🏭
固定資産の取得・処分・除却・修繕と改良
重要度:★★★★▼
固定資産の取得・処分・除却・修繕と改良
この単元でできるようになることは、固定資産について「買ったら資産にする・直すだけなら費用にする・価値を上げたら資産に足す・手放すときは帳簿価額を消して差額を損益にする」という一連の仕訳を、自力で組み立てられるようになることです。
1
導入(フック & Why)
▼
簿記の学習へようこそ。この章では「固定資産」について学びます。固定資産のルールや勘定科目をいきなり暗記する前に、まずはあなたが「小さなパン屋さんを開く」ところを想像してみてください。
開店初日。あなたは美味しいパンを焼くために、立派なオーブンを買いました。このオーブンは、今日1日だけ使って捨ててしまうものではありません。明日も、来月も、来年も、あなたの店でパンを焼き続けてくれる大切な「長年の相棒」です。
簿記では、このように会社が営業のために1年以上にわたって長く使う財産のことを「固定資産」と呼びます。
(※販売用に仕入れた小麦粉などは「商品」、長く使うオーブンやレジは「固定資産」です)
固定資産の勘定科目には、主に次のようなものがあります。
- 建物(店舗や倉庫)
- 土地(お店の敷地や駐車場)
- 車両運搬具(配達用の車)
- 備品(オーブン、レジ、パソコン、机など)
固定資産の「4つのライフステージ」
固定資産の学習は、このオーブンの「一生」を帳簿に記録していく作業です。流れはたったの4つしかありません。この順番通りに学べば、絶対に迷子になりません。
- 買う(取得):お店にオーブンがやってきた!
- 使う(減価償却):使えば使うほど、オーブンの価値は減っていく。
- 修繕・改良:壊れたから直す? それともパワーアップさせる?
- 手放す(売却・除却):お別れのとき。売るか、捨てるか。
それでは、この4つの場面を一つの物語として一気に追いかけてみましょう。
長く使う財産を会社に迎え入れます。このとき、オーブン本体の値段だけでなく、お店に運んでもらうための費用などもすべて含めて計算します。
ここで「なんで運送費もオーブンの値段に含めるの? その日の費用にして消しちゃダメなの?」と思うかもしれません。
想像してみてください。お店の外の道路にポンと置かれたままのオーブンでは、パンは焼けませんよね。お店の中に運び込むための「運送費(引取運賃)」や、厨房で安全に使えるように業者さんに設置・固定してもらう「据付費(すえつけひ)」、あるいは買うときにかかった「購入手数料」などを払って、「よし、これでパンが焼けるぞ!」という状態になって初めて、オーブンとしての本当の価値を発揮します。
だから、「お店で使える状態」になるまでにかかったお金(これらを付随費用と呼びます)はすべて、「パンを焼くための財産を手に入れるために、絶対に欠かせなかったコスト」としてひとまとめにし、会社の「資産」として帳簿に記録するのです。
オーブンのおかげで毎日売上が上がります。しかし、2年、3年と使い続けるうちに少しずつ古くなり、買ったばかりの新品の時と同じ価値はもうありません。そこで、使って古くなった分の価値を、毎年少しずつ「費用」として記録していきます。
ここで「なんで買った時に、一気に全額を費用にしないの?」と疑問に思うかもしれません。
もし買った年に全額を費用にしてしまうと、1年目だけが「費用の負担が大きすぎて大赤字」に見えてしまいます。オーブンは来年も再来年もがんばってパンを焼いて「売上」を作ってくれるのに、1年目だけに費用の負担をすべて押し付けるのは不公平ですよね。
だから、「売上を作って活躍してくれた期間」に歩幅を合わせて、使って古くなった分の価値を毎年少しずつ「費用」に振り分けていくのです。これを減価償却と呼びます。
ここで、第1ステージの話を思い出してみてください。オーブンを「使える状態にするための付随費用(運送費や据付費など)」も、一緒に「資産」にまとめましたよね。
実は、これらの付随費用も、減価償却によってオーブン本体とまったく同じように、少しずつ費用に変わっていきます。オーブン本体の値段と付随費用をひとまとめにして「資産」の金額にしているため、本体と一緒に「売上を作って活躍してくれた期間」にわたって分割して費用化されるのです。
本体だけでなく、運ぶためにかかったお金も設置費用も、すべてひっくるめて「長年の相棒」としてパン屋さんの売上に貢献し、一緒に少しずつ費用になっていく。そうイメージすると、最初に運送費をまるごと資産に含めた理由が、よりしっくりきませんか?
長く使っていれば、どうしてもガタが来ますし、もっと使いやすくしたいと思う日も来ます。途中でオーブンにさらにお金をかけるとき、簿記の世界ではその目的によって【2つの全く違う考え方】にキッパリと分かれます。
しばらくして、オーブンの扉が壊れました。あなたは慌てて業者を呼び、元通りに閉まるように直してもらいました。
これは、壊れてマイナスになった状態を「元の状態に戻しただけ」です。買った時よりオーブンが凄くなったわけではありません。
そのため、かかったお金はその年の費用(修繕費)として処理して終わらせます。
ある日、あなたはオーブンに「焼きムラを防ぐ高性能センサー」を新しく後付けしました。今度は、焼きムラを防ぐ高性能センサーを取り付けました。前よりたくさん、しかもきれいに焼けるようになりました。
今回は、壊れた所を直したのではなく、オーブンの性能を上げています。前より多く、しかもきれいに焼けるようになった効果は、この先も続きます。つまり、オーブン自体の価値が高くなったので、その分は固定資産に加算します。
いよいよお別れのときです。手放すときも2つの道があります。
1つ目は、まだ使えるので中古業者に売って少しのお金をもらう売却。
2つ目は、完全に壊れてしまいお金にならずに捨てる除却です。
どちらの場合も、「いま現在のオーブンの価値」と「手元に入ってきたお金」を比べて、最終的に得をしたのか損をしたのかを計算して、物語は終わります。
※売却の場合はもらった代金と比べますが、除却の場合は「手元に入ってくるお金が0円」として比べるため、いま現在のオーブンの価値が丸ごとそのまま損になります。
ここからは、それぞれの場面でどのように帳簿へ記録(仕訳)していくのか、詳細を順番に見ていきましょう。
2
全体像(俯瞰図・構造マップ)
▼
頻出パターン早見表
| パターン | 仕訳 | POINT |
|---|---|---|
| 固定資産を取得 |
固定資産資産 XXX取得原価 現金等資産の減少等 XXX取得原価 |
取得原価 = 購入代価 + 付随費用 ※付随費用:固定資産を使える状態にするまでにかかったお金 |
| 修理した |
修繕費費用 XXX支出額 現金等資産の減少等 XXX支出額 |
壊れた箇所を元の状態に戻しただけなら、その年の費用(修繕費)にする。 |
| 改良した |
固定資産資産 XXX支出額 現金等資産の減少等 XXX支出額 |
