」という状態になって初めて、オーブンとしての本当の価値を発揮します。

だから、「お店で使える状態」になるまでにかかったお金(これらを付随費用と呼びます)はすべて、「パンを焼くための財産を手に入れるために、絶対に欠かせなかったコスト」としてひとまとめにし、会社の「資産」として帳簿に記録するのです。

2. 使う(毎日のパン焼きと、価値の減少)

オーブンのおかげで毎日売上が上がります。しかし、2年、3年と使い続けるうちに少しずつ古くなり、買ったばかりの新品の時と同じ価値はもうありません。そこで、使って古くなった分の価値を、毎年少しずつ「費用」として記録していきます。

ここで「なんで買った時に、一気に全額を費用にしないの?」と疑問に思うかもしれません。

もし買った年に全額を費用にしてしまうと、1年目だけが「費用の負担が大きすぎて大赤字」に見えてしまいます。オーブンは来年も再来年もがんばってパンを焼いて「売上」を作ってくれるのに、1年目だけに費用の負担をすべて押し付けるのは不公平ですよね。

だから、「売上を作って活躍してくれた期間」に歩幅を合わせて、使って古くなった分の価値を毎年少しずつ「費用」に振り分けていくのです。これを減価償却と呼びます。

⭐︎コラム⭐︎ 付随費用も少しずつ費用になる

ここで、第1ステージの話を思い出してみてください。オーブンを「使える状態にするための付随費用(運送費や据付費など)」も、一緒に「資産」にまとめましたよね。

実は、これらの付随費用も、減価償却によってオーブン本体とまったく同じように、少しずつ費用に変わっていきます。オーブン本体の値段と付随費用をひとまとめにして「資産」の金額にしているため、本体と一緒に「売上を作って活躍してくれた期間」にわたって分割して費用化されるのです。

本体だけでなく、運ぶためにかかったお金も設置費用も、すべてひっくるめて「長年の相棒」としてパン屋さんの売上に貢献し、一緒に少しずつ費用になっていく。そうイメージすると、最初に運送費をまるごと資産に含めた理由が、よりしっくりきませんか?

3. 修繕と改良(直すのか・パワーアップさせるのか)

長く使っていれば、どうしてもガタが来ますし、もっと使いやすくしたいと思う日も来ます。途中でオーブンにさらにお金をかけるとき、簿記の世界ではその目的によって【2つの全く違う考え方】にキッパリと分かれます。

🪛 修繕(マイナスをゼロに戻す)

しばらくして、オーブンの扉が壊れました。あなたは慌てて業者を呼び、元通りに閉まるように直してもらいました。
これは、壊れてマイナスになった状態を「元の状態に戻しただけ」です。買った時よりオーブンが凄くなったわけではありません。
そのため、かかったお金はその年の費用(修繕費)として処理して終わらせます。

✨ 改良(ゼロからプラスへ進化させる)

ある日、あなたはオーブンに「焼きムラを防ぐ高性能センサー」を新しく後付けしました。今度は、焼きムラを防ぐ高性能センサーを取り付けました。前よりたくさん、しかもきれいに焼けるようになりました。
今回は、壊れた所を直したのではなく、オーブンの性能を上げています。前より多く、しかもきれいに焼けるようになった効果は、この先も続きます。つまり、オーブン自体の価値が高くなったので、その分は固定資産に加算します。

4. 手放す(売却・除却)

いよいよお別れのときです。手放すときも2つの道があります。

1つ目は、まだ使えるので中古業者に売って少しのお金をもらう売却
2つ目は、完全に壊れてしまいお金にならずに捨てる除却です。

どちらの場合も、「いま現在のオーブンの価値」「手元に入ってきたお金」を比べて、最終的に得をしたのか損をしたのかを計算して、物語は終わります。

※売却の場合はもらった代金と比べますが、除却の場合は「手元に入ってくるお金が0円」として比べるため、いま現在のオーブンの価値が丸ごとそのまま損になります。

全体のイメージがつかめたでしょうか?
ここからは、それぞれの場面でどのように帳簿へ記録(仕訳)していくのか、詳細を順番に見ていきましょう。
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全体像(俯瞰図・構造マップ)

頻出パターン早見表

パターン 仕訳 POINT
固定資産を取得
XXX取得原価
XXX取得原価
取得原価 = 購入代価 + 付随費用
※付随費用:固定資産を使える状態にするまでにかかったお金
修理した
XXX支出額
XXX支出額
壊れた箇所を元の状態に戻しただけなら、その年の費用(修繕費)にする。
改良した
XXX支出額
XXX支出額
価値や性能がアップし、将来も効果が続くなら、資産の金額に直接プラスする。
売却した(直接法・売却損)
XXX売却代金
XXX差額(損)
XXX帳簿価額
売却損益は「売却代金」と「帳簿価額」の差額で決まる。直接法は、固定資産勘定の数字がそのまま「帳簿価額」になっている。
売却した(直接法・売却益)
XXX売却代金
XXX帳簿価額
XXX差額(得)
売却損益は「売却代金」と「帳簿価額」の差額で決まる。直接法は、固定資産勘定の数字がそのまま「帳簿価額」になっている。
売却した(間接法・売却損)
XXX累計額
XXX売却代金
XXX差額(損)
XXX取得原価
買った値段(取得原価)とマイナス記録(累計額)をセットで消去することで、実質的に「帳簿価額」を消している。
売却した(間接法・売却益)
XXX累計額
XXX売却代金
XXX取得原価
XXX差額(得)
買った値段(取得原価)とマイナス記録(累計額)をセットで消去することで、実質的に「帳簿価額」を消している。
除却した(間接法)
XXX累計額
XXX差額(帳簿価額)
XXX取得原価
XXX廃棄費用
お金は入らないので、手放す時点の「帳簿価額」が丸ごと損になる。
※捨てるための廃棄費用がかかった場合は、それも除却損に合算する。

t字勘定紹介

固定資産(資産)
取得・改良
売却・除却
修繕費(費用)
修理で発生
取り消し
固定資産売却損(費用)
損の発生
取り消し
固定資産売却益(収益)
取り消し
益の発生
減価償却費(費用)
費用の発生
取り消し
減価償却累計額(評価勘定)
取り崩す・消す
増える・たまる
無料プレビューはここまで

固定資産の取得・処分・除却・修繕と改良の続きは会員ページで学べます

この先では、例題・判断手順・演習を使って理解を完成させます。

  • Step 1:言葉の定義
  • Step 2:取得 ― 「使える状態にするまで」をまとめて資産にする
  • Step 3:修繕と改良 ― 「元に戻す」のか、「前より良くする」のか
  • Step 4:売却①
  • Step 5:除却①
  • その他の演習・確認問題