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期末取引:費用収益の繰延・見越し
重要度:★★★★★▼
期末取引:費用収益の繰延・見越し
この単元は、決算のときに「お金の出入り」と「実際のサービス利用期間」のズレを修正し、「来年の分を追い出す(繰延)」または「今年の分を付け足す(見越し)」仕訳が迷わず切れるようになるための単元です。
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1. 導入(フック & Why)
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あなたは11月に、動画配信サービスの「1年分(12ヶ月分)」の料金 12,000円 をドカンと一括で前払いしました。
そして12月末、お店の決算(今年の締め日)を迎えました。
さて、今年の「正しい費用」はいくらでしょうか?
お金は12,000円払いましたが、今年実際にサービスを楽しんだのは、11月と12月の「たった2ヶ月分(2,000円)」だけですよね。
残りの「10ヶ月分(10,000円)」は、今年の費用ではなく、来年楽しむための権利です。
ここが一番大事なポイントです。
簿記の世界では、「お金を払った日(もらった日)」ではなく、「実際にサービスを使った期間(提供した期間)」で今年の費用や収益を計算します。
決算の日に
「ちょっと待て、払ったお金のなかに来年の分が混ざってるぞ!」と今年の成績から追い出したり、
逆に「もう今年の分のサービスを使っているのに、まだ払ってない(帳簿に載ってない)ぞ!」と今年の成績に付け足したり
という、お金と期間のズレを直す「帳尻合わせ」の作業を行います。
これが、この単元で学ぶ「繰延(くりのべ)・見越し(みこし)」の正体です。
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2. 全体像(俯瞰図・構造マップ)
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1 2-1. 構造マップ(地図)
この単元でやることは、ズレの修正だけです。ズレには大きく分けて以下の2つの方向しかありません。専門用語の難しさに騙されないでください。
状況: すでにお金は動いたが、その中に「来年の分」まで含まれている。
処理: 来年の分を今年の成績から「減らす(追い出す)」。
結末: 追い出した分は、来年の権利や義務として「資産・負債」へチェンジして持ち越します。
状況: まだお金は動いていないが、すでに「今年の分」のサービスを使っている(提供している)。
処理: 今年の分を今年の成績へ「増やす(付け足す)」。
結末: 付け足した分は、後で払う義務やもらう権利として「資産・負債」へチェンジして持ち越します。
2 2-2. 頻出パターン早見表(この4つが全て)
| パターン名 | 状況(お金と期間のズレ) | 使う勘定科目(決算時) | 決算整理仕訳の型(最小形) |
|---|---|---|---|
| 費用の繰延(来年へ追い出す) | 払いすぎ(来年の分まで払った) | 前払費用【資産:後でサービスを受ける権利】 |
前払〇〇資産
×××
〇〇費費用
×××
|
| 収益の繰延(来年へ追い出す) | もらいすぎ(来年の分までもらった) | 前受収益【負債:後でサービスを提供する義務】 |
〇〇益収益
×××
前受〇〇負債
×××
|
| 費用の見越し(今年に付け足す) | まだ払ってない(今年の分がすでに発生済) | 未払費用【負債:後でお金を払う義務】 |
〇〇費費用
×××
未払〇〇負債
×××
|
| 収益の見越し(今年に付け足す) | まだもらってない(今年の分がすでに発生済) | 未収収益【資産:後でお金をもらえる権利】 |
未収〇〇資産
×××
〇〇益収益
×××
|
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この先では、例題・判断手順・演習を使って理解を完成させます。
- 本編 Step 0:前提ルール「月割り計算」をマスターする
- 本編 Step 1:会計処理① 繰延(くりのべ)〜来年へパス〜
- 本編 Step 2:会計処理② 見越し(みこし)〜今年へ追加〜
- 本編 Step 3:対比で覚える(全体整理)
- Final Step:まとめ問題(総合チェック)
- その他の演習・確認問題
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本編 Step 0:前提ルール「月割り計算」をマスターする
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繰延・見越しでは、「いくら分ズレているか?」を計算します。簿記3級では基本的に月割りで計算します。
月の計算は頭の中だけでやらず、必ず指を折って数えてください。
(例:8月1日〜12月31日なら、8, 9, 10, 11, 12で「5ヶ月」)
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本編 Step 1:会計処理① 繰延(くりのべ)〜来年へパス〜
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会社の成績表(損益計算書)を作るための絶対ルール、それは「今年の成績には、今年の分しか入れない」ことです。
しかし、保険料や家賃などは「1年分をまとめて払う(もらう)」ことがよくありますよね。もし、そのお金の中に「来年の分」が混ざっていたらどうなるでしょう?今年の費用や収益が大きくなりすぎて、今年の正しい利益がわからなくなってしまいます。
そこで決算の日に、「ごめん、これ来年の分だった!」と来年へパス(繰延)して、今年の費用・収益から追い出す作業が必要になるのです。
Step 2 では、この「来年へ追い出すべき金額」を見つけて、正しく処理する練習をします。
1 2-1. 費用の繰延(前払費用)
1年分の保険料や家賃をまとめて先払いしたが、決算の時点で「まだサービスを受けていない来年の月数分」が含まれている状態。
借方: お金を先払いしたことで「来年、追加でお金を払わずにサービスを受ける権利」を手に入れたと考えます。この権利を「前払費用(資産)」という勘定科目で計上します。
貸方: 先払いした金額のうち「来年分の費用」は今年に含めてはいけないため、今年の「費用」からマイナスして来年に持ち越します。(※返金されるわけではありません)
初心者向けイメージ:なぜ「資産」なの?