価値や性能がアップし、将来も効果が続くなら、資産の金額に直接プラスする。 |
| 売却した(直接法・売却損) |
現金等資産 XXX売却代金 固定資産売却損費用 XXX差額(損) 固定資産資産 XXX帳簿価額 |
売却損益は「売却代金」と「帳簿価額」の差額で決まる。直接法は、固定資産勘定の数字がそのまま「帳簿価額」になっている。 |
| 売却した(直接法・売却益) |
現金等資産 XXX売却代金 固定資産資産 XXX帳簿価額 固定資産売却益収益 XXX差額(得) |
売却損益は「売却代金」と「帳簿価額」の差額で決まる。直接法は、固定資産勘定の数字がそのまま「帳簿価額」になっている。 |
| 売却した(間接法・売却損) |
減価償却累計額評価勘定 XXX累計額 現金等資産 XXX売却代金 固定資産売却損費用 XXX差額(損) 固定資産資産 XXX取得原価 |
買った値段(取得原価)とマイナス記録(累計額)をセットで消去することで、実質的に「帳簿価額」を消している。 |
| 売却した(間接法・売却益) |
減価償却累計額評価勘定 XXX累計額 現金等資産 XXX売却代金 固定資産資産 XXX取得原価 固定資産売却益収益 XXX差額(得) |
買った値段(取得原価)とマイナス記録(累計額)をセットで消去することで、実質的に「帳簿価額」を消している。 |
| 除却した(間接法) |
減価償却累計額評価勘定 XXX累計額 固定資産除却損費用 XXX差額(帳簿価額) 固定資産資産 XXX取得原価 現金等資産の減少等 XXX廃棄費用 |
お金は入らないので、手放す時点の「帳簿価額」が丸ごと損になる。 ※捨てるための廃棄費用がかかった場合は、それも除却損に合算する。 |
t字勘定紹介
固定資産の取得・処分・除却・修繕と改良の続きは会員ページで学べます
この先では、例題・判断手順・演習を使って理解を完成させます。
- Step 1:言葉の定義
- Step 2:取得 ― 「使える状態にするまで」をまとめて資産にする
- Step 3:修繕と改良 ― 「元に戻す」のか、「前より良くする」のか
- Step 4:売却①
- Step 5:除却①
- その他の演習・確認問題
3
Step 1:言葉の定義
▼
1 固定資産の意義と勘定
固定資産とは、会社が営業のために、長く使う目的で持っている資産です。3級の有形固定資産では、建物・備品・車両運搬具などが典型です。
2 固定資産の勘定科目の例
3級でよく見る固定資産の勘定科目は、次のようなものです。名前だけで覚えるのではなく、どんなものを入れる勘定かまでセットで押さえると迷いにくくなります。
| 勘定科目 | どんな資産か | 使う場面 |
|---|---|---|
| 建物 | 店舗、事務所、倉庫などの建物本体 | 会社が営業や事務のために建物を所有して使うとき |
| 土地 | 店舗用地、駐車場用地、工場用地など | 会社が事業のために土地を購入して使うとき |
| 車両運搬具 | 営業車、配送車、トラックなどの車両 | 配達、営業、運搬のために車を使うとき |
| 備品 | 机、椅子、パソコン、レジ、エアコンなど | 事務や店舗運営で使う器具・設備を持つとき |
| 機械装置 | 製造機械、加工機械などの設備 | 製品を作る、加工するための機械を使うとき |
| 構築物 | 駐車場の舗装、塀、看板、外構設備など | 建物本体ではないが、長く使う構造物を設置したとき |
4
Step 2:取得 ― 「使える状態にするまで」をまとめて資産にする
▼
オーブンを300,000円で買いました。しかし、お店に届けてもらうための「引取運賃」が20,000円かかりました。
さて、このオーブンの金額(取得原価)はいくらで帳簿に記録するべきでしょうか?
答えは、320,000円です。
お店の外にオーブンがポンと置かれていても、パンは焼けません。お店の中に運び込み、設置して「よし、これでパンが焼けるぞ!」という状態になって初めて価値を発揮します。
そのため、本体の代金だけでなく、使える状態にするまでにかかった費用(付随費用)をすべて合算して固定資産の金額とします。
1 取得原価の算定
固定資産を取得したときは、本体の代金だけでなく、使える状態になるまでにかかった支出もまとめて取得原価で考えます。
図解:購入してから使える状態になるまでの支出を、固定資産の取得原価にする
2 仕訳紹介
固定資産を取得したときの仕訳は以下の通りです。
借方(左側)は、資産の増加です。固定資産という「資産」が増えたので、資産のホームポジションである借方に記入します。
なお、勘定科目は「固定資産」とするのではなく、建物・備品・車両運搬具など、買ったものに合わせた具体的な勘定科目を使います。
貸方(右側)は、資産の減少、または負債の増加です。その財産を手に入れるために、どのように代金を決済したかを記入します。
現金や当座預金で支払った場合は「資産」が減るので貸方に、後払いにした場合は「未払金」という「負債」が増えるので貸方に記入します。
ここで初学者がいちばん迷いやすいのが、「後払いなら買掛金では?」という点です。
買掛金:本業の「商品」を仕入れたときのツケです。あとで払う約束で商品を買ったときに使います。
未払金:商品「以外」をあとで払う約束で買ったときに使います。
固定資産(備品、車、機械など)は「商品」ではなく、会社で長く使うための道具です。だから、固定資産を後払いで買ったときは、買掛金ではなく未払金を使います。
3 例題
パン屋で使うオーブンを300,000円で購入し、運送費20,000円とともに現金で支払った。
お店にオーブンを運び込み、パンが焼ける状態にするためにかかった運送費(20,000円)は、オーブン本体(300,000円)と一緒に取得原価に含めます。
借方(左側):オーブンは長く使うものなので、固定資産(資産)の増加です。資産のホームポジションである借方(左側)に、具体的な勘定科目「備品」として320,000円を記入します。ここで「運送費は費用だから、借方に『支払運賃 20,000』と書くのかな?」と迷ってはいけません。すべてひっくるめて備品の金額にします。
貸方(右側):代金を現金で支払ったため、現金(資産)の減少です。資産のホームポジションの反対である貸方(右側)に、「現金」として320,000円を記入します。
5
Step 3:修繕と改良 ― 「元に戻す」のか、「前より良くする」のか
▼
冒頭の物語で、長く使うオーブンのお手入れには「直す」と「パワーアップさせる」の2つの道があることをお話ししましたね。まずは、具体的な金額を当てはめてあのストーリーを振り返ってみましょう。
扉の修理に30,000円支払った
壊れて熱が逃げる扉を、元通りに直してもらいました。これはマイナスをゼロに戻しただけです。そのため、かかった30,000円は今年の費用として処理して終わらせます。
高性能センサーを120,000円で追加した
たくさんのパンが綺麗に焼けるように、新しい機能を追加しました。これはゼロからプラスへ進化させた状態です。そのため、かかった120,000円は費用にせず、オーブンという「資産」の価値に直接上乗せします。
このように、同じ「固定資産にお金をかけた」という状況でも、目的によって処理が全く異なります。
1 修繕と改良
物語のイメージをつかんだところで、これを簿記の正式なルールとして整理しましょう。固定資産に対する支出は、以下の2つに分類して記帳します。
意味:壊れた箇所の「原状回復(元に戻すこと)」や、通常の「維持管理」のための支出です。
処理:新たな価値を付け加えたわけではないため、全額をその年の費用として「修繕費(費用)」で処理します。
意味:固定資産の「価値を高める」ための支出や、「寿命(耐用年数)を延ばす」ための支出です。
処理:パワーアップした効果が将来にわたって会社の売上に貢献するため、費用にはせず、「固定資産(建物や備品など)」の金額に加算(資産の増加)します。
直しただけか? → 元に戻しただけなら「修繕費(費用)」
前より良くなったか? → 価値や寿命がアップしたなら「固定資産(資産)に加算」
2 修繕 仕訳紹介
修繕は、壊れた固定資産を元の状態に戻しただけの支出です。新しい価値は増えていないので、費用で処理します。
借方(左側):費用の発生
「直したけれど、前より良くなったわけではない」と読めるときは、費用のホームポジションである借方(左側)に「修繕費」と記入します。資産には足しません。
貸方(右側):資産の減少など
代金を支払った手段(現金、当座預金、未払金など)を記入します。
3 改良 仕訳紹介
改良は、固定資産を前より良い状態にする支出です。価値や性能が上がり、その効果がこの先も続くので、固定資産に加算します。
借方(左側):資産の増加
「前より良くなり、その効果が将来も続く」と読めるときは、資産のホームポジションである借方(左側)に、パワーアップさせた固定資産の勘定科目(建物を良くしたなら建物、備品を良くしたなら備品)を記入し、資産の価値に加算します。
貸方(右側):資産の減少など
代金を支払った手段を記入します。
4 例題
次の3パターンを見比べると、修繕と改良の見分け方が安定します。
1 修繕
車両の故障したライトを交換し、30,000円を現金で支払った。
仕訳の考え方
借方(左側): ライトが故障していたので、交換して「元の状態に戻しただけ(マイナスをゼロに戻した)」です。新しい価値を足したわけではないので、費用の発生として借方(左側)に「修繕費」と記入します。
貸方(右側): 代金を現金で支払ったため、資産の減少として貸方(右側)に「現金」と記入します。
2 改良
店舗の建物に新しい設備を付け、以前より多くのパンを焼けるようにした。代金120,000円を現金で支払った。
仕訳の考え方
借方(左側): これは壊れたところを直したのではなく、新しい設備をつけて「前より多く焼けるようにした(ゼロからプラスへ進化させた)」支出です。建物の価値や機能が上がったので、単なる費用にはせず、資産の増加として借方(左側)の「建物」に加算します。
貸方(右側): 代金を現金で支払ったため、資産の減少として貸方(右側)に「現金」と記入します。
3 修繕と改良が混ざっているとき
店舗の改装を行い、総額600,000円を現金で支払った。
このうち200,000円は古くなった壁の塗り直し、残り400,000円は新しい設備の追加であった。
①金額の計算
元に戻した部分(修繕)200,000円 + 前より良くした部分(改良)400,000円 = 総額 600,000円
②仕訳の考え方
1つの大きな支出であっても、中身を分けて考えるのが最大のポイントです。
借方(左側):
古くなった壁の塗り直しは「元に戻した部分」なので、費用の発生として200,000円を「修繕費」にします。
一方、新しい設備の追加は「前より良くした部分」なので、資産の増加として400,000円を「建物」に分けて加算します。
貸方(右側): 支払った総額である600,000円を「現金」の減少として記入します。
6
Step 4:売却①
▼
いよいよ、長年がんばってくれたオーブンとお別れする日が来ました。手放すときも「売る」か「捨てる」かの2つの道がありましたね。具体的な数字で振り返ってみましょう。
たとえば、帳簿に「320,000円」として記録されているオーブンを手放すとします。
中古業者に 350,000円 で売った(売却)
帳簿上320,000円のものを350,000円で売れたので、30,000円の「得」をしました。
完全に壊れてしまったので捨てた(除却)
お金は1円も入ってきません。そのため、帳簿に記録されている320,000円が丸ごとそのまま「損」になります。もし捨てるのにお金(廃棄費用)がかかったら、その分さらに損が増えます。
1 売却の意義
固定資産を売却するとは、会社で使っていた道具や建物を、お金に換えて手放すことです。
パン屋さんのオーブンなら、「もう使わないから中古で売る」という場面です。
売却では、入ってきたお金と帳簿から消す固定資産を比べます。その差額が損益となります。
具体的には、受け取ったお金のほうが大きければ固定資産売却益、足りなければ固定資産売却損となります。
2 売却の仕訳紹介
受け取ったお金のほうが大きいので、余った分を固定資産売却益にします。
受け取ったお金だけでは足りないので、不足分を固定資産売却損にします。
3 例題
1 例題1:売却益が出るとき
帳簿価格300,000円の備品を、330,000円で現金売却した。
貸方(右側): 備品を手放したので、資産の減少として「備品 300,000」と記入し、帳簿から消し去ります。
借方(左側): 代金を受け取ったので、資産の増加として「現金 330,000」と記入します。
差額の処理: 帳簿から消した備品(30万円)よりも、入ってきた現金(33万円)のほうが大きいです。この余った30,000円を、収益の発生として貸方(右側)に「固定資産売却益」と記入します。
2 例題2:売却損が出るとき
帳簿価格300,000円の備品を、270,000円で現金売却した。
貸方(右側): 備品を手放したので、資産の減少として「備品 300,000」と記入し、帳簿から消し去ります。
借方(左側): 代金を受け取ったので、資産の増加として「現金 270,000」と記入します。
差額の処理: 備品(30万円)を消すのに、入ってきた現金(27万円)だけでは足りません。この足りない30,000円を、費用の発生として借方(左側)に「固定資産売却損」と記入します。
7
Step 5:除却①
▼
1 除却の意義
固定資産の除却とは、売るのではなく、捨てる・廃棄する・取り壊すことです。
たとえば、古いオーブンがもう使えず、値段もつかないので処分する場面です。
除却では、お金が入ってきません。
だから、帳簿から消す固定資産の帳簿価格は、そのまま固定資産除却損になります。
さらに処分のためにお金を払ったなら、その分も損に足します。