スマホのギガを前借りしたり、電車の定期券を先に買っておくのと同じです。「後で使えるお得なチケット(権利)」を持っているので、会社の「資産」として扱います。
1 例題 1
会計期間は1月1日〜12月31日である。当年9月1日に、向こう1年分の保険料1,200円を現金で支払い、全額を「保険料」として処理していた。決算につき、次期分を繰り延べる。
この保険は 9/1 から翌年 8/31 までの 12か月分です。決算日は 12/31 なので、今年の分は「9月〜12月の 4か月分」だけ。残りの「1月〜8月の 8か月分」が、追い出すべき来年の分です。
1,200円
1,200円 × (4か月 ÷ 12か月) = 400円
1,200円 × (8か月 ÷ 12か月) = 800円
繰延では、この「来年の分(800円)」を今年の費用から外します。したがって、仕訳で動かす金額は 800円 です。
上の「9/1の仕訳」のように、1年分 1,200円 をまとめて支払った時点では、まず全額を費用として処理しているはずです。この時点では、保険料 1,200円 全額がそのまま当期の費用に入っています。
しかし、そのうち800円分は翌期分です。そこで上の「12/31の仕訳」が必要になります。
借方(左側): 来年タダで保険のサービスを受ける「権利」を手に入れたので、新しく資産として計上します。(資産の増加)
貸方(右側): 今年計上しすぎていた「来年分の費用(800円)」をマイナスして取り消します。(費用の減少=右側に置く)
1,200円 − 800円 = 400円
保険料(今年の費用)は、1,200円から800円を取り消したので、正しく「400円(今年の4ヶ月分)」だけが残りました。一方、前払保険料800円は、来年使えるチケット(資産)として貸借対照表に載ります。
9/1時点では、1,200円 全額が費用です。
まだ資産としては計上されていません。
T字勘定で見ると、保険料は 1,200 から 800 を差し引いて 400 だけ残り、前払保険料 800 が新しく資産として立っていることが確認できます。
2 2-2. 収益の繰延(前受収益)
1年分の家賃などをまとめて前もって受け取ったが、決算の時点で「まだ場所を貸していない(サービスを提供していない)来年の月数分」が含まれている状態。
借方: 先に受け取った金額のうち「来年分の収益」は今年に含めてはいけないため、今年の「収益」からマイナスして来年に持ち越します。
貸方: お金を先にもらっているため、「来年、場所を貸してあげる義務」を背負ったと考えます。この義務を「前受収益(負債)」という勘定科目で計上します。
初心者向けイメージ:なぜ「負債」なの?
友達から先に代金をもらってしまったのと同じです。「来年必ずサービスを提供しなきゃいけない」というプレッシャー(義務)を背負っているので、会社の「負債」として扱います。
2 例題 2
会計期間は1月1日〜12月31日である。当年8月1日に、向こう1年分の受取地代12,000円を受け取り、全額を「受取地代」として処理していた。決算につき、次期分を繰り延べる。
受取地代の期間は 8/1 から翌年 7/31 までの 12か月です。決算日の 12/31 までに終わっているのは 5か月分(8〜12月)。残りの「1月〜7月の 7か月分」が、追い出すべき来年の収益です。
12,000円
12,000円 × (5か月 ÷ 12か月) = 5,000円
12,000円 × (7か月 ÷ 12か月) = 7,000円
繰延では、翌期分を今年の収益から外します。よって、仕訳で調整する金額は 7,000円です。
上の「8/1の仕訳」のように、1年分 12,000円 をまとめて受け取った時点では、まず全額を収益として処理しているはずです。この時点では、受取地代 12,000円 全額がそのまま当期の収益に入っています。
しかし、そのうち 7,000円 は翌期分です。そこで、上の「12/31の仕訳」が必要になります。
借方(左側): 今年計上しすぎていた「来年分の収益(7,000円)」をマイナスして取り消します。(収益の減少=左側に置く)
貸方(右側): 前受地代 7,000。「来年、相手に場所を貸してあげなくてはいけない」という義務を背負ったので、新しく負債として計上します。(負債の増加)
12,000円 − 7,000円 = 5,000円
受取地代(今年の収益)は、12,000円から7,000円を取り消したので、正しく「5,000円(今年の5ヶ月分)」だけが残りました。一方、前受地代7,000円は、来年果たすべき義務(負債)として貸借対照表に載ります。
この時点(8/1)では、12,000円 全額が収益です。
まだ負債としては計上されていません。
T字勘定で見ると、受取地代は 12,000 から 7,000 を差し引いて 5,000 だけ残り、前受地代 7,000 が新しく負債として立っていることが確認できます。
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本編 Step 2:会計処理② 見越し(みこし)〜今年へ追加〜
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会社の成績表(損益計算書)を作るための絶対ルールは、「今年の成績には、今年の分しか入れない」ことでしたね。 なので、「お金をまだ払っていなくても(もらっていなくても)、今年の分として発生したものは必ず入れる」ことが必要なのです。今年の分はしっかり今年の分に入れてあげます。
たとえば、スマホ代や電気代は「今月使って、来月払う」のが普通ですよね。このように、契約上お金のやり取りが来年であっても、「今年はもう数ヶ月分サービスを使っている(提供している)」なら、その分の費用や収益は今年のものとして付け足す(見越す)必要があります。
Step 3 では、この「今年に付け足すべき金額」を計算して、正しく処理する練習をします。
1 3-1. 費用の見越し(未払費用)
お金を借りていて、利息は来年まとめて後払いする契約になっている。しかし、簿記では「利息を実際に払った時」に全額を費用にするのではなく、「お金を借りている期間」に応じて費用を今年の分と来年の分にキッチリ分けなければなりません。そのため、決算の時点ですでに発生している「今年お金を借りていた数ヶ月分の利息」を今年の費用として計上します。
借方: まだ実際にお金は支払っていなくても、「今年お金を借りていた期間の分の利息」は、今年の「費用」として発生させます。
貸方: 今年の分の利息について、「後で必ず支払わなければならない義務」を背負ったと考えます。この義務を「未払費用(負債)」という勘定科目で計上します。
初心者向けイメージ:なぜ「負債」なの?
クレジットカードの支払いやツケ払いと同じです。「すでにサービスは使ったのに、まだお金を払っていない」状態なので、後で払うプレッシャー(義務)として会社の「負債」になります。
3 例題 3
会計期間は1月1日〜12月31日である。当年11月1日に現金10,000円を借入期間1年、年利率6%で借り入れた。利息は元本返済時に一括で支払う契約である。決算につき、当期分の利息を見越す。
お金を借りる期間(利息が発生する期間)は 11/1 から翌年 10/31 までの 12か月です。決算日の 12/31 時点で、すでに 11月・12月の「2か月間」はお金を借りて使っています。つまり、この 2か月分は「今年の費用」として付け足さなければいけません。
10,000円 × 6% = 600円
600円 × (2か月 ÷ 12か月) = 100円
600円 × (10か月 ÷ 12か月) = 500円
見越しでは、まだ払っていなくても当期に発生した分を先に入れます。したがって、仕訳で追加する金額は当期分 100円です。
借入時点で 「10,000円借りてきた」 という仕訳だけを記録しており、利息についてはまだ何も仕訳していません。
しかし、決算日までに 2か月分 100円 の利息はすでに発生しています。そこで、上の「12/31の仕訳」が必要になります。
借方(左側): 「今年すでにお金を使った分の費用」が発生したので、新しく費用として計上します。(費用の増加=左側に置く)
貸方(右側): 「後で利息を支払う義務」を背負ったので、新しく負債として計上します。(負債の増加=右側に置く)
当期に追加される費用 100円
支払利息 100円 が「今年の費用」として損益計算書に正しく入ります。一方、未払利息 100円 は「後で払う義務(負債)」として貸借対照表に載ります。
まだ11/1時点では利息費用は計上されていません。
まだ負債としても計上されていません。
当期 2か月分(100円)が費用として入ります。
あとで支払う義務が負債として残ります。
T字勘定で見ると、支払利息 100 が新しく費用として入り、同額の未払利息 100 が負債として立っていることが確認できます。
2 3-2. 収益の見越し(未収収益)
お金を貸していて、利息は来年まとめて後でもらう契約になっている。しかし、簿記では「利息を実際にもらった時」に全額を収益にするのではなく、「お金を貸している期間」に応じて収益を今年の分と来年の分にキッチリ分けなければなりません。そのため、決算の時点ですでに発生している「今年お金を貸してあげた数ヶ月分の利息」を今年の収益として計上します。
借方: 今年の分の利息について、「後で確実にもらえる権利」を手に入れたと考えます。この権利を「未収収益(資産)」という勘定科目で計上します。
貸方: まだ実際にお金はもらっていなくても、「今年お金を貸してあげた期間の分の利息」は、今年の「収益」として発生させます。
初心者向けイメージ:なぜ「資産」なの?