2 除却の仕訳紹介
代金が入らないので、帳簿価格をそのまま固定資産除却損にします。
処分のために払ったお金も、固定資産除却損にまとめて入れます。
売却と違って、代金が入らないのが除却です。
だから、「消える固定資産」と「そのために払ったお金」は、まとめて固定資産除却損で受け止めます。
3 例題
1 例題1:廃棄するだけのとき
帳簿価格400,000円の機械を廃棄した。
貸方(右側): 機械を手放した(捨てた)ので、資産の減少として「機械 400,000」と記入し、帳簿から消し去ります。
借方(左側): 売却のときとは違い、お金は入ってきません。そのため、丸ごとなくなった機械の価値を、そのまま費用の発生として「固定資産除却損 400,000」と記入します。
2 例題2:廃棄費用もかかるとき
帳簿価格500,000円の備品を廃棄し、処分のための費用10,000円を現金で支払った。
+処分費用
貸方(右側): 備品を手放したので、資産の減少として「備品 500,000」と記入します。さらに、処分費用を現金で支払ったので、こちらも資産の減少として「現金 10,000」と縦に並べて記入します。
借方(左側): なくなった備品の価値(50万円)と、支払った処分費用(1万円)の合計額を、費用の発生として「固定資産除却損 510,000」とまとめて記入します。「消える固定資産」と「そのために払ったお金」は、ひとつの大きな損として受け止めるのがポイントです。
8
Step 6:売却②/除却②(減価償却している有形固定資産の売却、除却)
▼
ここは、減価償却を学んだあとに戻ってきてほしい場所です。
売却①・除却①では、まだ減価償却を考えませんでした。
今度は減価償却をしている有形固定資産の売却・除却について考えていきます。
試験では主にこちらを問われることが多いので、しっかりマスターしていきましょう。
いよいよ、長年がんばってくれたオーブンとお別れする日が来ました。手放すときも「売る」か「捨てる」かの2つの道がありましたね。具体的な数字で振り返ってみましょう。
たとえば、取得原価320,000円のオーブンを数年使い、減価償却累計額が220,000円になっていたとします。このとき、オーブンの「いまの価値(帳簿価額)」は 100,000円 です。
中古業者に 120,000円 で売った(売却)
100,000円の価値のものを120,000円で売れたので、20,000円の「得」をしました。
完全に壊れてしまったので捨てた(除却)
お金は1円も入ってきません。そのため、いまの価値である100,000円が丸ごとそのまま「損」になります。もし捨てるのにお金(廃棄費用)がかかったら、その分さらに損が増えます。
1 帳簿価額(帳簿価格)
手放すときの計算で絶対に欠かせないのが「帳簿価額(ちょうぼかがく)」です。
固定資産は、買った年にいきなり全額を費用にするのではなく、減価償却によって毎年少しずつ費用にしていきます。つまり、買ったときの総額のうち、まだ費用になっていない残り(まだ使い終わっていない価値)が帳簿価額です。
つまり帳簿価額は「いま現在の価値」である。ということです。
売却損益を出すときは、売却価格と帳簿価額を比べて損益を出します。
売却損益を出すときに、なんで『買ったときの値段(取得原価)』ではなく『いまの価値(帳簿価額)』と比べるの?と疑問に思った人もいるかもしれません。
例:取得原価600,000円、減価償却累計額200,000円なら、帳簿価額は400,000円です。
買ったときは600,000円だったオーブンも、すでに数年間パンを焼いて売上を作ってくれました。その「すでに役立った分(たとえば200,000円)」は過去に使い終わった部分です。だから手放す日に見るべきなのは、最初の600,000円ではなく「いま会社にいくら分の価値が残っているか(400,000円)」なのです。手放すときは、常にこの帳簿価額と勝負します。
パン屋さんのオーブンで、流れをそのまま追ってみましょう。
1つの例を最後まで見ると、帳簿価額と売却の関係がかなり見えやすくなります。
オーブンを600,000円で買いました。
この時点では、まだ使っていないので、600,000円全部が会社に残っている価値です。
したがって、買った直後の帳簿価額は600,000円です。
毎年100,000円ずつ減価償却すると、2年で200,000円は「使った分」として費用になります。
すると、600,000円のうち、もう使い終わったのは200,000円。
つまり現在の価値(帳簿価額)は400,000円ということになります。
ここでオーブンを450,000円で売ったとします。
現在の価値(帳簿価額)は400,000円なので、400,000円のものを450,000円で手放したことになります。
したがって差額の50,000円は、固定資産売却益です。
売却損益は、いつでも売却代金と帳簿価額の差額で決まります。
見るべき数字は、この2つだけです。
- 売却代金 > 帳簿価額 → 固定資産売却益
- 売却代金 < 帳簿価額 → 固定資産売却損
- 売却代金 = 帳簿価額 → 売却損益は出ない
たとえば、いまの価値(帳簿価額)が「400,000円」のオーブンを売るとします。
- 450,000円で売れたら? 400,000円の価値のものを450,000円で売れたので、50,000円の得(固定資産売却益)です。
- 380,000円でしか売れなかったら? 400,000円の価値のものなのに380,000円しか手に入らなかったので、20,000円の損(固定資産売却損)です。
このように整理すると、「なんだ、結局はいまの価値より高く売れたか安く売れたかを見ればいいだけか!」とイメージが湧きやすくなります。
直接法と間接法の違い
固定資産の価値の減らし方(減価償却)には、「直接法」と「間接法」という2つの記帳ルールがあります。どちらを使っても「いまの価値(帳簿価額)は全く同じ」になりますが、帳簿上での「見え方」が違います。
| 方法 | 考え方 | 減価償却の仕訳 | 固定資産の見え方 | 帳簿価格 |
|---|---|---|---|---|
| 直接法 |
固定資産そのものの金額を、毎年少しずつ減らしていく考え方です。 今いくら残っているかは見やすい一方で、最初にいくらで買ったかは残高だけでは分かりにくくなります。 |
減価償却費費用
XXX
固定資産資産
XXX
|
減価償却をするたびに、固定資産勘定そのものが少しずつ減っていきます。だから、帳簿に出ている固定資産の金額が、そのまま今の残りです。 | 固定資産勘定の残高が帳簿価格そのものを表します。 |
| 間接法 |
固定資産は買ったときの金額のまま残し、減った分だけを別の勘定にためていく考え方です。 取得原価とどれだけ費用にしたかを分けて確認できます。 |
減価償却費費用
XXX
減価償却累計額評価勘定
XXX
|
固定資産は買ったときの金額のまま残し、減った分だけを減価償却累計額という別の勘定にためていきます。 | 取得原価 − 減価償却累計額で、帳簿価格を出します。 |
例として、建物を600,000円で取得し、毎年100,000円ずつ減価償却するとします。
どちらの方法でも帳簿価額は同じように減っていきますが、どの勘定の数字が動くかが違います。
直接法
| 時点 | 建物勘定 | 減価償却累計額 | 帳簿価格 |
|---|---|---|---|
| 購入時 | 600,000 | 使わない | 600,000 |
| 1年目末 | 500,000 | 使わない | 500,000 |
| 2年目末 | 400,000 | 使わない | 400,000 |
| 3年目末 | 300,000 | 使わない | 300,000 |
直接法では、仕訳の右側(貸方)に注目してください。「建物」そのものを直接減らしています。
そのため、建物勘定そのものが 600,000 → 500,000 → 400,000 → 300,000 と減っていきます。
つまり、建物勘定そのものが帳簿価格(現在の価値)を表しています。だから、建物勘定の残高を見れば、そのまま今の価値(帳簿価格)がわかります。
ただし、これだと建物の金額自体が小さくなってしまうので、「元々はいくらの値段だったのか(取得原価)」が完全に隠れてしまうのが弱点です。
間接法
| 時点 | 建物勘定 | 減価償却累計額 | 帳簿価格 |
|---|---|---|---|
| 購入時 | 600,000 | 0 | 600,000 |
| 1年目末 | 600,000 | 100,000 | 500,000 |
| 2年目末 | 600,000 | 200,000 | 400,000 |
| 3年目末 | 600,000 | 300,000 | 300,000 |
間接法では、仕訳の右側(貸方)で「建物」の金額を直接減らしません。その代わりに、「減価償却累計額」というマイナス専用の貯金箱に、古くなった分の数字をどんどん溜めていきます。
そのため、建物勘定の数字はずっと「600,000円」のままで変わりません。その横で、減価償却累計額が 0円 → 100,000円 → 200,000円 → 300,000円 と年々増えていくのです。
つまり、3年目末の帳簿(貸借対照表)を見ると、次のような2つの情報が同時にパッと読み取れるようになります。
「600,000円で買った建物だけど(取得原価)、もう300,000円分も使い古したんだな(減価償却累計額)」
今の価値(帳簿価額)を知りたければ、帳簿に並んだこの2つの数字を見て、頭の中で「600,000 - 300,000 = 300,000円」と引き算をすれば良いだけです。
間接法なら、「元々の値段(取得原価)」も「これまでどれだけ使ってきたか(累計額)」も両方きれいに残るため、会社の財産の歴史が誰から見ても一目で分かりやすくなるのです。
ここから、いよいよ固定資産を「手放す(売却・除却)」ときの具体的な仕訳を見ていきます。
その前に、初学者の皆さんにどうしても知っておいてほしい、大切な「お守り」のようなルールがあります。それは、直接法であっても、間接法であっても、売却・除却の基本的な考え方は1ミリも変わらないということです。
どちらの方法を使っても、手放すときの損得(売却損益)は、いつでも次のシンプルな引き算で決まります。
「じゃあ、何が違うの?」というと、帳簿の記録の仕方が違うので、手放すときの仕訳の『見た目』が少し変化するだけです。
いまの価値(帳簿価額)が固定資産の勘定科目にダイレクトに表示されているので、その固定資産をそのまま帳簿から消し去るだけの、非常にシンプルな仕訳になります。
固定資産が「買ったときの値段」のまま残っており、さらに「マイナス専用の貯金箱(減価償却累計額)」も別で残っています。そのため、手放すときは「固定資産」と「減価償却累計額」の2つをセットで帳簿から消し去る必要があります。そのため、少しだけ仕訳に登場する勘定科目が多くなります。
言葉だけで見ると難しく感じるかもしれませんが、本質はどちらも「いままでお世話になった固定資産の記録を、きれいに帳簿からクリアにする」という意味で、まったく同じことをしています。
それでは、この「見た目の違い」が仕訳にどう現れるのか、具体的なパターンに分けて詳しく見ていきましょう!
2 売却の仕訳紹介
売却の仕訳では、まず帳簿価額(いまの価値)をつかみ、それを売却代金と比べます。
「直接法」と「間接法」では、帳簿からの固定資産の消し方(見え方)が違うため、仕訳の形が少し変わります。
固定資産の勘定科目の数字がそのまま「いまの価値(帳簿価額)」になっているので、それをダイレクトに消去します。
固定資産が「買ったときの値段(取得原価)」のまま残っているので、いままで溜めてきた「マイナスの記録(減価償却累計額)」も一緒にセットで消去する必要があります。
3 除却の仕訳紹介
除却では、売却と違ってお金(代金)が1円も入ってきません。そのため、誰かとお金を比べるのではなく、「帳簿に残っていた価値が丸ごとそのまま損(固定資産除却損)になる」という非常にシンプルな性質を持っています。
固定資産勘定の残高が、そのまま帳簿価額です。
除却では代金が入らないので、その帳簿価額がそのまま除却損になります。
間接法では、固定資産は取得原価のままなので、減価償却累計額も一緒に消す必要があります。
結果的に直接法と同じく、帳簿価額が除却損の額となります。
売却と違って、除却では代金が入らないので、誰かと比べて損益を出すわけではありません。
その代わり、残っていた帳簿価額そのものが固定資産除却損になります。
廃棄費用があるときは、その分も固定資産除却損に足して考えます。
4 売却の例題
この4題は、売却益のペアと売却損のペアに分けて読むと、とても理解しやすくなります。
直接法と間接法で違うのは、減価償却した分を固定資産から直接減らしておくか、減価償却累計額として別に持つかという記帳方法だけです。
だから、売る直前の帳簿価額と売却代金が同じなら、出てくる売却益・売却損の金額も同じになります。
これからの4題は、そのことが見えるように、あえて数字をそろえてあります。
1 直接法:売却益
帳簿価額400,000円の備品を、450,000円で現金売却した。
直接法なので、現在の備品勘定の金額は、買ったときの値段ではなく、帳簿価額の400,000円になっています。
400,000円の価値のものを450,000円で売ったので、引き算をして50,000円の得をしたことがわかります。
貸方(右側):
備品を手放したので、資産の減少として貸方に「備品」を記入し、帳簿から消去します。
ここで書く金額は、いま現在の価値(帳簿価額)である400,000円です。直接法は、毎年の減価償却のたびに備品勘定の金額を直接ガリガリと削っていくルールでしたよね。そのため、帳簿に残っている備品勘定の数字自体が、いつでも自動的に「今の価値(帳簿価額)」になっています。したがって、今まで使って減った分がすでに差し引かれている400,000円をそのまま右側に書くだけで、備品の記録をきれいにクリアにすることができます。