アルバイトの給料日前の状態と同じです。「すでに働いた(サービスを提供した)のだから、後でお金をもらう当然の権利」があるので、会社の「資産」になります。
4 例題 4
会計期間は1月1日〜12月31日である。当年4月1日に現金30,000円を貸付期間1年、年利4%で貸し付けた。利息は元本回収時に一括で受け取る契約である。決算につき、当期分の利息を見越す。
貸付期間は 4/1 から翌年 3/31 までの 12か月です。決算日の 12/31 までに、4月〜12月の「9か月間」はすでにお金を貸してあげています。つまり、この 9か月分は「今年の収益」として付け足さなければいけません。
30,000円 × 4% = 1,200円
1,200円 × (9か月 ÷ 12か月) = 900円
1,200円 × (3か月 ÷ 12か月) = 300円
見越しでは、まだ受け取っていなくても当期に発生した収益を先に計上します。したがって、仕訳で追加する金額は当期分 900円です。
貸付時点では 「30,000円貸した」 という仕訳だけを記録しており、利息についてはまだ何も仕訳していません。
しかし、決算日までに 9か月分 900円 の利息はすでに発生しています。そこで、上の「12/31の仕訳」が必要になります。
借方(左側): 「後で利息をもらう権利」を手に入れたので、新しく資産として計上します。(資産の増加=左側に置く)
貸方(右側): 「今年すでにお金を貸してあげた分の収益」が発生したので、新しく収益として計上します。(収益の増加=右側に置く)
当期に追加される収益 900円
受取利息 900円 が「今年の収益」として損益計算書に正しく入ります。一方、未収利息 900円 は「後でもらう権利(資産)」として貸借対照表に載ります。
まだ4/1時点では利息収益は計上されていません。
まだ資産としても計上されていません。
当期 9か月分が収益として入ります。
あとでもらう権利が資産として残ります。
T字勘定で見ると、受取利息 900 が新しく収益として入り、同額の未収利息 900 が資産として立っていることが確認できます。
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本編 Step 3:対比で覚える(全体整理)
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| 名称 | 性質 | B/Sの場所 | 意味合い(イメージ) |
|---|---|---|---|
| 前払費用 | 資産 | 借方(左) | 先に払ったから、後でタダでサービスを受けられる権利 |
| 未収収益 | 資産 | 借方(左) | もうサービスしたから、後でお金をもらえる権利 |
| 前受収益 | 負債 | 貸方(右) | 先にもらったから、後でサービスを提供する義務 |
| 未払費用 | 負債 | 貸方(右) | もうサービスを受けたから、後でお金を払う義務 |
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Final Step:まとめ問題(総合チェック)
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5 例題 5
会計期間は1月1日〜12月31日である。当年10月1日に、向こう1年分の保険料3,600円を現金で支払い、全額を「保険料」として処理していた。決算につき、必要な決算整理仕訳を答えよ。また、これは繰延・見越しのどちらに当たるかも示しなさい。
この保険は 10/1 から翌年 9/30 までの 12か月分です。決算日は 12/31 なので、今年に入るのは 10月〜12月の 3か月分、翌期へ回すのは 1月〜9月の 9か月分です。
3,600円
3,600円 × (3か月 ÷ 12か月) = 900円
3,600円 × (9か月 ÷ 12か月) = 2,700円