借方(左側): 代金を現金で受け取ったので、資産の増加として「現金 450,000」を記入します。
差額の処理: 左右の合計を比べると、借方(左)が45万円、貸方(右)が40万円となり、右側が50,000円足りません。この差額を、収益の発生として貸方に「固定資産売却益」と記入します。
2 間接法:売却益
取得原価600,000円、減価償却累計額200,000円の備品を、450,000円で現金売却した。
間接法では、まず引き算をして「いまの価値(帳簿価額)」を自分でつかみにいきます。
これで、例題1と全く同じ「40万円の備品」だとわかりました。450,000円で売ったので、結果は同じく50,000円の得になります。
上段のセット消去: 間接法なので、備品勘定の数字は削られず、買ったときのままの金額になっています。そのため、まずは「備品 600,000」を貸方に書いて消します。それと同時に、別室に溜まっていたマイナス記録の「減価償却累計額 200,000」を借方に書いて取り消します。
現金の記録: 入ってきたお金を資産の増加として借方に「現金 450,000」と縦に並べて記入します。
差額の処理: 左右の合計を比べると、借方(左)が65万円、貸方(右)が60万円となり、右側が50,000円足りません。この差額を、収益の発生として貸方に「固定資産売却益」と記入します。
今度は、解答の仕訳をそのまま見て、どこで帳簿価額が作られているかを確認します。
間接法では、上段の減価償却累計額と備品をひとまとめで見るのがポイントです。
上で囲んだ部分は、減価償却累計額200,000円と備品600,000円です。
この2つを合わせて見ると、備品600,000円から、すでに使った分200,000円を除いた残りが読めます。
ここをひとまとめに見られれば、あとは帳簿価額400,000円の備品を450,000円で売ったと考えれば大丈夫です。
そうすると、差額50,000円だけ利益が出たという、かなりシンプルな仕訳として読めるようになります。
3 直接法:売却損
帳簿価額400,000円の備品を、300,000円で現金売却した。
直接法なので、現在の備品勘定の金額は、買ったときの値段ではなく、帳簿価額の400,000円になっています。
400,000円の価値のものを300,000円で売ったので、引き算をして100,000円の損をしたことがわかります。
貸方(右側):
備品を手放したので、資産の減少として貸方に「備品」を記入し、帳簿から消去します。
ここで書く金額は、いま現在の価値(帳簿価額)である400,000円です。直接法は、毎年の減価償却のたびに備品勘定の金額を直接ガリガリと削っていくルールでしたよね。そのため、帳簿に残っている備品勘定の数字自体が、いつでも自動的に「今の価値(帳簿価額)」になっています。したがって、今まで使って減った分がすでに差し引かれている400,000円をそのまま右側に書くだけで、備品の記録をきれいにクリアにすることができます。
借方(左側): 代金を現金で受け取ったので、資産の増加として「現金 300,000」を記入します。
差額の処理: 左右の合計を比べると、借方(左)が40万円、貸方(右)が40万円となります。ただし、借方には現金30万円しか入っていないため、残りの100,000円を費用の発生として借方に「固定資産売却損」と記入します。
4 間接法:売却損
取得原価600,000円、減価償却累計額200,000円の備品を、300,000円で売却した。
間接法では、まず引き算をして「いまの価値(帳簿価額)」を自分でつかみにいきます。
これで、例題3と全く同じ「40万円の備品」だとわかりました。300,000円で売ったので、結果は同じく100,000円の損になります。
上段のセット消去: 間接法なので、備品勘定の数字は削られず、買ったときのままの金額になっています。そのため、まずは「備品 600,000」を貸方に書いて消します。それと同時に、別室に溜まっていたマイナス記録の「減価償却累計額 200,000」を借方に書いて取り消します。
現金の記録: 入ってきたお金を資産の増加として借方に「現金 300,000」と縦に並べて記入します。
差額の処理: 左右の合計を比べると、借方(左)が50万円、貸方(右)が60万円となり、左側が100,000円足りません。この差額を、費用の発生として借方に「固定資産売却損」と記入します。
ここでも、解答の仕訳をそのまま見て、どこで帳簿価額が作られているかを確認します。
間接法では、上段の減価償却累計額と備品をひとまとめで見るのがポイントです。
上で囲んだ部分は、減価償却累計額200,000円と備品600,000円です。
この2つを合わせて見ると、備品600,000円から、すでに使った分200,000円を除いた残りが読めます。
ここをひとまとめに見られれば、あとは帳簿価額400,000円の備品を300,000円で売ったと考えれば大丈夫です。
そうすると、差額100,000円だけ損が出たという、かなりシンプルな仕訳として読めるようになります。
5 除却の例題
最初の2題は、直接法と間接法で除却損がどう見えるかを並べたものです。
違うのは、減価償却した分を固定資産から直接減らしておくか、減価償却累計額として別に持つかという記帳方法だけです。
だから、残っている帳簿価額が同じなら、最後に出る固定資産除却損の金額も同じになります。
3題目は、そこに廃棄費用が加わるとどうなるかを見るための問題です。
1 直接法:除却損
帳簿価額60,000円の機械を廃棄した。
直接法なので、現在の機械勘定の金額は、最初から今の価値(帳簿価額)である60,000円になっています。
売るわけではないので入ってくるお金は0円です。したがって、残っていた価値60,000円がそのまま丸ごと会社の損になります。
貸方(右側): 機械を廃棄して手放したので、資産の減少として貸方に「機械」を記入し、帳簿から消去します。金額は、今までの減価償却分が直接差し引かれている今の価値60,000円をそのまま記入します。
借方(左側): お金は1円も入ってこないため、消え去った機械の価値のすべてを、費用の発生として「固定資産除却損 60,000」と記入して受け止めます。
2 間接法:除却損
取得原価400,000円、減価償却累計額340,000円の機械を廃棄した。
間接法では、まず引き算をして「いまの価値(帳簿価額)」を自分でつかみにいきます。
これで、例題1と全く同じ「60,000円の機械」だとわかりました。売るわけではないので入ってくるお金は0円です。したがって、残っていた価値60,000円がそのまま丸ごと会社の損になります。
上段のセット消去: 間接法なので、機械勘定の数字は削られず、買ったときのままの金額になっています。そのため、まずは「機械 400,000」を貸方に書いて消します。それと同時に、別室に溜まっていたマイナス記録の「減価償却累計額 340,000」を借方に書いて取り消します。
除却損の記録: お金は1円も入ってこないため、帳簿に残っていた価値60,000円を、費用の発生として借方に「固定資産除却損 60,000」と記入します。
今度は、解答の仕訳をそのまま見て、どこで帳簿価額が作られているかを確認します。
間接法では、上段の減価償却累計額と機械をひとまとめで見るのがポイントです。
上で囲んだ部分は、減価償却累計額340,000円と機械400,000円です。
この2つを合わせて見ると、機械400,000円から、すでに使った分340,000円を除いた残りが読めます。
ここをひとまとめに見られれば、あとは帳簿価額60,000円の機械をそのまま廃棄したと考えれば大丈夫です。
代金は入らないので、その60,000円がそのまま固定資産除却損になります。
3 間接法:除却損+廃棄費用
取得原価500,000円、減価償却累計額450,000円の備品を廃棄し、廃棄費用10,000円を現金で支払った。
間接法では、まず引き算をして「いまの価値(帳簿価額)」を自分でつかみにいきます。
これで、廃棄する直前の備品は「50,000円の備品」だとわかりました。売るわけではないので入ってくるお金は0円です。さらに廃棄費用10,000円も支払うので、合わせて60,000円の損になります。
上段のセット消去: 間接法なので、備品勘定の数字は削られず、買ったときのままの金額になっています。そのため、まずは「備品 500,000」を貸方に書いて消します。それと同時に、別室に溜まっていたマイナス記録の「減価償却累計額 450,000」を借方に書いて取り消します。
現金の記録: 廃棄するために現金を支払ったので、資産の減少として貸方に「現金 10,000」と記入します。
除却損の記録: 帳簿に残っていた価値50,000円に、廃棄費用10,000円を足した60,000円を、費用の発生として借方に「固定資産除却損 60,000」と記入します。
今度は、解答の仕訳をそのまま見て、どこで帳簿価額が作られているかを確認します。
間接法では、上段の減価償却累計額と備品をひとまとめで見るのがポイントです。
上で囲んだ部分は、減価償却累計額450,000円と備品500,000円です。
この2つを合わせて見ると、備品500,000円から、すでに使った分450,000円を除いた残り50,000円が読めます。
ここをひとまとめに見られれば、まず回収できない帳簿価額は50,000円だと分かります。
除却では代金が入らず、さらに廃棄費用10,000円も払うので、合わせて60,000円の固定資産除却損になります。
6 期中で売却
オーブンを売る日は、ちょうど決算日(1年の区切りの日)とは限りません。むしろ、営業している年の途中(期中)で売ることのほうが多いです。
ここで絶対にやってはいけないのが、いきなり売却の仕訳に入ることです。
最後に決算を行ってから、売却する今日までの数ヶ月間、オーブンは毎日がんばってパンを焼いてお店の売上に貢献してくれましたよね。
ということは、「使った分だけ、さらに価値が減っているはず」です。
前期末のデータのまま計算してしまうと、「今日時点の本当の価値」とズレてしまいます。だから、売る直前に「今年使った分の減価償却費」をきっちり計算して、今日現在の最新の価値(帳簿価額)にアップデートしてあげる必要があるのです。
そのため、期中売却は必ず次の「考える順番(2ステップ)」を守って進めます。
- 減価償却の仕訳を切る。
- 売却の仕訳を切る。
取得原価120,000円、年間減価償却費24,000円の備品がある。前期末の減価償却累計額は48,000円であった。
この備品を当期4月1日から6月30日まで使用し、6月30日に65,000円で現金売却した。間接法で仕訳しなさい。
ここまでの「減価償却の仕訳」と「売却の仕訳」という2つの仕訳は、同じ日(6月30日)に行う処理なので、ガッチャンコと1本にまとめて書くのが試験での一般的な解答になります。
合体させるときは、「減価償却累計額」の相殺(引き算)に注目します。
「1」の仕訳で、右側(貸方)に6,000円記帳した。
「2」の仕訳で、左側(借方)に54,000円記帳した。
左右で同じ科目が登場したときは引き算をします。54,000円から6,000円を引くと、差し引き48,000円が左側に残ります。
この「48,000円」という数字、どこかで見覚えはありませんか?そう、「売る前の、前期末時点の累計額」そのものです!
このように、2本の仕訳をまとめて1本の仕訳として表示することもあります。
ただし、考え方としては、まず売却日までの減価償却を計上する、そのあとで売却の仕訳をする、という2段階で追うほうが分かりやすくて安全です。
4月1日から6月30日までの3ヶ月間、オーブンを働かせました。1年で24,000円価値が減るオーブンなので、3ヶ月分を日割り(月割り)で計算します。
これで、減価償却累計額に6,000円が追加され、減価償却累計額は48,000+6,000=54,000円となりました。
今までと同様に売却の仕訳を切ります。
このときに、減価償却累計額のマイナスする額は、48,000円ではなく、54,000円を使用してください。
ちなみに今までは、先に帳簿価額を計算して、売却損益を出してから仕訳を切ってきました。
実は、わざわざ先に「いまの価値(帳簿価額)」を計算しなくても、分かっている数字からパズルのように仕訳を組み立てていくだけで、自然と「損なのか益なのか」「金額はいくらなのか」を導き出すことができます。
簿記ならではの「貸借差額(たいしゃくさがく)」を使った、とても便利なテクニックを見てみましょう。
まずは、すでに分かっている数字をどんどん仕訳に埋めていきます。
本体を消す: 備品を手放したので、右側(貸方)に「備品 120,000」と取得原価のまま書きます。
累計額を消す: セットだったマイナス記録を左側(借方)に書いて消します。ここで使うのは前期末の48,000円ではなく、当期の6,000円を足した最新の54,000円です。
お金をもらう: 現金が65,000円増えたので、左側(借方)に「現金 65,000」と書きます。
ここまで埋めたら、左右の合計金額を見比べてみましょう。
右側(貸方)の合計:120,000円
左側(借方)の合計:119,000円(54,000円 + 65,000円)
左右のバランスを一致させるためには、左側(借方)にあと1,000円足りませんよね。
この「足りない差額」を埋めるように、損益の勘定科目を書き込みます。
左側(借方)が足りない → 費用の発生なので「固定資産売却損」
右側(貸方)が足りない → 収益の発生なので「固定資産売却益」
今回は左側が1,000円足りないので、左側に「固定資産売却損 1,000」と書き込めば仕訳の完成です!