費用の繰延では、翌期の分を今年の費用から外します。したがって、仕訳で動かす金額は 2,700円です。
上の「10/1の仕訳」のように、1年分 3,600円 をまとめて支払った時点では、まず全額を費用として処理しているはずです。この時点では、保険料 3,600円 全額がそのまま当期の費用に入っています。
しかし、そのうち 2,700円 は翌期分です。そこで、上の「12/31の仕訳」が必要になります。
借方(左側): 前払保険料 2,700。来年タダで保険のサービスを受ける「権利」を手に入れたので、新しく資産として計上します。(資産の増加=左側に置く)
貸方(右側): 保険料 2,700。今年計上しすぎていた「来年分の費用」をマイナスして取り消します。(費用の減少=右側に置く)
3,600円 − 2,700円 = 900円
保険料(今年の費用)は、3,600円から2,700円を取り消したので、正しく「900円(今年の3ヶ月分)」だけが残りました。一方、前払保険料2,700円は、来年使えるチケット(資産)として貸借対照表に載ります。
この時点(10/1)では、3,600円 全額が費用です。
まだ資産としては計上されていません。
T字勘定で見ると、保険料は 3,600 から 2,700 を差し引いて 900 だけ残り、前払保険料 2,700 が新しく資産として立っていることが確認できます。
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応用問題(二級レベル)
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ここまでは「決算日(12/31)」に、来年分の費用を追い出す(繰延べる)処理を学びました。 では、年が明けて「翌年の1月1日」になったらどうなるでしょう?
去年、「これは来年の分だから!」と資産(前払費用など)の金庫に避難させておいた金額。年が明けたということは、ついにそのお金を「今年の費用」として使う番が来たということです。 そこで、1月1日のスタートと同時に、金庫に避難させておいた金額を、再び「費用」の部屋に戻してあげる作業が必要になります。これを「再振替仕訳(さいふりかえしわけ)」と呼びます。
このStepでは、「今年の決算」から「翌年の決算」までの全体の流れを、パズルのようにつなげる練習をします。
例題に入る前に、新しく登場する「再振替仕訳」について確認しておきましょう。
なんで再振替仕訳をするの?
去年の大晦日(12/31)、「これは来年の分だから!」と、いったん「前払費用」という資産の金庫に避難させておいた金額がありましたよね。
年が明けて1月1日になったということは、ついにそのお金を「今年の費用」として使う番が来たということです!せっかく「今年使う分」になったのに、金庫に入れっぱなしでは帳簿の費用に計算されません。そこで、1月1日のスタートと同時に、金庫に避難させておいた金額を、再び「費用」の部屋に戻してあげる作業が必要になります。これを「再振替仕訳」と呼びます。
どういう流れでやるの?
仕訳の流れは、去年の大晦日と、今年の元日の「セット」で考えます。
決算日(12/31):来年分を費用からマイナスし、「前払費用(資産)」の金庫に隠す(=繰延)。
翌年の期首(1/1):金庫から出して、今年の「費用」に戻す(=再振替仕訳)。★ココ!
期首(1/1)に行う再振替仕訳は、「決算日(12/31)にやった仕訳の、借方と貸方をひっくり返すだけ(逆仕訳)」です。
【1/1 期首の再振替仕訳】
※なぜこの仕訳になるの?
借方(左側):保険料
年が明けて、晴れて「今年使う分」になったので、再び費用として復活させます。(費用の増加=左側に置く)
貸方(右側):前払保険料
金庫に保管していた「後で使える権利(資産)」を取り出して使い切るので、減らします。(資産の減少=右側に置く)
それでは、この再振替仕訳のルールを踏まえて、実際の応用問題(例題6)を見てみましょう!