差額でポンと答えを出しましたが、この仕訳の裏側ではちゃんと理屈が通っています。
本日における最新の帳簿価額(現在の価値)は、「取得原価 120,000円 - 減価償却累計額 54,000円 = 66,000円」だとわかりますよね。
「66,000円の価値があるものを、65,000円で売ったから1,000円損をした」。先ほど出した貸借差額の答えと、理屈がぴったり一致していることが確認できます。
深
深く理解
▼
ここからの4つは、題名ごとに区切ってありますが、それぞれ別々の話ではありません。
固定資産とは何か → なぜ減価償却するのか → なぜ費用と収益を対応させるのか → なぜ改良は資産で修繕は費用なのか、という1本の流れでつながっています。
そのため、ここは前から順に、つなげて読むと理解しやすくなります。
1 固定資産は「将来の売上を支える道具」
パン屋さんのオーブンは、買った年だけ働く道具ではありません。
今年パンを焼くときにも使い、来年も再来年も、そのオーブンでパンを焼いて売上を生み出します。
つまり、オーブンは将来にわたって効果を発現する道具です。
だから、買った瞬間に全額を費用にするのではなく、まずは固定資産として会社に置いておきます。
そして、その後に減価償却によって、少しずつ費用に配分していきます。
固定資産とは、その年だけでなく、将来の営業にも役立つものです。
だから、支出した年に一気に費用にせず、まず資産として持ち、あとで少しずつ費用化します。
2 減価償却は費用を将来に分ける手続き
たとえば、300,000円のオーブンを3年間使うとします。
このとき、買った年に300,000円を全部費用にしてしまうと、1年目だけ費用が重くなりすぎます。
でも実際には、2年目も3年目もそのオーブンでパンを焼いて売上を出しています。
| 年度 | オーブンの働き | 費用として配分される額のイメージ |
|---|---|---|
| 1年目 | パンを焼いて売上を出す | 100,000円 |
| 2年目 | 同じくパンを焼いて売上を出す | 100,000円 |
| 3年目 | 最後まで使って売上を出す | 100,000円 |
このように、固定資産は使って売上に役立った期間に合わせて、費用を少しずつ配るのが自然です。
そのための手続きが、減価償却です。
3 費用と収益の対応
簿記では、その年の収益に役立った費用を、その年の費用として表すことを大切にします。
これが、いわゆる費用と収益の対応です。
オーブンが今年のパンの売上に役立ったなら、今年はその分だけ費用にします。
来年のパンの売上にも役立つなら、来年もその分だけ費用にします。
そうしないと、今年の利益が低すぎたり、来年の利益が高すぎたりして、期間ごとの成績がゆがみます。
1年目の利益が必要以上に小さくなります。
その一方で、2年目・3年目はオーブンを使って売上を出しているのに、対応する費用が少なすぎます。
オーブンが売上に役立った期間に合わせて、費用も配分されます。
その結果、各年の利益が、実際の営業の姿に近づきます。
4 改良が資産になり、修繕が費用になる理由
高性能センサーを付けて、オーブンが前よりたくさん焼けるようになったなら、その効果は今年だけで終わりません。
来年も再来年も、その「良くなったオーブン」で売上を出します。
だから、改良にかかった支出は、その年に全部費用にせず、固定資産の取得原価に加えるのが自然です。
そして、加えた分も、もとのオーブンと同じように、今後の使用期間にわたって減価償却で費用配分していきます。
これで、改良によって増えた価値も、売上に役立った期間に合わせて費用になります。
| 支出の性質 | 将来への効果 | 処理 |
|---|---|---|
| 改良 | 前より良くなった効果が、この先も続く | 固定資産に加算し、将来にわたって費用配分する |
| 修繕 | 元の状態に戻して、その場の営業を支える | その期の費用として処理する |
将来にも効果が続くなら資産、その期で役目が終わるなら費用。
固定資産、改良、修繕の違いは、すべてこの考え方で一本につながります。
9
Step 7:比較で整理
▼
1 修繕と改良
| 見分ける点 | 修繕 | 改良 |
|---|---|---|
| 意味 | 元の状態に戻す | 前より良くする |
| 何が残る? | 新しい価値はほぼ残らない | 価値・性能アップ分が残る |
| 勘定科目 | 修繕費 | 建物・備品などに加算 |
| 判断の軸 | 直しただけか | 前より良くなったか |
2 売却① / 除却① と 売却② / 除却②
| 見分ける点 | 売却① | 除却① | 売却② | 除却② |
|---|---|---|---|---|
| 減価償却を考える? | 考えない | 考えない | 考える | 考える |
| 比べる金額 | 取得原価 | 取得原価 | 帳簿価額 | 帳簿価額 |
| お金は入る? | 入る | 入らない | 入る | 入らない |
| よく出る勘定 | 現金・売却益・売却損 | 除却損 | 現金・減価償却累計額・売却益・売却損 | 減価償却累計額・除却損 |
| 最初に意識すること | 固定資産がなくなり、お金が入る | 固定資産がなくなり、お金は入らない | まず帳簿価額を出す | まず帳簿価額を出す |
3 全体マップ
| 場面 | まず考えること | 主な勘定科目 |
|---|---|---|
| 取得 | 長く使うものか。付随費用は取得原価に入るか。 |
建物・備品・車両運搬具 ××× 現金・未払金など ××× |
| 修繕 | 元の状態に戻しただけか。 |
修繕費 ××× 現金など ××× |
| 改良 | 前より良くなり、その効果が続くか。 |
建物・備品など ××× 現金など ××× |
| 売却 | 代金はいくら入るか。比べる相手は取得原価か帳簿価額か。 |
現金 ××× 減価償却累計額 ××× 固定資産売却損 ××× 固定資産 ××× 固定資産売却益 ××× |
| 除却 | お金は入るか。帳簿価額はいくらか。廃棄費用はあるか。 |
固定資産除却損 ××× 減価償却累計額 ××× 固定資産 ××× 現金 ××× |
10
Step 8:まとめ問題
▼
1 問題
パン屋で使うオーブンについて、次の取引を仕訳しなさい。
- オーブンを500,000円で購入し、運送費20,000円とともに現金で支払った。
- その後、扉の故障を修理し、30,000円を現金で支払った。
- さらに高性能センサーを取り付け、80,000円を現金で支払った。
- 後日、このオーブンを450,000円で現金売却した。売却時の減価償却累計額は200,000円であった。
この1問の中に、取得・修繕・改良・売却②がすべて入っています。
つまり、固定資産の一生をそのままたどる問題です。
2 解答・解説
運送費は、オーブンを使える状態にするための費用なので、備品に含めます。
故障を元に戻しただけなので、修繕費です。
高性能センサーで前より良くなっているので、備品に加算します。
- 売却時の備品の取得原価:520,000 + 80,000 = 600,000
- 帳簿価額:600,000 − 200,000 = 400,000
- 売却代金は450,000円なので、差額50,000円は固定資産売却益