6 例題 6:費用の繰延を翌期まで追う
会計期間は毎年1月1日〜12月31日である。当年10月1日に、向こう1年分の保険料24,000円を現金で支払い、全額を「保険料」として処理していた。翌年10月1日にも、同じ内容で向こう1年分24,000円を支払い、同じく全額を「保険料」として処理した。なお、翌期首には再振替仕訳を行うものとする。
当期と翌期の「保険料」「前払保険料」の金額を答えなさい。
当期と翌期の仕訳を答えなさい。
当期末保険料6,000円
当期末前払保険料18,000円
翌期末保険料24,000円
翌期末前払保険料18,000円
当期の仕訳
翌期の仕訳
1 step1 タイムテーブルを書く
【まず見るべきゴール】
この問題では、仕訳の流れを追う前に、タイムテーブルで「その期の費用額はいくらか」を先に決めます。
大事なのは、「いくら支払ったか」ではなく、「その期に何か月使ったか」です。最初から仕訳を切らず、まず全体像をつかみます。
【当期目線のゴール】
1回目の契約は、当年 10/1 から翌年 9/30 までの 12か月分です。
当期に本当に使った期間は 10月〜12月の「3か月分」だけ。
・当期の保険料(費用):24,000円 × (3か月 ÷ 12か月) = 6,000円
・翌期へ回す前払保険料(資産):24,000円 × (9か月 ÷ 12か月) = 18,000円
【翌期目線のゴール】
翌期の費用は、以下の「2つの合計」になります。
①前期末から持ち越した「1月〜9月の 9か月分(18,000円)」
②翌期10/1に新しく払ったもののうち「10月〜12月の 3か月分(24,000円 × 3/12 = 6,000円)」
・翌期の保険料(費用):18,000円 + 6,000円 = 24,000円
・翌々期へ回す前払保険料(資産):新契約のうちの9か月分 = 18,000円
こういう応用問題は、「前期がこうだったから」と流れを追うよりも、当期目線・翌期目線に立って、「その期の費用は何か」「その期末に前払保険料として残るものは何か」を考えると整理しやすくなります。
2 step2 仕訳を組み立てる
本質(ゴール)をつかんで全体像が把握できたあなたなら大丈夫です。次は、タイムテーブルのどのタイミングでどのような仕訳が切られていくのかを考えるだけです。
つまり、期中では「いくら支払ったのか」を仕訳で追っていき、決算ではその金額を「当期の費用はいくらか」に合わせて直していくのです。言い換えると、決算では、タイムテーブルで先につかんだ本質(ゴール)の数字に直すように、仕訳で帳尻を合わせていきます。そう考えると、仕訳の組み立てはゴールの数字に合わせていくパズルのように整理できます。
仕訳を組み立てるには経験が大事です。最初は時間がかかっても大丈夫です。小学校一年生のころ、最初は 8+7=15 も指を折りながら考えたはずですが、慣れると自然に出てくるようになります。それと同じで、仕訳の組み立ても数をこなすのが一番です。まずはたくさん問題を解いて、仕訳というパズルに慣れていきましょう。
当期の流れ
上の「当期 10/1の仕訳」のように、1回目の契約で 1年分 24,000円 を支払った時点では、まず全額を保険料として処理しています。この時点では、保険料 24,000円 全額がそのまま当期の費用に入っています。
しかし、1回目の契約のうち 9か月分 18,000円 は翌期に使う分です。そこで、決算で上の仕訳を行います。
借方(左側): 来年タダで保険のサービスを受ける「権利」を手に入れたので、新しく資産として計上します。(資産の増加)
貸方(右側): 今年計上しすぎていた「来年分の費用」をマイナスして取り消します。(費用の減少)
翌期の流れ
翌期首には、前期末に資産へ振り替えた 18,000円 を、翌期の費用へ戻すために再振替します。これで、前期から持ち越した 9か月分が翌期の保険料としてスタート時点から計上されます。
さらに、翌期 10/1 に新しい契約分 24,000円 を支払った時点でも、いったん全額を保険料で処理します。この時点では、翌期の保険料には、再振替で戻した 18,000円 と新契約の 24,000円 の合計 42,000円 が入っています。
ただし、新契約 24,000円 のうち 9か月分 18,000円 は翌々期分なので、決算で上の仕訳を行います。
借方(左側): 翌々年にサービスを受ける権利なので、新しく資産として計上します。(資産の増加)
貸方(右側): 計上しすぎていた「翌々年分の費用」をマイナスして取り消します。(費用の減少)
3 step3 t字勘定で確認する
24,000
まだ資産としては計上されていません。
6,000
18,000
当期は、保険料 24,000 のうち 18,000 を前払保険料へ振り替えることで、保険料は 6,000 だけが残ります。
18,000
前期末の資産 18,000 を、1/1 の再振替でゼロに戻します。
42,000
更新時点では、前払保険料はまだ残っていません。
24,000
18,000
翌期は、期首で前期分を費用へ戻し、更新時に新契約を加え、期末に翌々期分 18,000 を前払保険料へ振り替える流れです。